【特集】鈴木英之氏【再び波乱の日米市場、インフレ懸念と株価の行方】 <相場観特集>
鈴木英之氏(SBI証券 投資情報部長)
―米CPIは40年5ヵ月ぶりの上昇率、円安進行も加速―
13日の東京市場は再び波乱展開となった。日経平均株価は前週末比836円安の2万6987円まで売られた。前週末10日に発表された米5月消費者物価指数(CPI)が市場予想を上回り40年5ヵ月ぶりの水準となり、インフレ懸念からNYダウが大幅安となった。この流れを受け、この日の日経平均は急落した。為替も1ドル=135円前後へ円安が加速した。今後、14~15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を経て、日米株式市場はどう動くのか。これからの展望をSBI証券投資情報部長の鈴木英之氏に聞いた。
●「米国はスタグフレーション警戒、日本株に独自の堅調要因も」
鈴木英之氏(SBI証券 投資情報部長)
この日の日経平均株価は大幅安となった。この要因として、米5月CPIは予想を上回る前年同月比8.6%の上昇となったことが挙げられる。ただ、この日の警戒材料には他にも6月米ミシガン大学消費者態度指数が過去最低水準となったことや、米国の10年債と5年債の利回り水準が逆転して逆イールドが発生したことなどもサプライズ要因に働いた。
市場では、米国がスタグフレーション状態に陥ることを警戒しているのだろう。特に、6月と7月、そして9月のFOMCの動向が注目されているが、今後3回のFOMCで合計1.75%の利上げが行われるとの予想も出ている。これは、0.5%を3回では足らず0.75%の利上げも織り交ぜて実施することを意味する。こうしたなか、市場に浮上していたインフレのピークアウト説は大きく後退した格好だ。
ただ、日本株はこの2週間ほど米国株に対してアウトパフォームしている。これは、日本は超低金利政策が続けられているという「米国など海外との金融政策の差」や岸田首相が貯蓄から投資に向けた姿勢を強めるなか「金融課税への懸念が払拭された」こと。それに、ウクライナ危機や米中対立のなか「世界のなかでの相対的な日本の重要性が高まったこと」などがあるだろう。もちろん円安による業績拡大期待もある。これら独自の日本株を下支えする要因は今後も変わらないだろう。
こうしたなか、今後1ヵ月程度の日経平均株価の予想レンジは2万6500~2万9000円前後をみている。株式市場はいったん下落した後、値を戻す展開はあり得ると思う。
個別銘柄では、防衛関連株やインバウンド関連株などに注目している。防衛関連では三菱重工業 <7011> [東証P]やIHI <7013> [東証P]のほか、飛行機向けベアリングなどに絡み米国防衛大手企業への納入実績があるNTN <6472> [東証P]など。また、インバウンド関連では、JR西日本 <9021> [東証P]や京阪ホールディングス <9045> [東証P]など電鉄株、それに資生堂 <4911> [東証P]やコーセー <4922> [東証P]など化粧品関連株。加えて携帯翻訳機「ポケトーク」を手掛けるソースネクスト <4344> [東証P]などに注目している。
(聞き手・岡里英幸)
<プロフィール>(すずき・ひでゆき)
早稲田大学卒。リテール営業、調査部、株式部等を経て、SBI証券投資情報部長に。モーニングスター株式会社(投資調査部ゼネラル・マネジャー)へ転籍を経て現職。ラジオ日経、ストックボイス等で相場解説を行っている。
株探ニュース