【経済】【IR】リミックスポイント小田社長に聞く <トップインタビュー>
電力自由化の波、感染症対策、
熱狂する暗号資産市場・・・
株式会社リミックスポイント
代表取締役社長CEO 小田玄紀
熱狂する暗号資産市場・・・
株式会社リミックスポイント
代表取締役社長CEO 小田玄紀
プロローグ
様々な産業界で異業種参入が増えている。例えば、FinTech(フィンテック)化が進む金融市場や、カーボンニュートラルへ向けた取り組みにより、電力や再生可能エネルギー分野での新規事業参入が顕著だ。一体なぜなのか? その背景には、法改正に伴う規制緩和など、市場環境の急速な変化がある。2016年に改正された電気事業法も、電力小売の全面自由化により事業者が増え、消費者にとってもプラン・料金体系の選択肢が増える好機となった。今回は、暗号資産交換所「ビットポイント」の運営や売電事業など多角的に事業を展開するリミックスポイント<3825> の小田玄紀CEOへのインタビューを通じ、同社が掲げる社会課題の解決とは何か、また多角的事業展開は将来的に持続成長の可能性を担保でき得るのかなど探った。
株式会社リミックスポイント 代表取締役社長CEO
株式会社ビットポイントジャパン 代表取締役
小田玄紀
1980年生まれ。東京大学法学部卒業。大学在籍時に起業し、のちに事業を売却した資金を元にマッキンゼー・アンド・カンパニー出身者らとともに投資活動を始める。「頑張る人が報われる」をコンセプトにして起業家や社会起業家に対して、事業立ち上げ・経営の支援を行う。2002年より当時はまだ珍しかったスタートアップベンチャー支援を手掛ける。2011年の東日本大震災を契機に、「日本でも再チャレンジを当たり前にしたい」という思いから事業再生を開始する。この一環で要請を受けリミックスポイントの社外取締役に就任。エネルギー関連事業や仮想通貨交換業、さらに旅行関連事業、感染症対策事業などを立ち上げて2016年同社代表取締役に就任。また、同年3月には上場企業子会社としては日本初の暗号資産交換所であるビットポイントを立ち上げ、同社代表取締役に就任する。取締役就任時には4億円だった時価総額を2018年には1000億円にまで向上させた。2018年に紺綬褒章を受章。2019年には世界経済フォーラムよりYoung Global Leadersに選ばれる。
事業概要
変化を楽しみ、新しい「スタンダード」を創造する
上記を企業理念とする同社は、2004年に業務用アプリケーション開発を目的に設立。以降、順調に業績を伸長させ、2006年にマザーズ上場、そして2017年に東証2部上場を果たした。
チェンジメーカーとして規制緩和・法律改正を好機と捉え、様々なビジネス展開を広げる同社だが、現在大きく分けて4つの事業を展開している。
チェンジメーカーとして規制緩和・法律改正を好機と捉え、様々なビジネス展開を広げる同社だが、現在大きく分けて4つの事業を展開している。
1. | 電力小売事業を中心とした「エネルギー事業」 |
2. | 暗号資産交換業を中心とした「金融関連事業」 |
3. | 省エネ・感染症対策を中心とした「レジリエンス事業」 |
4. | 中古車の買い取り販売を中心とした「自動車事業」 |
2012年から事業再生請負人として参画
以前は箱型経営と揶揄(やゆ)されていた時期もあったリミックスポイント。どこに可能性を見出したのか?
私がリミックスポイントに参画する際は、周りからもやめたほうがいいというネガティブな意見が多かったですね。しかし、実際に自分の目で会社の中身を見てみると、外部の印象とは異なり、実は本当に真面目な人たちが愚直に事業に取り組んでいたため、そこに一番の可能性を感じました。
初めの1年は、社外取締役として毎月1回のペースでお手伝いをしていましたが、ある日事業の根幹をなす契約が打ち切りとなってしまいました。しかし、この契約の打ち切りを機に、会社がゼロからの出発となったことで、本格的に経営への参画を決断する大きな契機となりました。
着任から時価総額1000億を目指すことを公言
当時から同社の進むべき道は決めていた?
