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【特集】山岡和雅が2023年為替相場を大胆予測! <新春特別企画>

山岡和雅(MINKABU PRESS 外国為替担当編集長)

●転機を迎える米欧と日本の金融政策

 2022年の外国為替市場でドル円の値幅はリーマン・ショックの年などを大きく超え、1986年以来の大きさとなる38円47銭を記録しました。3月頃から大きくドル高が進み、10月に高値を付けた後は、12月に入って上昇分の半値を割り込むなど、最後まで激しい動きを見せる年となりました。

 2022年のポイントを一つ挙げるとすると、「世界的な物価高」だと思います。

 新型コロナの感染拡大が落ち着く中で、需要の拡大と生産回復の遅れからくる需給バランスの歪みが世界的な物価高につながりました。また、2月に起きたウクライナへのロシアによる軍事侵攻を受けた世界的なエネルギー価格の上昇も、物価を押し上げました。

 米国の消費者物価指数(CPI)は6月に前年比9.1%と約40年半ぶりの水準まで上昇。英国のCPI上昇率は11月に約41年ぶりとなる前年比11.1%、ユーロ圏のCPIは10月に10.6%と統計で遡れる1997年以降で最高水準を記録しています。

 こうした歴史的な物価高に対応するために、米連邦準備制度理事会(FRB)は2022年3月に利上げを開始した後、6月からは約27年半ぶりの利上げ幅となる0.75%の大幅利上げを4会合続けました。欧州中央銀行(ECB)は7月に利上げをスタートした後、9月、10月と2会合連続で0.75%利上げを実施、2021年12月から利上げをスタートしているイングランド銀行(中央銀行)も11月に0.75%利上げを実施しています。

 一方、日本銀行は長短金利操作(YCC)付き量的・質的緩和を継続。この金融政策姿勢の差が、10月までの大幅なドル高円安につながりました。

 しかし、2022年終盤に入り状況が変化してきています。FRB、ECB、英中銀は12月の会合で利上げ幅を0.5%に縮小。一方、日銀は予想外にYCCの修正に動き、長期金利である10年国債利回りの変動許容幅を±0.25%から±0.5%に拡大しました。黒田日銀総裁は会見で市場の歪みを改善するもので「利上げ」ではないと明言しました。しかし、市場は事実上の利上げと捉え、2013年から続く日銀の緩和政策の転換点に向かっていると認識しています。

●年明けは円高進行か、春以降はバトン引き継ぐ次期総裁次第に

 2023年の為替市場では、落ち着きを取り戻しつつある世界の物価動向と、変化を迎えつつある主要中銀の動きが重要なテーマになると思います。

 米FRBは12月の連邦公開市場委員会(FOMC)でターミナルレート(利上げの終着点)の見通しを従来の4.50-4.75%から5.00-5.25%に引き上げ、5.25%以上となる可能性も示しました。市場は次回のFOMCで利上げ幅が0.25%に再度縮小されると見ており、その場合、5.00-5.25%になるには最短で5月までかかります。5.25%以上となると6月以降も利上げが続くことになります。市場は12月FOMCの前まで3月での利上げ打ち止めを見込んでいましたので、利上げ終了時期の先送りとなります。利上げ幅の縮小傾向は短期的なドル高圧力の後退につながりますが、利上げ時期の先送りで中長期的なドル高が続く可能性が高まりました。

 ECBは次回理事会で0.5%利上げを継続する姿勢を示しました。3月以降も大幅利上げが続く可能性を示唆しています。ただ、市場はユーロ圏の景気先行き不透明感から経済への悪影響を懸念しています。英中銀は12月会合でのメンバーの投票において9名中2名が金利据え置きを主張するほど、経済状況が厳しくなっています。そのため、次回会合で利上げ幅を縮小してくる可能性があります。ともに今後の景気次第という印象です。

 判断が難しいのは日銀です。黒田総裁は4月8日に任期満了を迎えます。3月19日に雨宮、若田部副総裁が先に任期満了を迎えますので、その時に同時に退任する可能性もあります。いずれにせよ、退任までにあと2回の金融政策決定会合が予定されています。市場は今回の変動許容幅拡大を、次期総裁の下での緩和政策後退に向けた地ならしであるとみています。この場合、1月もしくは3月の会合でもう一段踏み込んだ対応が出てくる可能性があります。

 2023年の為替相場の見通しですが、12月の日銀金融政策決定会合のインパクトが、まだ消化し切れていないと思われます。そのため、年明けの反応としては円高が進む可能性を見ています。ただ、年明けの円高が年前半の大きなトレンドになるかどうかは、次回の日銀金融政策決定会合での黒田総裁の姿勢にかかっています。今回のYCC修正は利上げではないという姿勢を貫き、1月、3月の会合では目立った動きを見せず、緩和の修正が次期総裁に任されるようだと、米国の利上げ終了時期が固まる春頃まではドル高円安が進むと考えています。ユーロ円やポンド円でも円安が期待されますが、欧州の景気動向次第です。

 春以降は次期日銀総裁次第です。一部で期待されているマイナス金利解消に向けた動きが強まると、円高が進む可能性があります。

 年後半に向けては2024年に行われると見られる米国の利下げに向けた動きが注目されます。新総裁の下で日本の緩和後退が進む中、米国や景気状況の厳しい欧州で緩和に向けた動きが広がると、年後半にかけて円独歩高となる可能性があります。

 2022年同様、2023年も大きな値動きが期待される年となりそうです。状況の変化を見極めながら、素晴らしい年としてください。

2022年12月28日 記

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