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【特集】バリュー株物色に拍車、活発化する「アクティビスト」関連株をマークせよ <株探トップ特集>

日本市場には、欧米に比べROEが低く「PBR1倍割れ」の銘柄が多い。経営改善を突きつけるアクティビストにとっては絶好の投資対象であり、その再評価余地は大きい。

―海外ファンドも積極姿勢を強める、低PBR銘柄などに経営改善余地膨らむ―

 東京市場で「アクティビスト(物言う株主)」の動きが活発化している。インフレ懸念の台頭を背景に、昨年以降は株式市場が波乱展開となるなか、世界的にアクティビストによる企業の経営改善に向けた提案・要求は高まっている。特に、日本企業は、欧米企業に比べROE(自己資本利益率)やPBR(株価純資産倍率)などの低さが目立ち、経営改善に向けた余地は大きい。それだけに活躍機会は増えており、アクティビストが大株主に登場する銘柄に対する上昇期待は強まっている。

●世界的にアクティビストの活動活発化

 アクティビストの活動が世界的に活発化している。例えば、米国では米サード・ポイントなどがウォルト・ディズニー<DIS>に対して経営改善の要求を突きつけたほか、米エリオット・マネジメントがセールスフォース<CRM>の大株主になったことが市場の話題を集めている。昨年以降、株価が低迷するなか、株式を取得するとともに株主提案を活発化する構図がみてとれる。

 このアクティビストの活躍が目立つのは、日本も同様だ。2022年の海外投資家の日本株に対する投資は約2兆2500億円の売り越しだったが、アクティビストが運営するファンドに限れば近年の積極姿勢が目立つ。

●米エリオットなど有力ファンドが日本市場に攻勢

 象徴的なのが、米バリューアクト・キャピタルが22年にセブン&アイ・ホールディングス <3382> [東証P]に「コンビニエンスストア事業のみが残るまで企業価値の最大化」を図ることなどを提案したことだ。実際、セブン&アイは現在、百貨店子会社のそごう・西武の売却を進めるなど経営改革を進めている。バリューアクトはこれまでトレンドマイクロ <4704> [東証P]やJSR <4185> [東証P]、任天堂 <7974> [東証P]などの大株主になったことでも話題を集めた。

 また、エリオットが大日本印刷 <7912> [東証P]の5%弱の株式を取得し、大株主となったと1月に報じられた。エリオットは前出のようにセールスフォースへの攻勢でも知られる著名ファンド。大日印は9日に新中期経営計画策定に向けた基本方針を明らかにし「ROE10%・PBR1.0倍超」を目標に掲げるとともに、過去最大の自己株式取得を計画することを表明するなど、その動向が市場の注目を集めている。エリオットは東芝 <6502> [東証P]の株主となり社外取締役を送り込んだ実績などがある。

●英シルチェスターは地銀株などの大株主に

 海外アクティビストの動向をもう少しみていくと、かねてから日本株に積極的な投資を進めているのが英系のシルチェスター・インターナショナル・インベスターズだ。昨年の株主総会では京都銀行 <8369> [東証P]などへ株主提案を行ったことが注目された。地銀への積極投資を進めコンコルディア・フィナンシャルグループ <7186> [東証P]やおきなわフィナンシャルグループ <7350> [東証P]などの大株主となっている。住友ゴム工業 <5110> [東証P]や森永製菓 <2201> [東証P]、フジ・メディア・ホールディングス <4676> [東証P]などへの投資も進めている。米国のダルトン・インベストメンツは、ポールトゥウィンホールディングス <3657> [東証P]やマクニカホールディングス <3132> [東証P]の大株主となっている。

 アジア系に目を向けると香港のオアシス・マネジメントは、北越コーポレーション <3865> [東証P]を2月に買い増したほか、昨年12月には内田洋行 <8057> [東証P]とツルハホールディングス <3391> [東証P]の大株主に浮上している。デジタルガレージ <4819> [東証P]やフジテック <6406> [東証P]にも投資している。シンガポールを拠点とする3Dインベストメント・パートナーズは富士ソフト <9749> [東証P]やメディシノバ・インク <4875> [東証S]の大株主となっている。

●旧村上ファンド系の攻勢続く、「PBR1倍割れ」など見直し余地

 日系のアクティビストでは物言う株主の草分けと呼ばれる旧村上ファンド系の活動が依然として旺盛だ。そのひとつであるシティインデックスイレブンスは、20日にホシデン <6804> [東証P]の大株主に再び登場したことが公表されたほか、アルプスアルパイン <6770> [東証P]やコスモエネルギーホールディングス <5021> [東証P]などに攻勢をかけている。建設株への投資も注目されており、東亜建設工業 <1885> [東証P]や三井住友建設 <1821> [東証P]、大豊建設 <1822> [東証P]などの大株主となっている。

 旧村上ファンド出身者が設立したシンガポールを拠点とするエフィッシモ・キャピタル・マネージメントは東芝の筆頭株主となったことで知られているほか、UACJ <5741> [東証P]や川崎汽船 <9107> [東証P]、タムロン <7740> [東証P]、近畿車輛 <7122> [東証S]などの大株主となっている。更に、同じく旧村上ファンド出身者が設立したストラテジックキャピタルはタチエス <7239> [東証P]やダイドーリミテッド <3205> [東証S]、世紀東急工業 <1898> [東証P]などの大株主となっている。日本証券金融 <8511> [東証P]に対して、日銀からの天下りの調査を求める株主提案を行ったことも話題を集めた。

 アクティビストの主な投資スタイルは割安なバリュー株を狙い、企業側に経営改善を突きつけるというものが多い。足もとのバリュー株見直しの時流に乗っており、アクティビストが大株主となっている「PBR1倍割れ」銘柄などへの関心が高まりそうだ。

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