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【特集】アメ株と「同じ。だけどちょっと違う」で、日電産とエムスリーから1500万円
いくぜ、アメ株! 二刀流の極め技 べつおさんの場合-最終回
登場する銘柄
第1回「元証券マン、営業から勧められた米国株で失敗、そしてリベンジ」を読む
新卒入社2年目の年に、勤めていた証券会社が破綻してしまった経験を持つべつおさん(ハンドルネーム)の最終回の記事は、日本株とアメ株投資のシナジーについて見ていく。
前回紹介したように、べつおさんのアメ株デビューはほろ苦いものに終わった。付き合いのある証券営業マンの勧めに乗って購入したクラウドストライク・ホールディングス<CRWD>が買ったそばから下落、損切りを余儀なくされたのだ。
そこで反省し、自分なりの手法を構築する。それが時流の乗る銘柄をシンプルな指標を使って銘柄選び、そして売買するというものだ。
その結果、ルルレモン・アスレティカ<LULU>やテスラ<TSLA>、エヌビディア<NVDA>といった大人気銘柄や、スノーフレイク<SNOW>といった銘柄でリターンを上げ、最初の失敗を取り返した。
一方の日本株投資の成績はどうかというと、こちらも大きな利益を得ている。例えば、EV(電気自動車)関連で追い風吹く日本電産<6594>や日本最大級の医療情報サイトを運営するエムスリー<2413>、そしてソフトバンクグループ<9984>などに投資して成功してきた。
日電産、エムスリーについてはコロナショック後の2020年4月以降にトレードを行い、累計で1500万円ほどのリターンを獲得している。
べつおさんが日本株と米国株でリターンをゲットしている理由は、「同じ。だけどちょっと違う」戦略を取っているからだ。それはどのようなものかを、以下見ていこう。
日電産はテスラ同様EV関連で注目、パーフェクトオーダーの変化で売買
まず「同じ」の部分について説明する前に、べつおさんがアメ株投資で行っている4つの着眼点についておさらいしよう。それは以下の4つになる。①と③は、テクニカルの要素が強く、②と④はファンダメンタルズの要素になる。
■銘柄を選ぶ4つの着眼点
日本株とアメ株の投資で、「同じ」部分は②のトップラインの安定成長と③の短・中・長の移動平均線が上昇基調になる。実際に取引した日電産とエムスリーの例で見ていこう。
まず日電産に注目したのは、EV(電気自動車)の基幹部品となるモーターを手掛け、EV関連銘柄として注目を浴びていたからだ。また過去に勤務していた証券会社の上司が、会長の永守重信氏を高く評価していたことも頭にあった。
こうした中で、べつおさんが投資に踏み切ったのは、②のトップラインの安定成長を確認できたため。下の図のように、同社は増収基調を維持し、コロナ禍の影響が大きかった21年3月期は前の20年3月期よりも増収率を上げる状況だった。
■『株探プレミアム』で確認できる日電産の通期決算の長期成長性推移
さらに株価の動きを確認すると、20年の春先に襲ったコロナショックからいち早く立ち直りを見せており、同年6月には中国でのEV用モーター開発拠点の新設報道を受けて株価が動意づいていた。
取得に動いたのは、③の短・中・長の移動平均線が上昇基調であることを確認できた20年6月の中頃から。そして7月と8月には強い上昇トレンドにしたがって買い増しを行った。
利確に踏み切ったのは、移動平均線が3本とも上向くパーフェクトオーダーが崩れかけた11月末。大きな出来高を伴って下落を始めたことで売り目線へとギアチェンジし、12月頃には売却を完了して900万円ほどのリターンを獲得できた。
この例のように、べつおさんは保有を継続するか、手仕舞うかの判断をする際に上昇トレンドの勢いを重要視している。株価モメンタムの見極めについては、たとえば高値で大陰線を引くなど、勢いに少しでも陰りが見えたら、手仕舞いに向かって動く準備をするという。
■日本電産の日足チャート(2020年4月中旬~同12月下旬)
エムスリーは移動平均線の乖離率から過熱警戒で利確
日電産と同時期に取得したのがエムスリー<2413>だ。同社は日本最大の医療従事者専門サイト「m3.com」を運営しており、コロナ禍では医療機関へのアクセスが制限されるなかで、オンラインでの健康相談ができる「LINEヘルスケア」など遠隔医療関連として注目された経緯がある。
