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【特集】国内金利は上昇、米国景気は悪化想定なら割安・内需、でも足元の内需は割高、でどうする
大川智宏の「日本株・数字で徹底診断!」 第105回
前回記事「2023年、注意すべき4つのリスクと、その対抗策は」を読む
日本銀行が金融政策の維持を決定した2日後の1月20日。この日に発表された昨年12月の国内消費者物価指数(CPI)は、生鮮食品を除くコア指数が前年同月比4.0%と、41年ぶりの上昇率を記録しました。
足元のインフレはエネルギー価格の上昇や円安の影響が大きく、一時的なものであるとの見方もありますが、日銀が主張する賃上げを伴う物価上昇を待たずに、総裁交代を機に異次元緩和路線を修正する可能性もあります。
一方、日本よりインフレが先行し、景気を犠牲にしてでもインフレ退治を優先してきた米国では、賃金インフレが頭打ちの傾向になっています。これらもあり、次回3月のFOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げ幅は0.25ポイントとする確率が100%近くになっています。
米国では引き締めから、日本では緩和からの政策が転換されれば、強い円高圧力がかかる可能性があります。加えて、これまでの利上げの影響で米国の景気が減速する影響も踏まえると、外需・景気敏感セクターの収益環境は逆風となります。
アナリストの業績見通しも、内需・ディフェンシブ系は高成長と予想しているのに対して、外需・景気敏感系はマイナス成長となっています。
■外需・景気敏感系の業種と内需・ディフェンシブ系の業種の12カ月先予想増益率
出所:リフィニティブ・データストリーム
こうした業績予想を見れば、内需・ディフェンシブ系銘柄に注目するのが無難ですが、そう単純に割り切れない面があります。金利の上昇局面は、割安株が優位となりやすいからです。
2021年後半から、米国の金利上昇に引きずられる形で、日本株を含む世界中の株式市場で割安株がアウトパフォームを続けてきました。金利が上昇すると長期の利益成長率に対する割引率が上昇するため、割高株が売られて割安株が上昇しやすくなります。
しかも、日本株は緩和政策を保ってきた中で割安株のパフォーマンスを上げてきたことを考えると、日銀が政策転換した場合に、その影響はさらに強く出る可能性があります。
しかし、ここで1つの矛盾というか、銘柄選択の観点での齟齬(そご)が生じます。世界の株式市場を見ると、外需・景気敏感系は割安、内需・ディフェンシブ系は割高であることがほとんどだからです。
日本株市場も例外ではありません。外需・景気敏感系企業と内需・ディフェンシブ系企業のPERとPBRを比較すると、以下のような明確な差が見られます。
■各業種のPERとPBR
出所:リフィニティブ・データストリーム
この状況は、今後の銘柄選択において景気減速の影響を受けにくいことを優先すると、割高な内需・ディフェンシブ系がターゲットになり、金利上昇局面での割安株優勢を重視すると、景気減速の影響が懸念される外需・景気系をターゲットにすることになります。いずれを優先するにしても、大きなリスクが内包されてしまうことになります。
では、一体どうすればいいのでしょうか。それについては難しく考えることはなく、内需・ディフェンシブ系の業種から割安株を選んでロングし、外需・景気敏感系の業種から割高株を選んでショートする――ことになります。つまり、両者のいいとこ取りというわけです。
そんな都合の良い銘柄があるのか、と思うかもしれませんが、丁寧に探していけば存在を確認できます。その抽出方法は以下の通りです。
TOPIX(東証株価指数)構成銘柄を母集団として、予想PERおよび予想PBR(取得できない場合は実績PBR)の上位下位20%(5分位)で高低を分類します。
それと同時に、東証33業種のうちで、定性的な観点で外需・景気敏感系業種(輸送用機器、機械、鉄鋼など)と内需・ディフェンシブ系業種(小売、サービス、情報通信など)で銘柄を分類します。金融系の業種は、金利に対する影響の種類が異なるため、ここでは除外します。
これらを組み合わせて、低PERかつ低PBRを満たす内需・ディフェンシブ系の業種の銘柄と、高PERかつ高PBRを満たす外需・景気敏感系の業種の銘柄をそれぞれ抽出します。
それぞれの一例を、次ページに示します。
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。
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大川智宏(Tomohiro Okawa)
智剣・Oskarグループ CEO兼主席ストラテジスト
2005年に野村総合研究所へ入社後、JPモルガン・アセットマネジメントにてトレーダー、クレディ・スイス証券にてクオンツ・アナリスト、UBS証券にて日本株ストラテジストを経て、16年に独立系リサーチ会社の智剣・Oskarグループを設立し現在に至る。専門は計量分析に基づいた株式市場の予測、投資戦略の立案、ファンドの設計など。日経CNBCのコメンテーターなどを務めている。
