【特集】大反騰リベンジ相場へ! 国策に乗る「サイバー防衛」復活の5銘柄 <株探トップ特集>
DX時代に忘れてはならないのが、サイバー攻撃への対応である。日本でもサイバー警察局の発足など、政府の対策に本腰が入ってきた。
―サイバー警察局発足、DX革命進展で隠れていた本命テーマがついに本格始動―
●デジタルシフトはセキュリティーが必須課題
社会のデジタルシフトが進んでいるが、それに伴って近年はサイバー空間における安全性に対するニーズも浮き彫りとなっている。今から約4年前の2018年9月、経済産業省がデジタル化によるシステム刷新を集中的に進める必要性について報告書にまとめ、そうしなければ日本は多大な経済損失を被ることになるという、いわゆる「2025年の崖」について警鐘を鳴らした。そこから官民を挙げてデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが加速した経緯がある。
その後、高速通信規格5Gの普及が進み、人工知能(AI)の進化とともにあらゆるものをオンライン化するIoT社会のコンセプトも日常に浸透したが、これは国策的なDXに向けた取り組みの軌跡でもあった。近年は新型コロナウイルスの感染拡大による影響もあって、リモートワークの導入が加速し、企業のビジネス環境も一段とデジタルシフトの色を強めている。
ただし、ここで忘れてはならない最重要課題といえるのがセキュリティーの充実である。これがなおざりにされた状態ではDXの推進が徒花(あだばな)と化してしまうリスクも内包している。具体的には、企業や政府機関などが外部からのサイバー攻撃やデータ漏洩をいかに防ぐかという問題が大きなテーマとなっており、株式市場ではそのソリューションの担い手であるサイバーセキュリティー 関連株に改めて光が当たっている。
●サイバー警察局発足で日本も対応強化へ
サイバー攻撃の脅威が世界的に改めてクローズアップされたのは、ロシアのウクライナ侵攻が大きく影響していると思われる。ロシア側がウクライナに対し物理的(動的)な武力攻撃にとどまらず「非動的な」サイバー攻撃を絡めたハイブリッド戦を仕掛けていることから、安全保障の観点で緊急性の高いテーマとして耳目が集まった。
日本ではサイバー犯罪に対する対策強化を目的とした改正警察法が3月30日に成立、4月1日に施行となったが、それに合わせて、警察庁に捜査の陣頭指揮などを行う「サイバー警察局」及び「サイバー特別捜査隊」が発足し始動している。ハッカー集団「アノニマス」や「ダークサイド」などの犯罪集団が世界を舞台に暗躍し存在感を高めているほか、ロシアとの関係性が強いと言われる「コンティ」は、企業のコンピューターシステムを麻痺させて身代金を要求するというランサムウェアを仕掛ける世界最大級のサイバー攻撃集団として、世界中に脅威を与えている。
当然ながら日本でも企業や政府機関を狙う動きが今後活発化する懸念が拭えない。サイバー警察局の発足は、これに対応して国際的な捜査網に参加するための基盤を確立させ、各国との連携を強める狙いがある。サイバー犯罪から身を守るために企業や政府機関が足並みを揃えることは大切だが、警察が中核を担うことでその抑止効果は大きく増幅されることになる。これまでは金銭目的のサイバー犯罪に対応するのは生活安全局、国家レベルのサイバー攻撃事案は警備局、技術支援については情報通信局というように担当部署が分類されていたが、これを一元化することで迅速かつ総括的な対応が可能となり、結果として組織としてのサイバーセキュリティー機能が格段に高まることになる。
●民間にもサイバー防衛の精鋭企業がひしめく
民間でもサイバー防衛の一翼を担う企業群が注目されている。ランサムウェアのほか、近年急増している偽装メールなどを使った標的型攻撃など、多種多様のサイバー攻撃に一般企業では自力で対処できないケースも多い。
最近では、トヨタ自動車 <7203> [東証P]の事例が記憶に新しい。取引先の自動車部品メーカーがサイバー攻撃を受けシステム障害を起こしたことに伴い、トヨタは国内全工場を生産停止させる事態に追い込まれた。海外からのランサム攻撃であったもようだが、こうした一企業を狙った身代金要求型のサイバー犯罪は、今後も増加の一途をたどることが予想される。
このトヨタの生産ライン全停止の報道はセンセーショナルだったが、実際その後も同様な被害が後を絶たない。ブリヂストン <5108> [東証P]は米国子会社がサイバー攻撃を受けたことで、2月下旬から数日間にわたり工場の稼働を一時停止したことを発表。また、三櫻工業 <6584> [東証P]も3月に米国子会社がランサムウェアによる攻撃を受け、社内情報が漏洩する事態に陥った。パナソニック ホールディングス <6752> [東証P]もカナダの子会社がランサムウェアに感染し、社内情報が流出したことを4月初旬に発表している。もちろん、これらは氷山の一角に過ぎず、企業側にとって、サイバー防衛はグループを挙げての喫緊の課題となっていることは間違いない状況だ。