同社株もコロナ・ショックから早々に立ち直り、20年4月には当時の上場来高値を更新。そのまま③の短・中・長の移動平均線が上昇基調を継続するといった値動きとなっていた。同時に、②のトップラインの安定成長を確認、保有を決断した。
■『株探プレミアム』で確認できるエムスリーの通期業績の成長性の長期推移
購入に動いたのは20年4月頃。打診買いを始め、同7~8月にかけて買い増しを行った(下のチャート)。利確に動いたのは、同11月頃になる。普段から注視している「移動平均乖離率」が過熱気味になってきたためだ。
べつおさんによると、強い上昇トレンドを示すパーフェクトオーダーの状況でも、高値圏の場合には過熱感を確かめておく必要があるそうだ。過熱感がピークになる寸前に売却に動いたことが奏功し、エムスリーでは累計で600万円ほどのリターンとなった。
■エムスリーの日足チャート(20年4月~同12月)
米国で注目テーマの関連銘柄をターゲット
次に「ちょっと違う」について見ていこう。上の4つのポイントでいうと、①の王道テーマ性と④のROE(自己資本利益率)が16%以上の部分だ。
念を押すと①と④は「ちょっと違う」のであって、基本的には日本株もアメ株も、上の4つの基準で判断する。では何が「ちょっと違う」のかというと、まず①の王道テーマ性では、日本株で注目する王道テーマはアメ株発ということだ。
日電産を「EV関連」で注目したのも、アメ株でEV関連銘柄の物色が強まり、その中でテスラ<TSLA>が強く反応したことが起点になった。テスラなどのEVの販売が増えれば、モーター部品を供給する日電産が業績成長期待で注目が高まると考え、取引対象に選んだ。
おさらいすると、日本株で注目するテーマは米国市場で話題になっていることが絶対条件。逆に日本市場で大きな注目を浴びるテーマでも、米国市場で盛り上がっていない場合はスルーが原則としている。
アメ株と日本株の二刀流で攻める上で、銘柄選びや売買時期の判断は基本的に統一しながら、必要に応じたカスタマイズを施すことでシナジーを発揮させている。これがべつおさんの特徴だ。
ちなみに、べつおさんが日電産のほかにEV関連でリターンを上げたものに、リチウムイオン電池など二次電池の原材料を製造販売している田中化学研究所<4080>がある。
同社株を取得したのは21年10月頃で、取得単価950円で保有を始め、12月の初めには2000円を割り始めたことで一旦保有株を売却し累計で250万円ものリターンを獲得することができた。
足元の田中化研のROEは5%未満と、④のROEが16%以上の基準は達成していない。だが、②のトップラインの安定成長基準では、今期の売上高が過去最高を更新する計画を評価した。加えて③の短・中・長の移動平均線が上昇基調であったことが取得の決め手となった。
米国からの人気テーマが日本株に波及する動きを狙う際に、意識しているのは時価総額が小さいうちに狙うこと。日電産は時価総額が足元で8兆円と大きいが、田中化研に注目した理由は時価総額が足元で600億円台と小ぶりだったこともある。
またリチウム電池の材料を手掛ける戸田工業<4100>も時価総額が300億円未満であることから、EV関連で注目をしている。
■田中化学研究所の日足チャート(21年9月末~同年12月24日)
EV関連以外では、旧フェイスブックのメタ・プラットフォームズ<FB>の本格参入で人気化したメタバース関連に注目している。
アメ株では2021年3月に上場したオンラインゲームを手がけるロブロックス<RBLX>などが米国では動意付いたことを受け、日本株ではメタバースに関連した製品を手がけている企業に投資妙味があると考え、VR(仮想現実)ゴーグルの周辺ソフトウェアなどを手がけるエスユーエス<6554>を現在注目しているという。
■エスユーエスの日足チャート(21年7月末~同年12月24日)
米国基準のROEを日本株にも採用
「ちょっと違う」部分2つ目は、④のROE16%以上という基準となる。この基準は、参考にした書籍などからべつおさんが採用した値だ。
前回紹介したようにS&P500の構成銘柄のROEの平均値は16%となる。これを日本株でも適用しているのだが、ちょっと違うのだ。なぜか?