智剣・Oskarグループ CEO兼主席ストラテジスト
2005年に野村総合研究所へ入社後、JPモルガン・アセットマネジメントにてトレーダー、クレディ・スイス証券にてクオンツ・アナリスト、UBS証券にて日本株ストラテジストを経て、16年に独立系リサーチ会社の智剣・Oskarグループを設立し現在に至る。専門は計量分析に基づいた株式市場の予測、投資戦略の立案、ファンドの設計など。日経CNBCのコメンテーターなどを務めている。
前回記事「2023年、注意すべき4つのリスクと、その対抗策は」を読む
日本銀行が金融政策の維持を決定した2日後の1月20日。この日に発表された昨年12月の国内消費者物価指数(CPI)は、生鮮食品を除くコア指数が前年同月比4.0%と、41年ぶりの上昇率を記録しました。
足元のインフレはエネルギー価格の上昇や円安の影響が大きく、一時的なものであるとの見方もありますが、日銀が主張する賃上げを伴う物価上昇を待たずに、総裁交代を機に異次元緩和路線を修正する可能性もあります。
一方、日本よりインフレが先行し、景気を犠牲にしてでもインフレ退治を優先してきた米国では、賃金インフレが頭打ちの傾向になっています。これらもあり、次回3月のFOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げ幅は0.25ポイントとする確率が100%近くになっています。
米国では引き締めから、日本では緩和からの政策が転換されれば、強い円高圧力がかかる可能性があります。加えて、これまでの利上げの影響で米国の景気が減速する影響も踏まえると、外需・景気敏感セクターの収益環境は逆風となります。
アナリストの業績見通しも、内需・ディフェンシブ系は高成長と予想しているのに対して、外需・景気敏感系はマイナス成長となっています。
■外需・景気敏感系の業種と内需・ディフェンシブ系の業種の12カ月先予想増益率
出所:リフィニティブ・データストリーム
こうした業績予想を見れば、内需・ディフェンシブ系銘柄に注目するのが無難ですが、そう単純に割り切れない面があります。金利の上昇局面は、割安株が優位となりやすいからです。
2021年後半から、米国の金利上昇に引きずられる形で、日本株を含む世界中の株式市場で割安株がアウトパフォームを続けてきました。金利が上昇すると長期の利益成長率に対する割引率が上昇するため、割高株が売られて割安株が上昇しやすくなります。
しかも、日本株は緩和政策を保ってきた中で割安株のパフォーマンスを上げてきたことを考えると、日銀が政策転換した場合に、その影響はさらに強く出る可能性があります。
しかし、ここで1つの矛盾というか、銘柄選択の観点での齟齬(そご)が生じます。世界の株式市場を見ると、外需・景気敏感系は割安、内需・ディフェンシブ系は割高であることがほとんどだからです。
日本株市場も例外ではありません。外需・景気敏感系企業と内需・ディフェンシブ系企業のPERとPBRを比較すると、以下のような明確な差が見られます。
■各業種のPERとPBR
出所:リフィニティブ・データストリーム
この状況は、今後の銘柄選択において景気減速の影響を受けにくいことを優先すると、割高な内需・ディフェンシブ系がターゲットになり、金利上昇局面での割安株優勢を重視すると、景気減速の影響が懸念される外需・景気系をターゲットにすることになります。いずれを優先するにしても、大きなリスクが内包されてしまうことになります。
では、一体どうすればいいのでしょうか。それについては難しく考えることはなく、内需・ディフェンシブ系の業種から割安株を選んでロングし、外需・景気敏感系の業種から割高株を選んでショートする――ことになります。つまり、両者のいいとこ取りというわけです。
そんな都合の良い銘柄があるのか、と思うかもしれませんが、丁寧に探していけば存在を確認できます。その抽出方法は以下の通りです。
TOPIX(東証株価指数)構成銘柄を母集団として、予想PERおよび予想PBR(取得できない場合は実績PBR)の上位下位20%(5分位)で高低を分類します。
それと同時に、東証33業種のうちで、定性的な観点で外需・景気敏感系業種(輸送用機器、機械、鉄鋼など)と内需・ディフェンシブ系業種(小売、サービス、情報通信など)で銘柄を分類します。金融系の業種は、金利に対する影響の種類が異なるため、ここでは除外します。
これらを組み合わせて、低PERかつ低PBRを満たす内需・ディフェンシブ系の業種の銘柄と、高PERかつ高PBRを満たす外需・景気敏感系の業種の銘柄をそれぞれ抽出します。
それぞれの一例を、次ページに示します。
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。
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