【特集】22年IPOのスタート迫る、新規上場の波乱相場はなお続くか <株探トップ特集>
2月IPOが始まる。初値の公開価格割れが続出した昨年12月相場のリベンジが期待されているが、世界的な株安という不安要因に揺れるなかIPO人気復活はあるか。
―2月は8社登場、大量上場の12月相場の余波と世界株安の影響を注視―
2022年の株式新規公開(IPO)が3日から始まる。昨年12月は大量のIPOが登場したことで、需給関係が悪化。初値が公開価格を下回る銘柄が続出した。新年のスタートを飾る2月IPOは昨年末のリベンジが期待されている。しかし、新年に入り世界的な株安に見舞われるなど相場環境は厳しい。中小型株で構成される東証マザーズ指数も下げ基調が続く状況だ。果たして、IPO人気は復活するのか。
●12月相場は初値の公開価格割れ続出、大量上場に怨嗟の声も
2月は8社の新規上場が予定されている。昨年2月に比べて1社の増加となる。昨年2月は上場企業全ての初値が公開価格を上回り、4倍強に跳ね上がる銘柄もあった。
では、今年はどうか。その内容をみる前に、波乱状態となった昨年12月IPOを振り返ってみたい。12月は32社の新規上場企業が登場した。1ヵ月の上場企業数として30年ぶりの水準とも言われ、1日に7社が同時上場する日もあった。
異例の超ラッシュ状態とも呼ばれたが、その結果は「供給過多で需給が崩れた」(アナリスト)とも指摘されるなか、新規上場12社の初値が公開価格を下回った。実に4割近いIPOの初値が公開価格割れとなった格好だ。「これほどの数のIPOを一気に実施すれば、株価が低迷するのは当然」(市場関係者)と憤る声も出ている。東証マザーズも下落基調が続くなか、上場後のセカンダリーマーケット(流通市場)でも低迷し公開価格を大きく下回っている銘柄は珍しくない。IPO株を抱え込んで身動きが取れなくなっている投資家も少なくない。
そんななか2月IPOが始まる。12月相場の不振を払拭することができるかが、最大の焦点だ。2月IPOは、ジャスダック市場への上場が2社、東証マザーズへの上場が6社といった内訳だ。デジタルトランスフォーメーション(DX)関連やサービス関連銘柄などが目立つ。資金調達金額が小さい銘柄が多い。ただ、12月は異例の大量IPOが懸念視されたが、この2月は年初からの米国に端を発した世界株安という荒れる環境のなかでのスタートとなる。
●「第1号IPO銘柄は人気化する」の経験則は続くか
今年のIPO第1号銘柄となるRecovery International <9214> [東証M]は、3日に東証マザーズに上場する。同社は訪問看護サービスを手掛けている。主幹事は岡三証券で、資金吸収額は約19億円と、2月IPOのなかでは大きめだ。関係者からは「業態としては地味」(アナリスト)とみる声もある。ただ、市場には「その年のIPO第1号銘柄は人気化する」というアノマリー(経験則)もあり強弱観が対立する。同社株の初値を含む株価動向は、2月のみならず今年のIPO市場をみるうえでの試金石となりそうだ。
続いて4日にはジャスダック市場にセイファート <9213> [JQ]が上場する。同社は、美容師向けの広告求人や紹介・派遣サービスなどを手掛ける。主幹事はみずほ証券で、資金吸収額は9億円程度。9日には東証マザーズにライトワークス <4267> [東証M]が登場する。同社は人材管理システムやオンライン英会話サービスを展開している。主幹事はエイチ・エス証券で、資金吸収額は7億円程度だ。
●エッジテクノの仮条件価格が話題に、市場環境を反映か
17日に東証マザーズに上場するエッジテクノロジー <4268> [東証M]は人工知能(AI)実装の支援やビッグデータ解析コンサルティングを手掛ける。主幹事はSMBC日興証券で、仮条件の上限で弾いた資金吸収額は11億円弱だ。
市場では、上場発表時に示されたエッジテクノの想定発行価格690円が、仮条件段階で300~350円に大幅に引き下げられたことが注目されている。同時に公募や売出株数なども減らし、資金吸収額は当初見込みの半分以下の水準に減額された。これは、「足もとの株安の影響を考慮したものだろう」(市場関係者)ともみられている。発行価格の決定に関しては、Recovery Internationalなど上記3社も仮条件のレンジの上限を想定発行価格とする一方、下限を下方水準に広げたうえで、結果として上限で決まっている。
エッジテクノに関しては、AIなど時流に乗る事業を展開し、資金吸収額も小さくなったことから、買い妙味を指摘する声もある。ただ、同時に現在の市場を取り巻く環境の厳しさも意識されている。
●全体相場がどこまで盛り返すかがIPO人気を左右
22日には東証マザーズにCaSy <9215> [東証M]とジャスダックにノーザ <4269> [JQ]の2社が同時上場する。CaSyは家事代行サービスを行っており、想定発行価格からみた資金吸収額は3億円程度。ノーザは歯科用レセプトコンピューターや透析業務支援システムの開発・販売などを手掛ける。資金吸収額は18億円程度。主幹事はそれぞれSBI証券と野村証券。24日には東証マザーズにBeeX <4270> [東証M]が登場する。同社は企業の基幹システムのクラウドへの移行サービスなどを手掛ける。現時点での資金吸収額は6億円程度で、DX関連銘柄として人気が期待される。主幹事は大和証券。
25日には東証マザーズにマーキュリーリアルテックイノベーター <5025> [東証M]が上場する。同社は不動産情報プラットフォーム事業を行っている。主幹事はSBI証券で想定される資金吸収額は7億円程度だ。
2月IPOは、全体相場の行方に左右される面が大きい。日経平均2万7000円前後の水準では人気の盛り上がりは厳しいとの見方があるが、その一方で、小型企業が多いだけに参加者が限られても何とかこなすのでは、との期待も出ている。加えて、発行価格がいくらで決定されるかという価格設定も、新年のIPO相場をみるうえでは重要となるかもしれない。
■2月IPO銘柄一覧
上場日 コード・上場市場 企業名 主幹事
2月3日 9214・東マ Recovery
International 岡三
4日 9213・JQ セイファート みずほ
9日 4267・東マ ライトワークス エイチ・エス
17日 4268・東マ エッジテクノロジー SMBC日興
22日 9215・東マ CaSy SBI
22日 4269・JQ ノーザ 野村
24日 4270・東マ BeeX 大和
25日 5025・東マ マーキュリー
リアルテックイノベーター SBI
(注)東マは東証マザーズ、JQはジャスダック
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