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【市況】S&P500 月例レポート ― リセッション回避なるか、見方分かれる市場 (2) ―


●主なポイント

 ○株式市場は6月に大幅に下落し、1928年以降で15回目となる弱気相場に突入しました。今年最初の営業日であった2022年1月3日に付けた終値での最高値4796.56からの下落率は20%を超え、6月16日には終値で3666.77と、高値から23.55%安の水準まで落ち込みました。その後、月末にかけてもみ合いながら徐々に戻し、高値から21.08%安、6月16日の安値からは4.23%高の3785.38で月の取引を終えました。マネーマネジャーや個人投資家による売りが集中していた月初と比べると薄商いとなりましたが、安値拾いの動きにより、後半に出来高はやや持ち直しました。暗号資産(仮想通貨)は大幅に下落し、金もわずかに下落しました。金利は大きく変動し、前月末を上回る水準で月末を迎えました。

  ⇒株式市場は6月に8.39%下落しました。5月はほぼ横ばいの0.01%上昇、4月は8.80%下落でした。第2四半期では16.45%下落、年初来では20.58%下落となりました。

  ⇒株価下落の根底にはインフレ懸念があり、FRBは0.75%の利上げを実施し、7月(さらに9月)にも追加利上げを行う意向を示しました。小売り企業は、消費者の買い控えが既に見られ、その傾向が続く見通しであるとの懸念を明らかにしました。

  ⇒S&P500指数の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)の6月の平均値は2.04%(5月は2.41%、4月は1.81%)、年初来では平均1.98%(5月末時点では1.96%)となりました。2021年は0.97%、2020年は1.73%、2019年は0.85%、2018年は1.21%、2017年は0.51%(1962年以降で最低)でした。

  ⇒S&P500指数は6月に8.39%下落して3785.38で月を終えました(配当込みのトータルリターンはマイナス8.25%)。5月は4132.15で終え、0.01%の上昇(同プラス0.18%)、4月は4131.93で終え、8.80%の下落(同マイナス8.72%)でした。過去3ヵ月では16.45%下落(同マイナス16.10%)、年初来では20.58%下落(同マイナス19.96%)、過去1年間では11.92%下落(同マイナス10.62%)となっています。

  ⇒2022年1月3日に付けた終値での最高値から21.08%下落し、コロナ危機前の2020年2月19日の終値での高値からは11.79%上昇(同プラス16.07%)して月を終えました。

  ⇒バイデン大統領が勝利した2020年11月3日の米大統領選挙以降では、同指数は12.35%上昇(同プラス15.19%)しています。

 ○500社が2022年第1四半期決算の発表(暫定分を含む)を終え、385銘柄(77.0%)で営業利益が予想を上回り、101銘柄が予想を下回り、14銘柄は予想通りでした。売上高は497銘柄中361銘柄(72.6%)で予想を上回りました。2022年第1四半期の1株当たり利益(EPS)は、過去最高となった2021年第4四半期から13.0%減益、2021年第1四半期からは4.1%増益となりました。売上高は2021年第4四半期からは2.2%減少しましたが、2021年第1四半期と比べると13.6%増加しました。

●利回り、金利、コモディティ

 ○米国10年国債利回りは5月末の2.85%から(3.50%に上昇した後)3.02%で月末を迎えました(2021年末は1.51%、2020年末は0.92%、2019年末は1.92%、2018年末は2.69%、2017年末は2.41%)。30年国債利回りは5月末の3.06%から3.19%に上昇して取引を終えました(同1.91%、同1.65%、同2.30%、同3.02%、同3.05%)。

 ○英ポンドは5月末の1ポンド=1.2602ドルから1.2172ドルに下落し(同1.3525ドル、同1.3673ドル、同1.3253ドル、同1.2754ドル、同1.3498ドル)、ユーロは5月末の1ユーロ=1.0732ドルから1.0483ドルに下落しました(同1.1379ドル、同1.2182ドル、同1.1172ドル、同1.1461ドル、同1.2000ドル)。円は5月末の1ドル=128.73円から135.71円に下落し(同115.08円、同103.24円、同108.76円、同109.58円、同112.68円)、人民元は5月末の1ドル=6.6725元から6.6994元に下落しました(同6.3599元、同6.5330元、同6.9633元、同6.8785元、同6.5030元)。

