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【特集】横山利香「令和時代の稼ぎたい人の超実践! 株式投資術」― (32) 株価反転の重要ポイントを過去のチャートから探ろう!

横山利香(ファイナンシャルプランナー、テクニカルアナリスト)

◆チャートは将来を知る手掛かりとなる唯一のツール

 日経平均株価の2022年1月からの日足チャートを見てみましょう。株価の下げ止まりや底打ちを考える場合には、過去の株価の動きを必ず確認してから、妥当な水準を検討していくことが大切です。

 まずは株価が過去にどこで下げ止まったのかを確認します。2022年は3月9日の2万4681円、6月20日の2万5520円、10月3日の2万5621円で安値をつけた後に下げ止まり、上昇に転じていることがわかります。じわじわと下値を切り上げていることは、安値圏での買い注文が次第に強まっていることの証しでしょう。

図1 日経平均株価(日足)
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 テクニカル分析は、株価の過去の動きを表すグラフに基づくものにすぎず、信頼には値しないと考える人もいるかもしれません。しかし、株価は将来の経済状況などを先行して織り込んで動く先行指標でもありますので、肌で感じる経済状況から投資を判断していては、株価の動きに後れをとることになってしまいます。過去の記録といっても、そのチャートの軌跡は将来のファンダメンタルズを織り込みながら描かれたものであり、私たち個人投資家にとってこれから先の動きを知る手掛かりとなる唯一のツールですので、積極的に参考にすべきでしょう。

 さて上述したように、日経平均株価は2022年3月の急落時を除けば、2万5500円~2万5600円前後で下げ止まっています。つまり、2022年は2万5500円~2万5600円程度であれば、経済状況を考えると安値圏にあると考えていた投資家が多かったということになります。

 この時に、多くの投資家が見るポイントは、過去に下げ止まった時の株価はいくらか、そして、足もとの株価はその安値に比べて上にあるのか、下にあるのか、ということです。

 2023年の大発会・1月4日の安値は2万5661円でした。昨年に株価が反転上昇するポイントとなった3月、6月、10月の安値を、大発会では割り込んでいないことがわかります。これらの安値を下回らない限り株価の基調は堅調である、と考えることができます。

 2022年を振り返ると、米国が利上げにより金融引き締めを強化する一方で、日本は金融緩和を継続したこともあって、大幅なドル高・円安が進行し、10月には1ドル=151円台まで円安が進行しました。円安の恩恵を受けて国内企業の業績は良好な状況となっていましたから、2022年に株価が底堅く推移したのは当然と言えるかもしれません。

 では、逆に下げ止まらない場合は、どのような動きの時が考えられるのでしょうか?

 それは、2022年3月9日の2万4681円、6月20日の2万5520円、10月3日の2万5621円の安値を次々と割り込む、いわゆる新安値を更新していく場合です。安値を更新する状況はそれだけ売り圧力が強い=買い手が少ない、ということになります。こうした時、何の基準も持たずに適当に水準を考えるだけでは、ただ不安が募るばかりになってしまいます。過去につけた安値、特に反転上昇の起点となった安値は、多くの投資家が買いを検討する際に意識する水準ですので、チャートを見て必ず確認しておくようにしましょう。

 ここまでは過去の安値を遡ることで下げ止まりの水準を考えてきましたが、反対に高値を遡ることで天井の水準を分析することもできます。1年ほど前からみると、日経平均株価は2022年1月5日に2万9388円、8月17日に2万9222円、11月24日に2万8502円の高値をつけています。先ほどの安値の場合には下値が切り上がっていましたが、反対に上値は切り下がっていることがわかります。高値がどんどん低くなっている=売り圧力が強く、買い圧力が乏しい、と考えることができます。つまり、戻り売り圧力が高まるこれらの水準は日経平均株価にとって上値の関門であり、これらをクリアしない限り3万円回復はなく、市場心理も強気に転じたとは言えないことになります。

 現在の日経平均株価は上値が切り下がる一方で、下値を切り上げる三角保ち合いの形状にあります。保ち合いはいずれ煮詰まり、株価は保ち合いを放れて新安値、あるいは新高値の更新へと進むことでしょう。その時、投資家はその方向にただついていくだけ、いわゆるトレンドフォロー戦略で対応することになります。

 なお、保ち合いを放れるのがどのような時なのかと言えば、今回がそうであるとは言えませんが、もしかすると経済情勢が大きく変化するような場合であるかもしれません。過去に経済情勢が激動をみせたタイミングでは、下げ相場はチャートが壊れる暴落となり、上げ相場はバブルの熱狂が市場を覆いました。このような時にはテクニカル分析は役には立ちません。相場が終着点に達するまで、投資家はひたすらトレンドに対してフレンドリーに徹するしかありません。

 過去の株価を参考にしなければ、私たちは勝ちたいという欲で、自分に都合のよいように期待値を設定して今後の株価動向を予測してしまいかねません。冷静に株価の動向を分析するためにも、過去の安値や高値といったチャート上の重要ポイントは最低限押さえておきたいものですね。

 


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