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【市況】S&P500 月例レポート ― リセッション回避なるか、見方分かれる市場 (1) ―


S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

●THE S&P 500 MARKET:2022年6月
個人的見解:弱気派が入場し、強気派は退場(ただし、退場は一時的との見方が優勢)

 弱気派が入場し、強気派は退場しました。インフレの高進や金利の上昇、景気の減速を受けて、市場は6月についに弱気相場に突入しました。S&P500指数 は、終値ベースでの直近の高値(2022年1月3日の4796.56)からの下落率が20%に達したことで正式に弱気相場入りし、6月16日には終値で3666.77と、直近高値から23.55%安の水準まで落ち込みました。その後、売りが集中していた時期と比べると薄商いとなりましたが、安値拾いの動きにより、もみ合いながら徐々に戻し、前月末から8.39%安の3785.38で6月の取引を終えました。6月は57銘柄が上昇し、446銘柄が下落しました。

 第2四半期では16.45%の下落となり、第2四半期としては1970年(18.87%下落)以来最大の下落幅となりました。第2四半期は48銘柄が上昇(20%以上の値上がりはゼロ)、455銘柄が下落(20%以上の値下がりは148銘柄)しました。

 年初来では20.58%の下落で、やはり1970年(21.01%下落)以来最悪の上半期となりました。年初来では102銘柄が上昇(20%以上の値上がりは22銘柄)、400銘柄が下落(20%以上の値下がりは244銘柄)しました。昨年の7月4日、投資家は上半期で14.41%の上昇に沸いていましたが、今年の上半期は20.58%の下落となっています。

 現時点において、インフレが株価下落の原因として完全に悪者扱いされており、市場に「詳しい」歴史家は、米連邦準備制度理事会(FRB)による「過剰な」刺激策が40年ぶりの高インフレにつながったと指摘しています。そして現在のFRBは、1980年代にインフレと闘ったポール・ボルカー元FRB議長のようにインフレからの脱却を図り、リセッションを回避しようと取り組んでいますが、リセッションを回避できるかどうかについて、市場の見方は依然として分かれています(何とか回避して欲しいものです)。

 幅広く下落している現在の相場に関しては、これまでの経緯に着目する必要があります。S&P500指数は2020年2月19日、コロナ前の終値での最高値(3386.15)を付けましたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて急落し、3月23日には33.93%安の2237.40まで下落しました。それから株価は急反発し、同年8月18日には終値での最高値を181日ぶりに更新しました(3389.78)。それ以降、2022年1月3日に過去最高値(4796.56)を付けるまで、S&P500指数は最高値を90回更新しました。この間に、企業の利益(決算発表ベースの営業利益)、売上高、キャッシュフロー、自社株買い、配当はいずれも過去最高を更新しました。

 株式市場は年初来で下落していますが、住宅価格の上昇とこれまでの消費の手控えが支えとなり、富の総額は増加しています。その大半は過去数年間で築かれたものですが、均等には分配されていません。雇用および雇用に対する需要は高水準を維持していますが、一部で軟化の兆候が散見されています。これらの要素により、リセッションは回避されるか、限定的なものとなるか、あるいは短期間にとどまる可能性があります。

 現時点で重要な要素は次の通りです。1)インフレに対する消費者の反応:夏は消費が上向く季節ですが、6月の消費者信頼感指数は極めて低調で、16ヵ月ぶりの低水準となりました、2)今後2回の連邦公開市場委員会(FOMC)会合(7月27日と9月21日)での各0.75%の追加利上げをもって利上げが一時休止とされるかどうか、3)インフレデータが全体的に頭打ちするかどうか。

 7月上旬に購買担当者景気指数(PMI)、サプライ管理協会(ISM)景況指数、雇用統計などの発表が終われば、短期的には企業利益、より具体的には下半期のガイダンスが市場の動向を最も左右すると見込まれます。市場予想(若干の分析を含む)に基づくと、さまざまな形で業績発表が行われ、それぞれの業績発表に市場が反応するのに併せて、段階的に資産配分の見直しがやや行われ、一時的な市場のけん引役が生まれる可能性があります(買いがあればの話ですが)。

 定義について:終値ベースの過去最高値が更新されると(直近の過去最高値は2022年1月3日の4796.56)、弱気相場は終わったと見なされます。弱気相場中の安値(現時点では2022年6月16日の3666.77)から終値ベースで20%上昇したものの最高値更新には達していない場合、弱気相場中のラリーと見なされます。

 過去の実績を見ると、6月は56.4%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は3.85%、下落した月の平均下落率は3.17%、全体の平均騰落率は0.78%の上昇となっています。2022年6月のS&P500指数は、8.39%の下落となりました。

 7月は59.6%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は4.90%、下落した月の平均下落率は3.24%、全体の平均騰落率は1.61%の上昇となっています。

 今後の米連邦公開市場委員会(FOMC)のスケジュールは、2022年7月26日-27日、9月20日-21日、11月1日-2日、12月13日-14日となっています。

 S&P500指数は6月に8.39%下落して3785.38で月を終えました(配当込みのトータルリターンはマイナス8.25%)。5月は4132.15で終え、0.01%の上昇(同プラス0.18%)、4月は4131.93で終え、8.80%の下落(同マイナス8.72%)でした。過去3ヵ月では16.45%下落(同マイナス16.10%)、年初来では20.58%の下落(同マイナス19.96%)、過去1年間では11.92%下落(同マイナス10.62%)、2022年1月3日の最高値からは21.08%の下落、コロナ危機前の2020年2月19日の高値からは11.79%上昇(同プラス16.07%)して月を終えました。

 ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)は6.71%下落の3万0775.43ドルで月を終えました(配当込みのトータルリターンはマイナス6.56%)。5月は3万2990.12ドルで終え、0.04%の上昇(同プラス0.33%)、4月は3万2977.21ドルで終え、4.91%の下落でした(同マイナス4.82%)。過去3ヵ月では11.25%下落(同マイナス10.78%)、年初来では15.31%の下落(同マイナス14.44%)、過去1年間では10.80%下落(同マイナス9.05%)しました。

※「リセッション回避なるか、見方分かれる市場 (2)」へ続く

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