当時は偶然の連続でした。
リミックスポイントの代表として従業員4人からの再スタートとなった当時、世の中は東日本大震災から復興に向けて歩みだすタイミングでした。時を同じくして、知人から省エネ関連の事業を引き受けないかとの相談がありました。当時、震災によってエネルギー問題が浮上しており、関心が高まっていた省エネコンサルティング事業を始めることにしました。
ゼロからの事業創生のポイントは?
お伝えした通り、省エネコンサルティング事業を始動させ、2014年からは電力小売事業に参入しました。電力小売事業(エネルギー事業)を始めてからは、それまで数億だった売り上げが数十億規模へ拡大しました。もちろん、このままエネルギー事業会社として会社を拡大していく考えもありました。しかし、エネルギー事業の成功体験の要因分析を行い、改めて我々の強みを考えてみると、規制緩和や法律改正などの社会変化を捉え、お客様のニーズに合わせサービス展開を実現できる機動力と柔軟性、コンサルティング業務で培ってきたノウハウ・経験こそが、我々のビジネスの軸になっていることに気が付きました。そこからビジネス展開をすることで、あらゆる事業に参入していける稀有なポジションを確立できると考えました。また、事業ドメインを限定することはチャンスロスに繋がると感じたこともあり、事業ドメインを確立させずに規制緩和・法律改正のマーケットに参加していくことを決めました。
もちろんゼロから事業を確立するにはリスクもあります。当社も、これまでもたくさんの挑戦と失敗を繰り返したからこそ今があります。失敗もありましたが、皆様のご支援のもと、非常に強い組織が構築されつつあります。これらの経験により、今後さらに事業創生ビジネスを盤石なものにしていけると強く感じています。
もちろんゼロから事業を確立するにはリスクもあります。当社も、これまでもたくさんの挑戦と失敗を繰り返したからこそ今があります。失敗もありましたが、皆様のご支援のもと、非常に強い組織が構築されつつあります。これらの経験により、今後さらに事業創生ビジネスを盤石なものにしていけると強く感じています。
2022年3月期中期決算では過去最高売上高に。3期ぶりとなる黒字化を達成 連結売上高
牽引役となったエネルギー事業。需要は高まりを見せる 新電力のシェアの推移
※ 出所:電力取引線
※ 上記「新電力」には、供給区域外の大手電力(旧一般電気事業者)を含まず、大手電力の子会社を含む。
※ シェアは販売電力量ベースで算出したもの。
低圧電力/高圧電力とは
原則として、契約電力が50kW未満を低圧電力、50kW以上の場合を高圧電力という。
原則として、契約電力が50kW未満を低圧電力、50kW以上の場合を高圧電力という。
低圧電力
一般家庭、商店など
一般家庭、商店など
高圧電力
工場、ショッピングセンターなど
工場、ショッピングセンターなど
同社の契約口数も急速に伸びている
社長の信念
これまでリミックスポイントにおいては、2019年に暗号資産不正流出問題や2020年末から2021年初頭にかけての未曽有の電力価格高騰などの問題が発生し、それぞれ約35億円、約27億円の損害が発生しました。
一般的に社長の任期が5~6年とされている中で、これまでありがたいことに20年以上経営のポジションにつかせていただきました。その経営者としての長い経験の中で、起きた事象を他人のせいにすることは簡単、でもそれは一時的な効果しかないことを学びました。
リミックスポイントにおいても、正直、不正流出が発覚した時や電力価格の異常な高騰が発生したときは驚きましたが、自ら会社のキャッシュフローを把握していたからこそ、適切に対応することができ即断できました。
有事の際にも比較的迅速な対応を心がけることが、結果として、お客様からの信頼を得ることにつながるのではないかと思っています。
時価総額1000億円企業への再挑戦
今後の展望について
短期的には、各事業を現状よりももう一段上のステージに移行させたいと考えています。
我々のメンバーは天才集団ではありませんが、淡々と真面目に取り組むという意味では非常に優秀なメンバーが揃っています。各事業部が真摯に実績を積み上げてきてくれた結果、今期(2022年3月期中間決算 連結経常利益)での黒字化を達成することができました。これからはもう一段ステージを上げて再び時価総額を意識した経営を目指します。当然のことながら時価総額1000億円を意図しますが、一度達成したものを目標にする気はありません。あくまで1000億円というのは通過点であり、さらにその上を見越して経営体制を構築しています。そのためにも期初に掲げた通期予算を達成すること、そして来期以降も達成し続けることで市場からの評価、信頼を得ていくことが重要であると考えます。
