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【市況】明日の株式相場に向けて=骨太の方針が材料株相場のバックボーンに

日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
 きょう(8日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比290円高の2万8234円と4日続伸。終値では3月30日以来の2万8000円台回復となった。日経平均は2万7940円どころに位置する200日移動平均線近辺の攻防となっていたが、きょうは明確にここを上抜いてきた。1ドル=133円台まで急速な円安が進んでいることで、市場では「日本株はドル建てベースで見た場合はヨレた状態にあり、国内投資家の目に映っている日経平均の強さは本物ではない」(国内投資顧問会社ストラテジスト)という指摘も出ていたが、「円安・株高」の黄金タッグについてはアベノミクス相場時代と変化がないことが証明されている。あすのECB理事会の結果とラガルド総裁の記者会見、週末10日に発表が予定される5月の米CPIなど重要イベントを控えるが、きょうの東京市場の動きはそうした思惑とは関係のない次元で投資資金が流入しているようにも見える。

 ただし、今週のリスクオンの流れが来週以降も続くとは限らない。今週の東京市場は週末にメジャーSQ算出を控えている。「2万8000円のコールの売りが積み上がるなか、その踏み上げ狙いの仕掛けが入っている」(中堅証券アナリスト)とし、これが足もとの強気相場の隠れた原動力であるという見方を示す市場関係者もいる。為替動向に左右される要素が大きいとはいえ、SQ明け後となる来週は景色が変わる可能性もあり得る。

 個別では、三菱重工業<7011>の鉄壁の上昇トレンドは特筆に値する。前日に政府は骨太の方針を閣議決定したが、防衛力を5年以内に抜本的に強化することを明文化した意義は大きく、しかも防衛費はNATO諸国並みにGDP比2%以上を視野に置くという方向で、このインパクトは強烈なものがある。マーケットアナリストの話では「米国はアフガン撤退で防衛予算の大幅減少を余儀なくされているが、日本や欧州の増額分で相応にカバーが効く。三菱重の防衛関連売上高の増加もライセンスフィーなどで相当な金額が米国に流れるはずで、今回の防衛費増額は米国の意思が強く反映されている」という。

 しかしながら、株式市場はそうした事情はお構いなしで、惑うことなく防衛 関連株に物色の矛先を向けている。石川製作所<6208>や細谷火工<4274>、東京計器<7721>など同関連株に位置付けられる銘柄はまさに乱れ咲きの様相となり、出遅れていたリアル防衛省関連である理経<8226>などもきょうは売買高急増のなか値を飛ばした。また、防衛関連ではないが、原発再稼働という岸田政策関連のもう一つの象徴株である東京電力ホールディングス<9501>も再び動き出した。同社株については東証信用残、日証金ともに売り残(貸株)が増加する一方で買い残(融資)減少し、株式需給関係が締まってきたことがポイントだ。ファンダメンタルズで買えないという認識が空売りを呼べば、それが上昇の礎となる。

 そして防衛関連株に限ったことではないが、中小型株の急騰パフォーマンスも際立ってきた。空売りの買い戻しを誘発しながら、全体相場の時価総額も水かさが増すように回復色をみせているが、したたかな個人投資家マネーは、そうした環境面の変化を肌で感じ取りながら、投資のターゲットを主力株から値幅効果の期待できる足の速い銘柄に目ざとくシフトし始めている。

 政策テーマ買いの動きも横に広がる可能性がある。例えば、全国民が生涯にわたって歯科検診を受ける「国民皆歯科健診」義務化は一つの太い流れを形成している。そのなか、歯科検索サイトなどを運営するメディカルネット<3645>は注目しておきたい。また、医療機関のデジタルトランスフォーメーション(DX)シフトも岸田政権が推進する課題だ。その際、マイナンバーカードに健康保険証の機能を付加した「マイナ保険証」の利用がカギを握ることになり、このシステム導入を来年4月に義務化する方向で動き出している。同関連銘柄としては、ITbookホールディングス<1447>や、フライトホールディングス<3753>などをマークしておきたい。

 あすのスケジュールでは、朝方取引開始前に5月のマネーストックが開示されるほか、5月のオフィス空室率、5月の工作機械受注額の発表なども予定されている。また、6カ月物国庫短期証券の入札も行われる見通し。海外では、5月の中国貿易統計のほか、ECB定例理事会の結果発表とラガルドECB総裁の記者会見が注目される。米国では30年国債の入札が予定されている。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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