【市況】明日の株式相場に向けて=3万6000円プットが示す波乱相場への警戒感
日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
米CPIに関しては、市場予想は前年比2.7%上昇と伸び率は前月の2.6%から拡大するとの見方が優勢。ただし、市場予想を上振れして着地した際には、8割台まで織り込みが進んだ今月17~18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)における0.25%幅の利下げ観測が、後退する恐れがある。織り込み度合いが5割程度に低下した際には「丁半博打」の様相を帯びかねず、FOMC前後の米国市場のボラティリティを高めそうだ。
利下げ観測の後退で米長期金利に上昇圧力が掛かることとなれば、米国のハイテク株に逆風が吹きつけることとなるかもしれない。エヌビディア<NVDA>の株価は130ドル近辺に接近している。10月半ば以降のサポートラインを割り込んで調整色を一層強めた場合は、日本の半導体関連株に対しても一段の売り圧力が加わる可能性がある。
日本国内では18~19日に日銀金融政策決定会合が開かれ、これに先立ち12月日銀短観が13日に公表される。1ドル=151円台後半で推移する為替相場だけを根拠とすれば、追加利上げの思惑が広がってもおかしくはない。もっとも、日銀内部において利上げには慎重だとする通信社報道もあり、決め打ちはしにくい状況だ。日銀の金融政策を巡り、会合まで市場のコンセンサスが固まらないシナリオもある。
トランプ次期米政権の関税強化策を含め、マクロ面での不透明要因がいくつも存在するなかにあって、日本株の上昇機運が高まらない状況にある。11日のオプション市場をみると、期先物へのロールオーバーが主体の流れとなり、期先物の1月限はコール(買う権利)もプット(売る権利)も総じて冴えない展開だったが、日経平均が底堅さを見せながらも権利行使価格4万円のコールは売られている。プット側では権利行使価格3万8000円に加えて、3万6000円が活発に取引され、日経平均が下値を探る場面では、それぞれプレミアムがプラスとなる場面もあった。全体相場の調整に備えようとする投資家の姿勢が透けて見える。
前日時点での日経平均のEPS(1株利益)は加重平均ベースで2484円前後。過去10年間のPER(株価収益率)が15倍を中心に推移してきたことを踏まえると、これらを掛け合わせた数値は3万7250円程度となる。「過去10年でみて1月の日本株のパフォーマンスの悪さが際立っており、年明けの波乱相場に対する警戒感も広がっている。バリュエーション面でのサポートラインを下回ると一段と下押ししかねないとの見方や、流動性の観点から、下落時に利益を得られる3万6000円プットへの物色意欲が高まった」(中堅証券ストラテジスト)との見方が出ている。
現物株に視点を移すと、この日に上昇が際立ったのは何といっても 防衛関連株である。売買代金ランキングでは川崎重工業<7012>とIHI<7013>、三菱重工業<7011>の重工大手3社がトップ3を占めた。防衛特別法人税の新設報道が刺激材料となったとはいえ、トランプ次期政権が同盟国に一段と防衛費負担の増加を求めるとの見方がくすぶる状況において、収益拡大ストーリーの「確からしさ」を防衛関連株が備えているのは間違いないだろう。
確からしさという文脈では、ITシステム関連のエクイティ・ストーリーも見過ごすことはできない。コロナ禍が発生して来年は5年目となり、リモートワークの導入とともに購入されたノートパソコンやシステム機器は、更新時期に差し掛かっている。更に来年10月には、ウィンドウズ10のサポートが終了し、中小企業を中心に対応に迫られるところは多いはずだ。関連銘柄には大塚商会<4768>やダイワボウホールディングス<3107>、ソフトクリエイトホールディングス<3371>、内田洋行<8057>などがある。マクロ環境が不透明ななかでも、年末相場では来年のテーマを先取りする投資行動が繰り返し見られてきただけに、小粒なテーマとはいえ人気化を期待したいところである。
あすのスケジュールでは、国内では主な経済指標の発表は予定されていない。ビジョナル<4194>やラクスル<4384>、三井ハイテック<6966>、タイミー<215A>などが決算発表を行う。また、ユカリア<286A>が東証グロース市場に新規上場する。海外ではECB(欧州中央銀行)理事会の結果発表と、ラガルド総裁の記者会見が予定されている。豪州では11月新規雇用者数と失業率、米国では11月卸売物価指数と週間の新規失業保険申請件数が公表される。米国では30年物国債入札も控えている。(碧)
出所:MINKABU PRESS