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【市況】【杉村富生の短期相場観測】 ─国際マネーが次のターゲットに狙うのは?

経済評論家 杉村富生

「国際マネーが次のターゲットに狙うのは?」

●欧米諸国はインフレ抑圧にシフト、利上げラッシュ

 外部環境は相変らず、不透明である。ただ、はっきりしているのはウクライナ紛争は短期間に収束しそうにないこと、結果として原油、穀物など国際商品市況の上昇は止まらず、インフレ圧力が続くこと。そして、各国中央銀行はFRB(米連邦準備制度理事会)をはじめ、イギリス、カナダ、オーストラリアなど利上げを加速させていること。

 FRBは6月、7月、9月に各0.5%(50ベーシスポイント)の利上げを断行するだろう。ECB(欧州中央銀行)は7月に0.25%、9月に0.25%(インフレが鎮静化しなければ0.5%の可能性がある)と小幅の利上げにとどめるが、これはラガルド総裁の支持母体の東欧、南欧に配慮した(急激な利上げは両地域の資金調達を困難にする)ものだろう。

 カナダ、オーストラリアは0.5%の利上げに踏み切っている。インフレ抑圧優先だ。FRBは利上げとともに、バランスシート縮小を同時に行う。QT(量的金融引き締め)は6~8月が月間475億ドル、9月以降は月間950億ドルと計画されている。3年間に、FRBの総資産は2.5兆~3兆ドル減少する。

 ワールドダラー(FRBがアメリカ国内に供給するマネタリーベースと各国中央銀行が外資準備として保有するドルの総計)は確実に縮小に向かう。いわゆる、過剰流動性時代の終えんだ。すでに「バブルのアダ花」と称されたNY市場のミーム株、仮想通貨およびフィンテック株が急落、SPAC(箱物上場)市場は壊滅である。

 ちなみに、ワールドダラーの残高とMSCI世界株価指数は連動している。FRBの総資産とNYダウもそうだ。要するに、NY市場ナスダック市場は“高値しぐれ”状態になる。本格反発には利上げ、QTの打ち止めが不可欠だ。しかし、割り負けの日本市場がこれにつき合う必要はない。国際マネーは次のターゲットを探している。

●日本市場は独自の相場展開になる!

 日本市場(日本株)はその候補になり得る。すでに、台湾勢が日本企業、および大企業の事業部門を買いまくっているし、オイルマネーの参戦がみられる。それに、日本株はPER、PBR的に出遅れている。さらに、岸田政権の基盤は安定、高い支持率を誇る。投資の時代(個人金融資産の流動化)、日銀の金融緩和姿勢、中国の景気対策が追い風となろう。

 もちろん、個々にみると、企業業績は好調だ。2023年3月期は三井松島ホールディングス <1518> [東証P]、INPEX <1605> [東証P]、日本電子 <6951> [東証P]、エレマテック <2715> [東証P]、三和油化工業 <4125> [東証S]、翻訳センター <2483> [東証S]など最高益企業が続出する。

 翻訳センターは インバウンド関連に加え、大阪万博、IR(統合型リゾート→カジノ)という切り口がある。時価はPER8.0倍、PBR0.98倍と出遅れが著しい。45円配当を予定している。商いの乏しさが難点だが……。このほか、直近IPOのブイチューバー関連のANYCOLOR <5032> [東証G]は独歩高が期待できる。

 HANATOUR JAPAN <6561> [東証G]は業績こそ、ボロボロだが、株価は日韓関係良好→上昇、悪化→下落のパターンがみられる。先の読売新聞・韓国日報の共同世論調査は韓国の政権交代によって「日韓関係は良くなる」と両国民が答えている。インバウンド関連だ。業績面はいまが最悪の状況だろう。

2022年6月10日 記

株探ニュース

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