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【市況】S&P500 月例レポート ― リセッション回避なるか、見方分かれる市場 (3) ―


●各国中央銀行の動き(および関連ニュース)

 ○イングランド銀行は予想通り、5会合連続での利上げを決定し、政策金利を(これまでの1.00%から1.25%に)0.25%引き上げました。また、今後さらにより大きな上げ幅での利上げが行われる可能性も示唆しました。

 ○スイス中央銀行は予想に反して政策金利を0.50%引き上げ、これまでのマイナス0.75%からマイナス0.25%としました。利上げは2007年以来です。

 ○米国では:

  ⇒FOMCは賛成10、反対1で0.75%の利上げを決定しました。カンザスシティ地区連銀のエスター・ジョージ総裁は0.75%の利上げ幅に反対し、0.50%の利上げを支持しました。0.75%という大幅利上げは1994年以来で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は1.50%-1.75%となりました。また、FOMCでは今後も利上げが続くとの見解も示され、その理由として、ウクライナ戦争がインフレに圧力をかけていることと、中国の都市封鎖により供給面の問題が悪化していることが指摘されました。

   →FOMCによるFF金利の予測は2022年末が3.4%(3月時点の予測では1.9%)、2023年末が3.8%(同2.8%)、2024年末が3.4%(同2.8%)となっています。

   →成長率見通しは下方修正され、2022年は1.7%(同2.8%)、2023年は1.7%(同2.2%)、2024年は1.9%(同2.0%)に見直されました。

   →失業率の予想は上方修正され、2022年が3.7%(同3.5%)、2023年が3.9%(同3.5%)、2024年が4.1%(同3.6%)となっています。

  ⇒パウエルFRB議長は議会証言の中で「FRBは必ずインフレを抑制する。FRBは間違いなくインフレを低下させなければならない」と発言して、FRBのインフレ抑制に対するコミットメントを繰り返し、いかなる水準であれ必要とされる水準まで金利を引き上げる用意があることを示唆しました。

  ⇒FRBは大手銀行34行に対する年次のストレステストを実施し、全銀行がリセッションの想定の下でも十分な自己資本を維持できることを再確認しました。

 ○経済制裁の影響によりロシアの外貨建て国債は(30日間の支払い猶予期間を迎えましたが)利払いが行われず、デフォルト状態に陥りました。

●企業業績

 ○500銘柄が2022年第1四半期の決算発表(暫定分を含む)を終え(7月に確定情報が出揃う)、385銘柄(77.0%)で営業利益が予想を上回り、101銘柄で予想を下回り、14銘柄で予想通りとなりました。また、売上高では497銘柄中361銘柄(72.6%)で予想を上回りました。

  ⇒2022年第1四半期の1株当たり利益(EPS)は、過去最高となった2021年第4四半期から13.0%減益、2021年第1四半期からは4.1%増益となりました。

  ⇒2022年第2四半期は前期比11.4%の増益(過去最高を記録した2021年第4四半期から3.0%の減益)と前年同期比5.7%の増益が見込まれます。

   →決算時期がずれている12銘柄が発表した2022年第2四半期の決算では、10銘柄で利益が予想を上回り、10銘柄で売上高が予想を上回りました。

  ⇒2022年通年の利益は前年比7.6%増と、過去最高を再度更新する見通しで、2022年の予想PERは16.9倍となっています。

  ⇒2023年の利益は同11.1%増が見込まれ、予想PERは15.2倍となっています。

  ⇒2022年第1四半期中に株式数の減少によって1株当たり利益(EPS)が大きく押し上げられた発表済みの銘柄の割合は17.6%でした(2021年第4四半期は14.9%、2021年第1四半期は5.8%、2019年第1四半期は24.9%)。

  ⇒2022年第1四半期の営業利益率は11.93%で、2021年第4四半期の13.41%から低下しましたが、依然として高水準を維持しています(1993年以降の平均は8.21%、最高は2021年第2四半期の13.54%)。

●個別銘柄

 ○百貨店のコールズ<KSS>は身売りに向けて、小売持株会社のフランチャイズ・グループ<FRG>と独占交渉中であることを明らかにしました。報道によると、買収の提案価格は1株当たり60ドル台となっています。今回の発表の前には、シカモア・パートナーズが1株当たり50ドル台半ばの買収価格でコールズと交渉していると報道されていました。

 ○百貨店のターゲット<TGT>は、消費者の支出動向のシフトが続いていることから、在庫の増加を警告しました。

 ○アップル<AAPL>は、世界開発者会議(Worldwide Developers Conference)を開催し、新しいMacBook AirとiMessageシステムの変更(送信済みのテキストメッセージを編集する機能)を発表しました。

 ○電気自動車メーカーのテスラ<TSLA>はプロキシーステートメント(株主総会参考書類)において、株主に対して、1対3の株式分割を行うために発行可能株式数の増加を承認するよう求めています。テスラは現在、高株価銘柄の中で最新の株式分割を発表した銘柄となっています。アマゾン・ドット・コム<AMZN>は6月に、1対20の株式分割を行いました。

 ○暗号通貨取引所運営企業のコインベース・グローバル<COIN>は、コスト管理の必要性を理由に、従業員の18%(6100人のうち1100人)をレイオフすると発表しました。

 ○スナックとシリアルのメーカーであるケロッグ<K>は、会社をシリアル(売上高24億ドル)、植物由来(同3億4000万ドル)、スナック(同104億ドル)の3社に分割することを明らかにしました。

 ○S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは、不動産企業のVICIプロパティーズ<VICI>、清涼飲料水メーカーのキューリグ・ドクターペッパー<KDP>、半導体メーカーのオン・セミコンダクター<ON>をS&P500指数に採用し、オラクル<ORCL>に買収されたヘルスケア企業のサーナー、電子機器メーカーのIPGフォトニクス<IPGP>、アパレル企業のアンダーアーマーのクラスC株<UA>とクラスA株<UAA>を同指数から除外しました。

●注目点

 ○ソフトウエア大手マイクロソフト<MSFT>はドル高による財務上の影響を理由に、業績見通しを下方修正しました。

 ○金融大手JPモルガン・チェース<JPM>のジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、金融引き締めとロシアのウクライナ侵攻を理由に挙げ、経済の「ハリケーン」に備えるよう投資家に求めました。

 ○ビットコインは(直近の)下落基調が続き、一時1万7709ドル(2021年11月は6万8790ドル、2019年11月の終値は7570ドル)まで値を下げ、年初来58.9%安(2021年12月末は4万6306ドル)の1万9024ドルで6月の取引を終えました。

 ○ウクライナは正式にEU(欧州連合)加盟を申請しました。

 ○サル痘の世界的な感染増加が続いています。新型コロナウイルスと比べれば低い水準にとどまっていますが、米国ではサル痘の検査施設を拡張しました。米国での新型コロナウイルスの震源地であったニューヨークでは、最初のサル痘ワクチンセンターが開設されました。

※「リセッション回避なるか、見方分かれる市場 (4)」へ続く

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