同社時価総額の変遷
具体的な事業戦略について
エネルギー事業
SDGsや脱炭素社会実現に向けた取り組みを背景に、再生可能エネルギーへの需要は引き続き高い水準を維持していくことが予想されます。電力小売市場の規模は高低圧合わせて約13兆円の市場と言われており、市場シェア1%としても1300億円の売り上げが見込めます。現状では、需要家の数はおかげさまで順調に推移しています。
これまでは規模の拡大を図り、スケールメリットを取りに行くフェーズでしたが、今後は容量拠出金の負担額低減を目的に、安定的な需要バランスを保つ必要があると考えています。
今回の容量拠出金の負担額は市場全体で約1兆5000億円と言われています。電気小売業の利益率が約5~6%とすると市場全体での収益によって負担額を賄うことは難しく、制度の継続は難しいのではないかと考えていますが、
今後は、再生可能エネルギーなど付加価値の高いサービスの提供や、需要家のバランスを保つことによる拠出金の低減を実現することで、安定した事業展開を進め、制度改正が行われた際には再びアクセルを踏めるように準備をしていきたいと考えています。
金融関連事業
金融関連事業については社会インフラとしての側面と事業としての側面の2つの可能性があると感じています。
日本におけるクリプト(※クリプトアセット=暗号資産)の価値はかなり過小評価されています。欧米では機関投資家によるクリプトの保有比率は上昇傾向にありますが、日本はそのほとんどが個人投資家によるものです。
毎年ダボス会議など海外の会議にも参加させていただいていますが、こういった場においてもクリプトに関する話題は年々増えています。また、国連開発計画では「Beyondbitcoin」と称しサステナビリティとクリプトの相関性など、社会インフラとしての可能性について本気で議論されています。
例えばマイニングにかかる電力も、国内ではマイニング時に発生する電力が環境に悪影響を及ぼすという認識もいまだ多いですが、クリプトのマイニングの電気代は、実は2円ほど。2円というのは通常の電力を活用すると実現が不可能で(通常の電力は約10~15円ほど)、太陽光発電による電力などのクリーンエネルギーを活用したマイニング技術を採用しないかぎり収益化は成り立たないというビジネス構造もあり、自然とクリーンエネルギーへの転換がされる仕組みになっています。
このように、サステナビリティの観点でも、まだまだ伸びしろがあり、今後クリプト自体の必要性はさらに高まっていくと考えています。
事業面では、不正流出問題以降、セキュリティーの改善に加えサービスのUI/UXの強化を推し進めてきました。他の取引所では一定の時価総額があるコインの取り扱いを進める傾向にありますが、我々は日本初のコインの取り扱いなどを増やし、市場の活性化に向けて攻め続けてきました。これらの取り組みを評価していただいた結果、これまで大々的なプロモーションを実施していないにも関わらず、おかげさまで新規の口座開設数やアクティブユーザーの数は順調に増えています。
今後は継続的なサービス改善に加え、プロモーションも強化することで、収益機会を拡大していきます。
2021年10月 グループ会社であるビットポイントジャパンでは、
ジャスミーやポルカドットを新規上場させ、新規暗号資産取り扱いの拡充を続けている。
※ 2021年12月13日現在
ビットコイン
BTC - Bitcoin
BTC - Bitcoin
ライトコイン
LTC - Litecoin
LTC - Litecoin
ビットコインキャッシュ
BCH - Bitcoin Cash
BCH - Bitcoin Cash
XRP(リップル)
BCH - Bitcoin Cash
BCH - Bitcoin Cash
イーサリアム
ETH - Ethereum
ETH - Ethereum
ベーシックアテンショントークン
BAT - Basic Attention Token
BAT - Basic Attention Token
トロン
TRX - Tron
TRX - Tron
エイダ
ADA - Adacoin
ADA - Adacoin
ジャスミー
JMY - Jasmy
JMY - Jasmy
ポルカドット
DOT - Polkadot
DOT - Polkadot
チェーンリンク
LNK - Chainlink