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登場する銘柄
取材/真弓重孝・富田祥平、編集・構成/真弓重孝(株探編集部)
べつおさん(ハンドルネーム・40代・男性・兼業投資家):
証券会社に新卒で入社後、大手自動車関係の会社へと移り、資材の調達などを経験。その後は家業を引き継ぎ3代目の社長となる。利用している証券会社の勧めもあり、米国株投資を始めたのは2021年2月頃。そのまま勧められて購入したクラウドストライク<CRWD>で損失を出したことがきっかけでリベンジを果たすべく米国株を本格的に学ぶようになる。投資スタイルは日米問わず、トップラインを伸ばしている企業を追うこと。趣味はゴルフ。
証券会社に新卒で入社後、大手自動車関係の会社へと移り、資材の調達などを経験。その後は家業を引き継ぎ3代目の社長となる。利用している証券会社の勧めもあり、米国株投資を始めたのは2021年2月頃。そのまま勧められて購入したクラウドストライク<CRWD>で損失を出したことがきっかけでリベンジを果たすべく米国株を本格的に学ぶようになる。投資スタイルは日米問わず、トップラインを伸ばしている企業を追うこと。趣味はゴルフ。
第1回「元証券マン、営業から勧められた米国株で失敗、そしてリベンジ」を読む
新卒入社2年目の年に、勤めていた証券会社が破綻してしまった経験を持つべつおさん(ハンドルネーム)の最終回の記事は、日本株とアメ株投資のシナジーについて見ていく。
前回紹介したように、べつおさんのアメ株デビューはほろ苦いものに終わった。付き合いのある証券営業マンの勧めに乗って購入したクラウドストライク・ホールディングス<CRWD>が買ったそばから下落、損切りを余儀なくされたのだ。
そこで反省し、自分なりの手法を構築する。それが時流の乗る銘柄をシンプルな指標を使って銘柄選び、そして売買するというものだ。
その結果、ルルレモン・アスレティカ<LULU>やテスラ<TSLA>、エヌビディア<NVDA>といった大人気銘柄や、スノーフレイク<SNOW>といった銘柄でリターンを上げ、最初の失敗を取り返した。
一方の日本株投資の成績はどうかというと、こちらも大きな利益を得ている。例えば、EV(電気自動車)関連で追い風吹く日本電産<6594>や日本最大級の医療情報サイトを運営するエムスリー<2413>、そしてソフトバンクグループ<9984>などに投資して成功してきた。
日電産、エムスリーについてはコロナショック後の2020年4月以降にトレードを行い、累計で1500万円ほどのリターンを獲得している。
べつおさんが日本株と米国株でリターンをゲットしている理由は、「同じ。だけどちょっと違う」戦略を取っているからだ。それはどのようなものかを、以下見ていこう。
日電産はテスラ同様EV関連で注目、パーフェクトオーダーの変化で売買
まず「同じ」の部分について説明する前に、べつおさんがアメ株投資で行っている4つの着眼点についておさらいしよう。それは以下の4つになる。①と③は、テクニカルの要素が強く、②と④はファンダメンタルズの要素になる。
■銘柄を選ぶ4つの着眼点
① 将来性がある王道の人気のテーマに属している |
② トップライン(売上高)が安定して伸びている |
③ 移動平均線が短期・中期・長期で上昇基調にある |
④ ROE(自己資本利益率)が16%以上である |
日本株とアメ株の投資で、「同じ」部分は②のトップラインの安定成長と③の短・中・長の移動平均線が上昇基調になる。実際に取引した日電産とエムスリーの例で見ていこう。
まず日電産に注目したのは、EV(電気自動車)の基幹部品となるモーターを手掛け、EV関連銘柄として注目を浴びていたからだ。また過去に勤務していた証券会社の上司が、会長の永守重信氏を高く評価していたことも頭にあった。
こうした中で、べつおさんが投資に踏み切ったのは、②のトップラインの安定成長を確認できたため。下の図のように、同社は増収基調を維持し、コロナ禍の影響が大きかった21年3月期は前の20年3月期よりも増収率を上げる状況だった。
■『株探プレミアム』で確認できる日電産の通期決算の長期成長性推移
さらに株価の動きを確認すると、20年の春先に襲ったコロナショックからいち早く立ち直りを見せており、同年6月には中国でのEV用モーター開発拠点の新設報道を受けて株価が動意づいていた。
取得に動いたのは、③の短・中・長の移動平均線が上昇基調であることを確認できた20年6月の中頃から。そして7月と8月には強い上昇トレンドにしたがって買い増しを行った。
利確に踏み切ったのは、移動平均線が3本とも上向くパーフェクトオーダーが崩れかけた11月末。大きな出来高を伴って下落を始めたことで売り目線へとギアチェンジし、12月頃には売却を完了して900万円ほどのリターンを獲得できた。
この例のように、べつおさんは保有を継続するか、手仕舞うかの判断をする際に上昇トレンドの勢いを重要視している。株価モメンタムの見極めについては、たとえば高値で大陰線を引くなど、勢いに少しでも陰りが見えたら、手仕舞いに向かって動く準備をするという。
