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【特集】プラチナ相場が堅調、ウクライナ緊迫化に伴うパラジウム高も支援要因<コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 プラチナ(白金)の現物相場は、米連邦準備理事会(FRB)の早期利上げを織り込み、ドル安に振れたことに加え、ウクライナ情勢の緊迫化を受けて パラジウムが急伸したことを受けて上値を伸ばし、昨年11月19日以来の高値1060ドルをつけた。

 FRBの早期利上げ観測は行き過ぎとの見方もあったが、地政学的リスクの高まりを受けて原油高が続くなか、3月利上げが確定路線となった。量的緩和の縮小(テーパリング)終了後にバランスシート縮小を進める見通しとなっており、金融引き締めに転じることになる。ドル指数が2020年7月以来の高値97.44をつけており、ドル高が続くと、プラチナの上値を抑える要因になるとみられる。

 ただ、新型コロナウイルスのオミクロン変異株の重症化のリスクが低下し、英国が共生を目指して制限措置を撤廃しており、今後の景気回復につながればプラチナの需要が増加し、需給が引き締まるとみられる。感染拡大が続いていることから上値を積極的に買い上げる向きは少ないが、中長期の景気回復見通しから調整局面の安値は買い拾われるとみられる。

 一方、ウクライナ情勢の緊迫化を受けてパラジウムが急伸したことはプラチナの支援要因である。ロシアは北大西洋条約機構(NATO)の東方不拡大を要求しているが、欧米が受け入れず、協議が難航している。ロシアがウクライナ国境に軍隊を配置するとNATOも欧州東部に部隊を配置し、緊張が高まった。また、欧米はロシアに対する経済制裁を検討しており、発動すればパラジウムの輸出制限につながるとみられている。ニューヨーク・パラジウム市場でファンド筋が売り方に回っており、ウクライナ情勢が緊迫化すれば買い戻し主導で上値を伸ばす可能性がある。

●プラチナは中国経済の行方も確認

 インフレ懸念や景気回復見通しを受けてFRBの3月利上げが見込まれている一方、中国人民銀行は1月20日、最優遇貸出金利(LPR)1年物を0.10%引き下げ、3.70%にしたと発表した。景気減速懸念が強まるなか、2ヵ月連続で利下げを決定し、金融緩和を強化した。

 2021年第4四半期の中国の国内総生産(GDP)は前年同期比4.0%となり、第3四半期の4.9%から伸びが鈍化した。不動産大手「恒大グループ」のデフォルト(債務不履行)懸念などを受けて不動産部門が大きく減速した。また、昨年12月から1月にかけては新型コロナウイルスの感染再拡大が景気回復を遅らせる要因になった。

 1月の中国の製造業購買担当者景気指数(PMI)は50.1と前月の50.3から低下した。景況感の分かれ目となる50を上回ったが、沿岸部の小規模製造業者が調査の中心となる財新製造業PMIは49.1と前月の50.9から低下し、2020年2月以来の低水準となった。先行き期待も悪化しており、中国経済の回復が遅れるとプラチナの上値を抑える要因になるとみられる。

 2021年の中国の自動車販売台数は前年比3.8%増の2628万台と4年ぶりに増加に転じており、中国汽車工業協会(CAAM)は今年の生産・販売も昨年を上回ると予想した。自動車販売の回復が続くかどうかも確認したい。

●プラチナETFに投資資金が戻るかどうかを確認

 プラチナETF(上場投信)残高は1月31日の米国で36.60トン(昨年11月末38.38トン)、英国で16.40トン(同19.92トン)、南アフリカで13.06トン(同13.14トン)となった。合計で5.38トン減少した。プラチナ価格は昨年12月半ばの900ドル割れから持ち直したが、新型コロナウイルスの感染拡大などで景気の先行き不透明感が残り、戻り場面で投資資金が流出した。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、1月25日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは1万3792枚(前週7229枚)と、昨年12月21日の1268枚を底として拡大に転じた。また、ニューヨーク・パラジウムの大口投機家の売り越しは1988枚(同3309枚)に縮小しており、ウクライナ情勢と合わせて確認したい。

 ロンドン貴金属市場協会(LBMA)の2022年見通しによると、プラチナの予想平均価格は1063.40ドルとなり、昨年の平均1090.20ドルから2.5%下落する見通しとなった。予想レンジは771~1174ドル。供給過剰見通しが圧迫要因になると想定されている。ただ、2023~24年に供給不足に転じ、供給過剰幅は縮小するとみられている。一方、電気自動車(EV)への移行が進むことで自動車排ガス浄化触媒の需要が伸び悩む見通しである。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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