LNK - Chainlink
小田社長自身のnoteでも、
クリプトの取り扱い拡充や、暗号資産取引所としての運営方針について述べている。
詳しくは「 https://note.com/genkioda」参照
レジリエンス事業
レジリエンス事業における感染症対策関連事業発足の経緯をお伝えすると、各省庁(経済産業省、環境省、厚生労働省、国土交通省)の補助金を活用した省エネコンサルティング事業を推進する中、2019年に、「今後は国土強靱化の観点から、感染症対策も問題になってくるので、感染症対策関連商品も取り扱ってほしい」という依頼をいただいたのが契機となりました。正直、当初は感染症対策といってもあまり大きな事業展開は想定していませんでしたが、2020年の新型コロナウイルス感染症の感染拡大問題で躍進を遂げることとなりました。
レジリエンスの定義は曖昧な部分もあり、国目線では「国土の強靱化」と捉えています。
分かりやすく言うと平常時から有事にしっかりと備えることです。
近年では100年に1度と言われる規模の災害が毎年発生する状況が続き、有事への備えの大切さを痛感される方も増えてきています。レジリエンス事業では、強みである煩雑な補助金申請のサポートや省エネコンサルティングを通して、社会のレジリエンス対策強化の支援も引き続き行ってまいります。
レジリエンス事業における感染症対策関連事業発足の経緯をお伝えすると、各省庁(経済産業省、環境省、厚生労働省、国土交通省)の補助金を活用した省エネコンサルティング事業を推進する中、2019年に、「今後は国土強靱化の観点から、感染症対策も問題になってくるので、感染症対策関連商品も取り扱ってほしい」という依頼をいただいたのが契機となりました。正直、当初は感染症対策といってもあまり大きな事業展開は想定していませんでしたが、2020年の新型コロナウイルス感染症の感染拡大問題で躍進を遂げることとなりました。
レジリエンスの定義は曖昧な部分もあり、国目線では「国土の強靱化」と捉えています。
分かりやすく言うと平常時から有事にしっかりと備えることです。
近年では100年に1度と言われる規模の災害が毎年発生する状況が続き、有事への備えの大切さを痛感される方も増えてきています。レジリエンス事業では、強みである煩雑な補助金申請のサポートや省エネコンサルティングを通して、社会のレジリエンス対策強化の支援も引き続き行ってまいります。
SDGsに向けた同社の取り組みについて
今の社会においては、利益だけのためにやろうとしても上手くいかず、関わる人が皆、幸せになって初めて、会社にも利益が入ってくるという構造になりつつあります。私自身、2002年からNPOや社会起業家の支援をしてきたのですが、この考えは以前より大切にしています。
SDGsにおいて最も大事なことはサスティナブルなことです。つまり、継続性が重要です。
その意味では再エネの導入などによる急激なコスト増加は、決してサスティナブルではありません。リミックスでんきでは、Re-MIXプランといって毎年徐々に再エネ比率を上げていける電力プランも用意しています。
また、レジリエンス事業部においては災害などへの備えとして、防災・減災を目的とした蓄電池や省エネ商材の提供をしています。誤解されやすいのですが、感染症対策関連商品も実は2019年(新型コロナウイルス感染症発生以前)からこの一環として取り扱っていました。
投資家へのメッセージ
一時は時価総額が1000億円を超えて、のちに経営不振も重なり、株価も低迷しました。キャッシュフローの悪化時は、株式の希薄化もありました。そのため、まずは希薄化させてしまった割合以上に企業を成長させる、つまり時価総額1000億円はもちろんのこと希薄化前に達成した株価である1843円に戻すことがスタート地点だと考えています。
今後も、当社の現状や事業展開などを適時・適切に発信していくことで、リミックスポイントグループの企業価値を正しく認知していただき、こうした活動を通じて「あしたを、もっと、あたらしく。」していくチャレンジを続けていきたいと考えています。
インタビューを終えて
エネルギー事業や暗号資産を中心とした金融関連事業など、
新しい可能性が広がる分野への積極的な事業展開を図るリミックスポイント。
様々な社会課題の解決を目指す一方、過去の教訓を生かし、
コンプライアンス順守を優先させ、顧客と真摯に向き合うことに注力していく。
2022年3月期中期決算の黒字転換を皮切りに、
収益基盤・事業内容とともに、安定成長を図れるかどうかに今後期待したい。
株探ニュース