 ○6月末の原油価格は、5月末の1バレル=115.12ドルから同105.97ドルに下落(今年に入ってから一時同130.50ドルまで上昇)、年初来の上昇率は40.5%(2021年末は同75.40ドル)となりました。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は年初来で47.5%上昇しました(2021年末の1ガロン=3.375ドルから2022年6月末には同4.979ドルに上昇)。2020年末から原油価格は119%上昇し(2020年末は同48.42ドル)、ガソリン価格は114%上昇しました(2020年末は同2.330ドル)。EIAは2021年のガソリン価格の内訳について、53.6%が原油、16.4%が連邦税および州税、15.6%が販売・マーケティング費、そして14.4%が精製コストと利益だと説明しています。

 ○金価格は5月末の1トロイオンス=1840.60ドルから下落して1807.20ドルで月の取引を終えました(同1829.80ドル、同1901.60ドル、同1520.00ドル、同1284.70ドル、同1305.00ドル)。

 ○VIX恐怖指数は5月末の26.19から28.63に上昇して月を終えました。月中の最高は35.05、最低は23.74でした(同17.22、同22.75、同13.78、同16.12、同11.05)。

  ⇒同指数の2021年の最高は37.51、最低は14.10でした。

  ⇒同指数の2020年の最高は85.47、最低は11.75でした。

●バイデン大統領と政府高官

 ○バイデン政権はカンボジア、マレーシア、タイ、ベトナムの4ヵ国からの輸入太陽光パネルに対する関税を2年間免除すると発表しました。同時に、中国がこれら4ヵ国を経由して太陽光発電製品を米国に輸出することで関税を回避しているかに関する調査についても、追加関税が発生する結果にはならないだろうとの見解を示しました。今回の決定は米国内の太陽光パネルの製造業者には打撃になるとみなされた一方、米国内の太陽光発電装置の設置や「クリーン」エネルギー推進企業にはプラスに働くとみられています。

 ○バイデン政権はエネルギー企業に対し、「ガソリン供給を増やすための即時の行動を求める」内容の書簡を送付しました。

 ○バイデン大統領はガソリン価格の高騰に対応するため、1ガロン当たり0.184ドルの連邦ガソリン税を一時的に停止するように議会に要請しました。しかしながら、この提案は(法案を成立させるために必要な)議会の支持をほとんど得られなかったようです。

 ○バイデン大統領はドイツのエルマウで開催されたG7(主要7ヵ国首脳会議)に出席し、G7では中国からの経済的圧力への対抗措置が協議されました。

 ○米連邦最高裁判所は人工妊娠中絶を憲法上の権利と認めない判断を下しました。これを受けて、各州が独自の判断で法整備を進めることになり、複数の州が(州内での)中絶の権利を擁護する方向で動き始めました。

●石油

 ○ロシアを含む産油国で構成されているOPEC(石油輸出国機構)プラスの会合では、(すでに日量43.2万バレルの増産計画では合意していましたが)日量64.8万バレルの増産を行うことが決定されました。とはいえ、この増産幅は現在の、そして今後予想される夏場の消費量の増加を賄うには不十分と見なされ、原油価格は上昇しました。

 ○米国のガソリン価格の上昇は止まらず、1ガロン=5.107ドル(EIAによる全等級)まで上昇しました。結局、6月末は同4.979ドルで取引を終えましたが、2021年末の同3.375ドルと2020年末の同2.330ドルを上回りました。

●新型コロナウイルス関連

 ○世界的に変異株の感染が拡大しており、欧州の一部では重症化するケースが増加していると報告されています。中国では経済活動の再開の動きが続いています。

 ○新型コロナウイルス関連データ:

  ⇒世界全体のワクチン接種回数は121億回となりました(5月末は119億回)。

 米国は現時点で:

   →ワクチン接種回数が5億9800万回(同5億8700万回)となりました(ブースター接種を含む)。

   →人口の77.4%(同77.1%)が少なくとも1回はワクチンを接種したことになり、人口の66.3%(同66.0%)が2回の接種を終えました。人口の31.3%(同30.7%)がブースター接種を受けました。

   →新規感染者数の7日間平均は6月末時点で10万8963人となり、5月末時点の11万2464人から減少しました。1日当たりの新規感染者数は2022年1月11日に141万7493人に達しました(2021年11月末時点は8万3120人)。また、死者数の7日間平均は377人でした(5月末時点は374人)。

   →米国の新型コロナウイルスによる累計死者数は101万6000人となりました(5月末時点は100万4000人)。

※「リセッション回避なるか、見方分かれる市場 (3)」へ続く

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