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【特集】富田隆弥のチャート倶楽部2023スペシャル <新春特別企画>

株式評論家 富田隆弥

「ウサギ年、跳ねるのは年後半か」

◆コロナバブル相場の反動

 2023年の干支はウサギ(卯)だ。日経平均株価は「年後半3万~3万2000円」方向に跳ねることを想定する。とはいえ、跳ねるためには、身体を屈めて力を蓄えることも必要であり、春先(1~3月)に「2万5000円~2万2000円」程度までの調整を想定しておく。

 日本株に影響を与える要因では、(1)ロシア・ウクライナ紛争、(2)米国の金利・景気と株価、(3)日銀の金融緩和修正、(4)岸田政権の増税方針、(5)為替(ドル円)、(6)中国のコロナ感染拡大、(7)台湾海峡の緊張などが焦点となる。これらを背景に日本株は大きく振れる可能性があるが、最大の焦点となるのは、やはり米国株式市場(NYダウナスダック)の動向だろう。

 世界の株式市場は20年2月から3月にかけてコロナショックで急落したが、各国中央銀行の大胆な金融緩和を背景に、その後は未曽有の金融相場を2年以上続けた。だが、ロシアによるウクライナ侵攻とFRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策(利上げ)転換を背景に、日経平均株価は21年9月に、ナスダックは同年11月に、NYダウは22年1月にそれぞれ高値を打ち、22年は年間を通して調整を続けた。

 この調整は未曽有の金融相場(コロナバブル)に対する修正と見ることができ、新年はその続きから入ることをまず頭に入れておくべきだろう。

 22年の終盤、米国ではインフレにピークアウト感が漂い始め、同時に景気指標にもピークアウト(景気減速)感が兆してきた。いわゆるスタグフレーション(物価高と景気後退の併存)の状態であり、23年はリセッション(景気後退)が焦点になりかねず、新年の株価も調整を続ける可能性が高まっている。ただ、景気後退リスクの高まりに対して、FRBは「利上げ」終了から、年後半には「利下げ」に動くことが予想される。FRBは景気が改善するまで利下げを重ねるとみられ、この利下げ効果により株価は年終盤に景気回復を織り込んで上昇に転じることが期待される。

 新年も米国株の動向からは目が離せない。

◆前半に調整、下値メドは2万5000円~2万2000円

 日経平均株価の月足チャートを見ておこう。コロナショックで付けた20年3月安値の1万6358円から21年2月高値の3万0714円へと上昇したが、同年2月と9月高値の3万0795円でダブルトップ(二点天井)を完成。そこから株価は下落し、22年は調整に明け暮れた。

 ただ、22年3月につけた安値の2万4681円は、18~19年当時のもみ合い上限の水準に相当する。もみ合いの上限を上放れた後の調整(プルバック)はチャートのセオリーでもあり、この2万4681円はいまもテクニカルのポイントとして活きている。

 月足チャートの60カ月移動平均線はいま2万4490円処に位置しており、新春の調整でも下値として「2万5000円前後」がまず意識されることになろう。その2万5000円近辺を下値に反発するならば、月足チャートは「ダブルボトム(二点底)」となり、その後の上昇への期待が膨らむ。

 だが、22年安値の2万4681円で下げ止まらないと、100カ月線(2万2150円処)や120カ月線(2万0820円処)まで節がなく、下値として「2万2000円」模索を覚悟することになる。いずれにせよ、新年前半はコロナバブルの後遺症により波乱含みであり、下値模索の展開を想定しておく。

 そして、日経平均株価が切り返すなら、月足チャートは長期踊り場(調整)を経て二段上げに進む可能性が出てくる。二段上げの上値を計測すると「3万5000円~3万8000円」という値になる。もちろん、新年にその水準に一気に届くとは思えず、まずは「3万円~3万2000円」を目指すものとなるだろう。

 ロシアとウクライナの紛争に終止符が打たれるなら、株式市場は一時的に急上昇するだろう。だが、それで米国など主要国のリセッションが終わるとは限らず、また米中の緊張(台湾問題、ハイテク技術の流出)がほぐれるわけでもない。懸念材料は山積しており、調整からの上昇転換を確認するには時間を要することも覚悟しておきたい。

◆新年の注目株

 さて、新年の注目株だが、好材料があるにもかかわらず調整している銘柄をいくつか取り上げる。全体の相場を踏まえるなら、新春の調整局面を狙うのがポイントだ。

 まず、大型主力株では三菱重工業 <7011> [東証P]。説明するまでもなく総合重機トップで、国策に関わる防衛関連原子力発電関連の中核企業。ファンドを通じて機関投資家や個人投資家のマネー流入が続く。チャートは半年にわたって踊り場を形成しており、節目の5600円を抜くと二段上げに動き出して7000~7500円を目指すことになる。5000円に接近する場面を狙ってみたい。

 次は待ち伏せ妙味のある日本精工 <6471> [東証P]。ベアリング国内最大手だが、株価は22年12月に700円を割り込むなど、長らく低迷している。業績は悪くない。23年3月期は自動車や半導体向けが回復し、連結経常利益は前期比42%増の420億円、1株利益は52.6円を見込み、年間配当は30円(前期25円)と連続増配を予定。時価はPER 13.3倍、PBR 0.57倍、配当利回り4.28%。株価は動き出せば下値固めが十分なだけに4ケタ指向も難しくないだろう。600円台をコツコツ拾いたい。

 NEC <6701> [東証P]にも注目したい。通信機器・IT関連の大手で、顔認証など技術力に定評がある。 5Gなど通信インフラ(基地局)に注力し、政府が22年12月に閣議決定した国家安全保障戦略も、今後の同社の事業に大きく関わってこよう。材料に不足のない会社だが、時価は4600円台と21年4月高値の6850円から調整地合いが続く。足もとの収益鈍化は「5G」関連への積極投資によるもので、24年3月期以降は回復が期待される。22年1月安値の4330円に迫る調整局面が狙い目になる。PER 10.7倍、PBR 0.79倍と割安だ。

 中小型株では、まずイーソル <4420> [東証P]を挙げたい。株価は22年9月安値の522円から12月高値の964円まで上げた後、755円まで調整を入れた。だが、新年4月には自動運転「レベル4」の解禁を控えており、4ケタ台での活躍が期待される。

 HENNGE <4475> [東証G]はウルトラマンを起用したCMでお馴染みだが、その効果もあってクラウドセキュリティサービスが伸びている。株価は22年12月に1255円から920円まで調整しており、900円前後が狙い目となろう。

 新年の個別株投資では、全体相場を意識しながら「押し目買い、吹き値売り」で臨みたい。

(2022年12月29日 記)

情報提供:富田隆弥のチャートクラブ


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