■日本電産の日足チャート(2020年4月中旬~同12月下旬)
注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、
同値は「グレー」。以下同
エムスリーは移動平均線の乖離率から過熱警戒で利確
日電産と同時期に取得したのがエムスリー<2413>だ。同社は日本最大の医療従事者専門サイト「m3.com」を運営しており、コロナ禍では医療機関へのアクセスが制限されるなかで、オンラインでの健康相談ができる「LINEヘルスケア」など遠隔医療関連として注目された経緯がある。
同社株もコロナ・ショックから早々に立ち直り、20年4月には当時の上場来高値を更新。そのまま③の短・中・長の移動平均線が上昇基調を継続するといった値動きとなっていた。同時に、②のトップラインの安定成長を確認、保有を決断した。
■『株探プレミアム』で確認できるエムスリーの通期業績の成長性の長期推移
購入に動いたのは20年4月頃。打診買いを始め、同7~8月にかけて買い増しを行った(下のチャート)。利確に動いたのは、同11月頃になる。普段から注視している「移動平均乖離率」が過熱気味になってきたためだ。
べつおさんによると、強い上昇トレンドを示すパーフェクトオーダーの状況でも、高値圏の場合には過熱感を確かめておく必要があるそうだ。過熱感がピークになる寸前に売却に動いたことが奏功し、エムスリーでは累計で600万円ほどのリターンとなった。
■エムスリーの日足チャート(20年4月~同12月)
米国で注目テーマの関連銘柄をターゲット
次に「ちょっと違う」について見ていこう。上の4つのポイントでいうと、①の王道テーマ性と④のROE(自己資本利益率)が16%以上の部分だ。
念を押すと①と④は「ちょっと違う」のであって、基本的には日本株もアメ株も、上の4つの基準で判断する。では何が「ちょっと違う」のかというと、まず①の王道テーマ性では、日本株で注目する王道テーマはアメ株発ということだ。
日電産を「EV関連」で注目したのも、アメ株でEV関連銘柄の物色が強まり、その中でテスラ<TSLA>が強く反応したことが起点になった。テスラなどのEVの販売が増えれば、モーター部品を供給する日電産が業績成長期待で注目が高まると考え、取引対象に選んだ。
おさらいすると、日本株で注目するテーマは米国市場で話題になっていることが絶対条件。逆に日本市場で大きな注目を浴びるテーマでも、米国市場で盛り上がっていない場合はスルーが原則としている。
アメ株と日本株の二刀流で攻める上で、銘柄選びや売買時期の判断は基本的に統一しながら、必要に応じたカスタマイズを施すことでシナジーを発揮させている。これがべつおさんの特徴だ。
ちなみに、べつおさんが日電産のほかにEV関連でリターンを上げたものに、リチウムイオン電池など二次電池の原材料を製造販売している田中化学研究所<4080>がある。
同社株を取得したのは21年10月頃で、取得単価950円で保有を始め、12月の初めには2000円を割り始めたことで一旦保有株を売却し累計で250万円ものリターンを獲得することができた。
足元の田中化研のROEは5%未満と、④のROEが16%以上の基準は達成していない。だが、②のトップラインの安定成長基準では、今期の売上高が過去最高を更新する計画を評価した。加えて③の短・中・長の移動平均線が上昇基調であったことが取得の決め手となった。
米国からの人気テーマが日本株に波及する動きを狙う際に、意識しているのは時価総額が小さいうちに狙うこと。日電産は時価総額が足元で8兆円と大きいが、田中化研に注目した理由は時価総額が足元で600億円台と小ぶりだったこともある。
またリチウム電池の材料を手掛ける戸田工業<4100>も時価総額が300億円未満であることから、EV関連で注目をしている。
■田中化学研究所の日足チャート(21年9月末~同年12月24日)
EV関連以外では、旧フェイスブックのメタ・プラットフォームズ<FB>の本格参入で人気化したメタバース関連に注目している。
アメ株では2021年3月に上場したオンラインゲームを手がけるロブロックス<RBLX>などが米国では動意付いたことを受け、日本株ではメタバースに関連した製品を手がけている企業に投資妙味があると考え、VR(仮想現実)ゴーグルの周辺ソフトウェアなどを手がけるエスユーエス<6554>を現在注目しているという。
■エスユーエスの日足チャート(21年7月末~同年12月24日)
米国基準のROEを日本株にも採用
「ちょっと違う」部分2つ目は、④のROE16%以上という基準となる。この基準は、参考にした書籍などからべつおさんが採用した値だ。
前回紹介したようにS&P500の構成銘柄のROEの平均値は16%となる。これを日本株でも適用しているのだが、ちょっと違うのだ。なぜか?
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