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【特集】金は一段安、米FRBの大幅利上げ見通しで投資資金が流出 <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 金の現物相場は9月、米連邦準備理事会(FRB)の大幅利上げ見通しを受けて一段安となり、2020年4月以来の安値1654ドル台をつけた。7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、パウエル米FRB議長は「利上げペースを減速させることが適切となる」と述べたが、タカ派姿勢に変わりはなかった。ジャクソンホール会議の講演で、パウエル議長は「成長鈍化を伴ったとしても、インフレが抑制で金融引き締めが必要」との見方を示し、大幅利上げの可能性が高まった。

 市場では米金融当局者のドットプロットが注目されている。8月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比8.3%上昇と7月(8.5%、6月9.1%)同様、インフレ鈍化が示されたが、事前予想の8.1%を上回ったことから大幅利上げ継続の見方が強まった。CMEのフェドウォッチでは100ベーシスポイント(bp)利上げを織り込んだが、米生産者物価指数(PPI)が予想以下になったことで75bp利上げの見方で落ち着いた。米FRBは政策金利を4%以上に引き上げるとの見方から、11月の米FOMCでも75bp利上げの確率が高まっている。

 また、欧州ではロシアの天然ガス供給の停止などによるエネルギー高騰でCPIが過去最高を更新し、欧州中央銀行(ECB)も利上げ継続の見方が強い。利息を生まない金は手じまい売りが出やすく、引き続き下値を試す可能性がある。

●JPX金は円安進行でレンジ相場

 JPX金先限は5月以降、7405~8160円のレンジ相場が続いている。現物相場の軟調を受けて上値が抑えられたが、円相場が24年ぶりの円安水準となる1ドル=145円直前の円安に振れたことが下支え要因となっている。

 ただ、これまでの急激な円安を受けて政府当局者の円安けん制発言が出ている。神田財務官は、円安加速に対して「状況に応じて適切な対応を取る準備ができている」と述べた。また、鈴木財務相は「急激に進む円安の阻止に向けて、介入も選択肢になり得る」との見方を示した。日本銀行は介入の準備のために市場参加者に相場水準を尋ねる「レートチェック」も実施した。

 目先は明日までの日銀金融政策決定会合が焦点である。黒田日銀総裁は急激な円安に懸念を示したが、金融緩和措置を変更する可能性は低いとみられている。8月の消費者物価指数は前年比3.0%上昇と前月の2.6%や事前予想の2.8%を上回った。ただ、これまで同総裁は3%に近づく可能性があるが、来年には1.5%に減速するとの見方を示しており、明日の記者会見でも同様の見方が示されれば、再び円安に振れるとみられる。

●SPDRゴールド残高の減少が続く

 世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールドの現物保有高は、米FRBの大幅利上げ見通しを受けて引き続き減少し、20日に953.32トン(8月末973.37トン)となった。高インフレに対する懸念が残るが、欧米の当局者のタカ派姿勢を受けて投資資金が流出した。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは9月13日時点で9万7344枚(前週10万3857枚)となり、7月26日(9万2690枚)以来の低水準となった。ドル高が一服すれば買い戻しが入りやすくはあるが、テクニカル面で悪化し再び売り圧力が強まった。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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