【市況】【杉村富生の短期相場観測】 ─新東西冷戦構造の構築が追い風に!
経済評論家 杉村富生
「新東西冷戦構造の構築が追い風に!」
●相対的な強さを示す日本市場!
世界の金融市場がにわかに、波乱含みの展開となっている。きっかけはNYダウの暴落(18日は1164ドル安)だったが、為替市場ではスイスフラン、円(1ドル=127円台に)が買われ、東西冷戦構造時代のパターンが復活しつつある。確かに、戦後の国際秩序は崩壊した。バイデン大統領のアジア歴訪は新しい枠組みのスタートとなろう。
ただ、新東西冷戦構造は日本にとって、悪い話ではない。1990年のバブル崩壊、その後の「失われた30年」の発端は89年11月のベルリンの壁の崩壊(東西冷戦構造の終焉)にあった、と考えている。日本は中国などとの「大競争時代」に対応できず、集中攻撃の標的にされたじゃないか。
製造業の多くは国外脱出、結果として雇用と購買力が失われた。円高を放置した日銀のミスもある。この30年、賃金はほとんど増えていない。GDP(国内総生産)の3面等価の法則(生産→分配→支出)が示しているように、生産力の減少は最終的に消費の衰退につながる。これがデフレの主因である。
それが変わる。なにしろ、インフレだ。物価上昇は困るが、デフレよりも良い。すでに、日本市場は欧米市場に対し、相対的な強さをみせている。実際、18日のNYダウは3.57%、ナスダック指数は4.73%の下落だった。翌19日の日経平均株価は1.89%安、TOPIXは1.31%安にとどまっている。
ここにきての日本市場はしぶとい。そう、打たれ強いのだ。出遅れ感もあろう。現在、日経平均株価のPERは12.7倍、PBRは1.14倍だ。一方、世界平均(MSCIベース)のPERは15.2倍、PBRは2.65倍(アメリカのS&P500ベースは17.8倍、4.16倍)となっている。日本株は割安に放置されている。
●転機を迎えた? 国際マネーの「アメリカ集中」
NY市場の波乱は景気後退(景気指標、企業業績の悪化)リスクだけではないと思う。マーケットが脅えているのは6月のQT(量的金融引き締め)開始だ。再三指摘しているように、利上げには限界がある。これによって、インフレを封じ込めるのは難しい。FRB(米連邦準備制度理事会)が狙っているのは資産(株式、住宅)価格の下落による需要抑制だろう。
したがって、今後は「国際マネーのアメリカ集中」が転機を迎える。これは新東西冷戦構造と同様に、日本には追い風となる。株式市場の「NY離れ」につながるだろう。日本には個人金融資産に1092兆円の現預金(全体の54%)がある。この活用が求められる。政策対応次第ではいよいよ、本格的な投資の時代が到来する。
物色面はどうか。ここは好業績組とポストコロナ(復活組)を狙いたい。好業績組では日本特殊陶業 <5334> [東証P]、エレマテック <2715> [東証P]が面白そうだ。日本特殊陶業は主力のセラミック事業が伸びている。エレマテックは親会社の豊田通商 <8015> [東証P]と連携、EV(電気自動車)分野に注力の構え。
復活組では三井住友建設 <1821> [東証P]、シダックス <4837> [東証S]、Jトラスト <8508> [東証S]に注目できる。三井住友建設の2023年3月期の連結最終利益は80億円(前期は70.2億円の赤字)と黒字転換、1株利益は51.1円となる。配当は2円増の22円とする。アクティビスト系ファンドが大株主にいる。
シダックスはコロナ禍を克服、2023年3月期の連結営業利益は前期の253.8%増に続いて、51.5%増が見込まれている。1株利益は55.2円だ。配当は5円増の10円とする。メーンの給食事業がコロナショックに直撃された。それを乗り越え、再び成長軌道に回帰しつつある。これは評価できる。
Jトラストはここ数年、厳しい状況が続いてきた。しかし、ここにきて経営改革が一巡、業績は急浮上に転じる。2022年12月期の連結最終利益は309.6%増を見込み、1株利益は39.4円となる。配当は10円(前期は1円)を行う。株価は400円絡み。この水準のPERは10.4倍、PBRは0.47倍にすぎない。配当利回りは2.4%になる。
2022年5月20日 記
株探ニュース