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【特集】逆風跳ね返し成長続く! 今期も躍進期待の「最高益バリュー株」6銘柄選抜 <株探トップ特集>

23年3月期は製造業を中心に上場企業の業績回復が急減速する見通しだ。ここでは逆風が強まるなかでも過去最高益を計画し、かつ株価に割安感のある6社をエントリーした。

―暗雲立ち込めるなかでも最高益路線まい進、株価の見直し余地大きい6社リストアップ―

 怒濤の決算発表ラッシュを通過し、22年3月期決算発表がほぼ出そろった。例年3月期の本決算発表は特定日に集中しやすいが、今年は特にその傾向が強く、ピーク日の13日は全体の4割にあたる約930社が発表するという異例の多さになった。ゴールデンウイークが最大10日間の大型連休となった影響のほか、先行きが見通しにくく業績予想の見極めに時間を要したことが後ろずれの要因とみられる。

 上場企業の22年3月期業績は、新型コロナウイルス感染拡大の影響からの回復が鮮明となり、経常利益段階で前の期と比べ32%増と大幅な増益を達成した。資源高を背景に商社や鉄鋼で最高益を大幅に更新した企業が相次いだほか、海運大手はコンテナ運賃の高止まりで上方修正を繰り返すなど絶好調だった。また、今年に入って急速に進んだ円安も主力輸出株に追い風となった。一方、23年3月期は原材料高騰などが利益を圧迫する形で、回復基調が続いていた企業業績に急ブレーキがかかる見通しだ。

 今回の株探トップ特集では、収益環境に向かい風が強まるなかでも成長を続ける見通しを示す企業に注目。23年3月期に経常利益段階で最高益更新を見込む企業の中から、株価指標面で割安感が強く、水準訂正妙味の大きい銘柄を探った。

●23年3月期は業績回復が急減速

 16日までに23年3月期の業績予想を開示した東証上場企業2043社を集計したところ、経常利益の合計額は前期に比べ2.9%減る見通しとなった。トヨタ自動車 <7203> [東証P]をはじめとする自動車大手 化学食品メーカーなどは原材料価格の高騰が逆風となるほか、前期に利益が急拡大した 海運石油元売りは大幅減益に転じる見込みだ。一方、客足回復が進む鉄道レジャー関連デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展が追い風となる情報通信業には増益見通しの企業が目立つ。全体としては、資源高や中国での新型コロナ感染拡大など先行き不透明感が強いなか、製造業を中心に慎重な業績見通しを示す企業が多くみられた。

 こうしたなか、今回は23年3月期に経常利益が過去最高益を更新する計画で、かつ株価指標が割安圏にある銘柄に照準を合わせた。以下では、決算内容が評価され株価が戻り基調にある最高益企業のうち、予想PER(株価収益率)の水準が低く、一段の上値が期待できそうな6銘柄を紹介していく。

●デクセリはニッチ分野の高付加価値品を武器に連続最高益へ

 デクセリアルズ <4980> [東証P]はソニーケミカルを前身とし、タッチパネルなどに使われる導電性接着材料の異方性導電膜(ACF)やディスプレー用の反射防止フィルム、光学用透明接着剤で世界トップシェアを誇る機能性材料メーカー。前期業績は光学フィルムやACF、精密接合用樹脂、表面実装型ヒューズの販売が拡大し、経常利益は250億2300万円(前の期比2.3倍)に膨らんだ。続く23年3月期は新製品の蛍光体フィルムで昨年8月から量産を開始したノートパソコン向けが通期で寄与するほか、高価格帯スマートフォン用の電子材料などが伸びる。更に円安による収益押し上げ効果も加わり、経常利益は前期比18.3%増の296億円と3期連続で最高益を更新する見通しだ。なお、想定為替レートは1ドル=118円と実勢より10円以上も円高に設定しており、一段の利益増加に期待がかかる。また、配当は前期比5円増の65円(創業10周年記念配当5円を実施)を計画するほか、最大50億円規模の自社株買いを発表するなど、株主還元にも余念がない。