端末用のセキュリティーソフトだけでなく、標的型攻撃に対する監視サービスや、ウイルス侵入を許してしまった際の初動対応及びシステム復旧作業など、サイバー防衛を担う企業にもさまざまなビジネス領域があり、今後はそのサービスの裾野も広がっていくことが予想される。株式市場においても、関連銘柄に対する投資マネーの流入が今後本格化する可能性が高い。株価の位置的にもまだ底値圏もしくは底離れ初動のタイミングにある銘柄が多く、ここは狙い目となりそうだ。
●要注目のサイバーセキュリティー5銘柄
【DITは大幅増収益路線をひた走る】
デジタル・インフォメーション・テクノロジー <3916> [東証P]は独立系情報サービス会社で金融向けソフトウェア開発に高い実績を持つ。また、Webサイトの製作、管理、サイバー攻撃に対する防御までワンストップで行うシステムを手掛け、幅広い企業ニーズを獲得している。同社の戦略商品「WebARGUS」は、サイバー攻撃の完全防御は不可能という前提に立ち、Webが改ざんされても、それを検知して一瞬で元に戻し実害をゼロにするというコンセプトで好評を博し、ライセンス売り上げを伸ばしている。業績は、上場した15年6月期以降、7期連続で大幅増収増益を続けており、21年6月期営業利益は前の期比27%増益の17億2200万円を達成、22年6月期も前期比16%増の20億円を見込む。
【網屋はSaaS事業が業績飛躍の礎に】
網屋 <4258> [東証G]は昨年12月に旧マザーズ市場に新規上場したニューフェースだが、データセキュリティー事業とネットワークセキュリティー事業の2部門に特化しSaaS (必要な機能や分量のみをネット経由で利用者に提供)を軸にストックビジネスに傾注、収益高成長トレンドに乗っている。21年12月期営業利益は前の期比40%増の2億6000万円と急拡大したが、22年12月期も2ケタ成長トレンドを継続、前期比17%増の3億300万円を見込んでいる。2月にログ分析の専門チームがログを活用してセキュリティー対策を一括代行するサービスを始動、今後の需要開拓が期待されている。株式需給面では今月20日から貸借銘柄に選定され、流動性が高まることも人気素地の増幅につながる。
【No.1は自社企画製品で高収益変化】
No.1 <3562> [東証S]は中堅企業向けを中心に、OA機器の販売や自社企画で利益率の高い情報セキュリティー製品の販売、保守サービスを展開している。また、コンサルタント事業の育成にも注力姿勢をみせている。22年2月期業績は営業利益段階で前の期比39%増の8億5300万円と大幅な伸びを達成したが、その前の期(21年2月期)は70%増益という目を見張る変化率で過去最高利益を更新しており、その利益成長スピードは特筆すべきものがある。23年2月期は会計基準の変更に伴い前期との単純比較はできないものの、9億8000万円見通しと実質2ケタ増益を継続し、連続最高益更新が見込まれている。フルマネージドクラウドサービスの「デジテラス」などが好調で業績拡大を後押しする。
【大興電子は強力ラインアップで株価も割安】
大興電子通信 <8023> [東証S]は通信機器販売と情報システム構築を主力に手掛ける富士通系企業で、中小法人向けクラウドビジネスに傾注している。セキュリティー製品にも強く、非検知型のエンドポイントセキュリティーソフト「AppGuard(アップガード)」や高度なセキュリティーと運用性を両立させたファイル暗号化ソリューション「DataClasys(データクレシス)」などをはじめ、非常に豊富なラインアップを誇る。22年3月期営業利益は期初計画から大幅に上振れし、前の期比39%増の15億6000万円と急回復を示した。23年3月期は15億8000万円予想と前期比微増を見込むが、セキュリティー製品の強化が奏功し上乗せも視野。PERやPBR、配当利回りなど指標面でも割安だ。
【サイバトラスは新値街道も戻り5合目】
サイバートラスト <4498> [東証G]は認証・セキュリティー事業を主力とし、組み込みと電子認証技術を融合したIoT事業にも展開。SBテクノロジー <4726> [東証P]が同社の過半の株式を保有する親会社だ。安全性を徹底的に検証しリスクを排除するゼロトラストでは、デバイス証明書発行管理サービス「デバイスID」に新機能を付加したプレミアムバージョンを追加拡充し、需要開拓に努めている。業績は大幅成長路線をまい進し、売上高・利益ともに過去最高を更新し続けている。22年3月期営業利益は前の期実績の1.5倍となる8億6800万円と変貌、23年3月期も前期比15%増益の10億円予想と高成長が続く。株価も新値圏にあるが、昨年4月上場直後につけた最高値から見れば時価はまだ半値以下の水準だ。
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