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【特集】供給不足で米ガソリン小売価格は高騰、需要は低調なままドライブシーズンへ <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司
 世界最大の石油消費国である米国はまもなくドライブシーズン入りする。来週30日のメモリアルデー(戦没将兵追悼記念日)以降、自動車で旅行に出かける人々が増加する傾向にある。ただ、コロナ後の需要回復は燃料小売価格の高騰によって打ちのめされており、ガソリン需要は前年割れの水準で推移している。燃料高に圧迫されつつもガソリン需要が増加するのか、季節的な消費拡大が見られない異例の需要期となるのか。夏場にかけての米国のガソリン消費の推移は、今後数ヵ月間の相場を見通すカギの一つである。米国でガソリン需要は石油製品全体の消費の約半分を占めている。

●低調な需要よりも更に供給が乏しい理由とは

 米エネルギー情報局(EIA)の週報で、ガソリン在庫は2億2018万9000バレルと過去5年のレンジ下限を下抜けて減少を続けている。上述したように需要は低調だが、それ以上に供給が乏しく、在庫が引き締まる傾向にある。燃料小売価格と原油の価格差が十分に広がっていることから、ガソリン生産を拡大すれば石油企業は収益的に潤うものの、増産が難しい。何故か。

 米国内の石油精製能力は2020年半ばに日量1897万6000バレルまで拡大した後、その後は右肩下がりである。足元では日量1794万1000バレルと、日量で約100万バレル減少した。コロナショックが石油企業を疲弊させたほか、主要国の脱石油の動きもあって、生産能力を増強することをためらう企業が多い。ガソリンの供給能力はひっ迫気味であるが、将来的に精製能力はさらに減少するだろう。

 米国でディーゼル燃料やジェット燃料を含む留出油の在庫の取り崩しが続いていることも、ガソリン供給を十分に増やすことができない背景である。留出油の生産を増やすなら、ガソリン生産を抑制する必要がある。留出油の在庫も過去5年のレンジ下限を下回って減少を続けており、ガソリンよりも供給不足が深刻かもしれない。今月、ニューヨーク港のディーゼル燃料のスポット価格は1ガロンあたり5.339ドルまで上昇し、過去最高値を更新した。年初は2.5ドル付近だった。ただ、ガソリン小売価格が年初来で2倍以上に跳ね上がっている地域もあり、上昇率はディーゼル燃料に引けを取らない。

●インフレ高進が家計を圧迫するなか、ガソリン消費は増えるのか

 ブレント原油やニューヨーク市場のウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)先物など指標となる原油相場の推移と比較すると、ガソリンやディーゼル燃料の小売価格の暴騰は明らかだ。エネルギー高の元凶として石油輸出国機構(OPEC)やロシアによるウクライナでの軍事行動が批判されることが多いものの、脱石油の世界的な潮流による精製能力不足も家計を圧迫している。エネルギー高は温暖化対策の副産物であり、地球を救うという大いなる理想に対して消費者が支払わねばならないコストだが、さらなる高値が消費者を待っている可能性が高い。

 ただ、インフレ高進が強まっているなか、2月以降の米消費者信用残高が急増していることは不穏でしかない。米国の消費者は借り入れの拡大でインフレ高進を耐え凌ごうとしているのか。物価上昇を見越した買いだめが信用残高の拡大につながっているのかもしれないが、金利上昇も含めて家計の苦しさは増している。需要期だからとはいえ、ガソリン消費は増えるのだろうか。今週もEIA週報に注目したい。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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