●特殊陶は積極還元で配当利回り5%超と高水準

 自動車のエンジン向け点火プラグの世界最大手である日本特殊陶業 <5334> [東証P]の前期業績(国際会計基準)は、売上高4917億3300万円(前の期比15.0%増)、税引き前利益836億4200万円(同60.8%増)といずれも過去最高を大幅に塗り替えた。半導体不足による自動車生産調整の影響を受けたものの、利益率の高い補修用プラグや半導体製造装置用部品の拡大などで跳ね返した。23年3月期は自動車生産の回復を背景に新車組み付け用プラグや排ガスセンサーが持ち直すほか、半導体関連部品の増勢が続く計画で2ケタ成長継続を見込む。原材料高騰分の価格転嫁に加え、為替の円安進行もプラスに働く。好調な業績を踏まえ、配当は前期比36円増の138円に増配する方針を示し、配当利回りは5%台後半で推移している。一方、予想PERは7倍弱と割安感が極めて強く、株価の水準訂正余地は大きそうだ。

●フジクラは17期ぶり最高益と大復活へ

 フジクラ <5803> [東証P]は20年3月期に光ファイバー製造設備の減損損失などで過去最大の最終赤字385億1000万円に沈んだが、事業構造改革や固定費削減などを経て、22年3月期は391億100万円の黒字と急浮上を遂げた。高機能通信ケーブルで欧米を中心としたデータセンターや高速データ通信サービス向けの旺盛な需要を取り込んだほか、フレキシブル基板などで採算重視の受注を進めたことも奏功した。23年3月期はエレクトロニクス事業で好採算品の比率が一段と高まり、経常利益は370億円(前期比8.5%増)と17期ぶりに過去最高益を奪還する計画だ。好決算見通しを受けて株価は約3年11ヵ月ぶりの高値圏に浮上したが、予想PERは9倍前後にとどまっており、一段の上昇余地がありそうだ。

●オルガノは半導体向け水処理装置の大型受注案件豊富

 オルガノ <6368> [東証P]は東ソー <4042> [東証P]系の総合水処理エンジニアリング企業で水処理設備や薬品などを手掛ける。足もとでは半導体市場が拡大するなか、ウエハーなどの洗浄に使われる超純水の供給設備など電子産業分野をドライバーとして成長を続けている。前期業績は国内や台湾、中国で大型プロジェクトの工事が順調に進み、売上高1120億6900万円(前の期比11.4%増)、経常利益115億4500万円(同16.6%増)といずれも過去最高を更新した。23年3月期は2期連続の増収増益を目指す。国内外で半導体関連の大型設備投資が複数見込まれるうえ、繰り越し受注残高も高水準にある。9月末には1株から4株への株式分割を実施する予定としており、需給妙味も高まっている。

●エレマテックは低PER・低PBR・高配当株として注目

 エレクトロニクス商社のエレマテック <2715> [東証P]は他社ブランド製品を設計から製造まで行う高付加価値型の完成品(ODM)ビジネスを強化しており、ドライブレコーダーで需要を捉えている。前期はドラレコに加え、自動車関連部材や中国向けゲーム機器関連部材が好調だったほか、円安進行も追い風となり、経常利益は78億6700万円(前の期比51.9%増)と7期ぶりの最高益更新を果たした。23年3月期は5G対応スマートフォンの普及や自動車電装化の進展を背景に、経常利益は86億5000万円(前期比9.9%増)に伸びる計画だ。予想PER8倍台、PBR0.8倍近辺と割安評価にある一方、配当利回りは5%前後と高水準で投資妙味は大きい。今後は豊田通商 <8015> [東証P]グループの強みを生かした電気自動車(EV)関連の商機獲得も期待される。

●シュッピンはカメラと時計のEC軸に成長継続

 シュッピン <3179> [東証P]の前期業績は主力のカメラと時計がECを中心に絶好調で、売上高434億5300万円(前の期比28.0%増)、経常利益31億8700万円(同96.0%増)と業績高変化を遂げた。メーカー各社がフルサイズミラーレスカメラの新製品を投入したことに加え、品揃えを強化した人気ブランド「ロレックス」の価格高騰も追い風となった。また、人工知能(AI)を活用した中古カメラ売買価格改定の自動化システムが本格稼働したことも採算改善につながった。23年3月期はカメラと時計を中心に新規顧客を伸ばし、経常利益34億7600万円(前期比9.1%増)と2期連続最高益を計画する。配当も30円(前期比2円増)に増配する方針だ。同社の期初予想は保守的で期中に上方修正するケースが多く、一段の上振れも期待できる。決算と同時に発表した中期経営計画では、25年3月期に経常利益50億6700万円の目標を掲げる。

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