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【特集】イラン核合意を巡り高まる緊迫感、「戻ることのない世界」とは? <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司
 主要国で新型コロナウイルスのデルタ株が引き続き猛威を振るっている。ドイツは実質的なロックダウンに入るほか、フランスやスペイン、イタリアなどでも流行が悪化している。フランスの感染悪化は特にひどく、都市封鎖が行われていた4月以来の水準まで陽性者数が拡大した。仏政府はこの状況でもロックダウンを行わないとしているものの、はたして回避可能なのだろうか。先月末から米国でもデルタ株の感染者や死者数が拡大しており、オミクロン株に怯えている場合ではない。

 北半球の冬場が本格化するなか、コロナにより需要の下振れ懸念が再び高まっているが、石油輸出国機構(OPEC)プラスは先週の閣僚会合で1月も日量40万バレルの増産を行うことで合意した。OPECプラスの内部資料では、来年1-3月期の供給過剰が悪化し、日量300~400万バレルほど供給が需要を上回るようだ。供給過剰を見通したうえで増産するのは不可解に見えるが、米国を中心とした各国が備蓄の一斉放出で合意し、主要産油国と消費国の対立が顕になっていたことからすれば、OPECプラスは相場の高値誘導を自省したことを増産で示したのではないか。

●増産継続でも価格が下振れしないのはなぜか

 ただ、需要の下振れ懸念とOPECプラスの増産継続でも、原油安は一巡している。単純に値動きだけで判断すれば、先週で目先の安値を出し切ったような印象である。供給不足から供給過剰へ向かっているとしても、すでに調整安が完了したのだろうか。ニューヨーク市場でウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)先物は10月の高値から20ドル程度下げただけである。市場参加者が新型コロナウイルスの再流行やオミクロン株に怯えているならば、もっと下げてもよさそうだが、あまり下値は広がっていない。

 一段安が回避されている背景は、イラン核合意の修復協議が破綻するリスクがあるためである。報道によると、イランは6月までにロウハニ前政権が提示した譲歩案を撤回したうえで、他国の譲歩を維持しつつ、さらなる要求を行ったという。これが確かであるならば、イランのライシ政権は米国や欧州諸国をからかっており、合意にたどり着く意思はなさそうだ。交渉に出席しているとしても、イランに誠意は感じられない。

●米国が武力行使すれば供給が吹き飛ぶ

 協議が決裂し、米国が対イラン制裁を強化することもありうるが、トランプ前政権がすでに十分な制裁を科している。対話で満足できる結果が得られないならば、核開発を加速させているイランに対して、米国は行動を迷わないだろう。週末にイラン核合意の修復協議が終了した後、米国務省の高官は「戻ることのない世界に備えている」と述べた。

 米国がイランを攻撃するリスクがどの程度あるのか判断できないが、イランの暴挙を許容しつつ対話を積極的に継続しようとする米政府関係者はおそらくいないだろう。米国はこれまでも武力行使を匂わせており、イランの核開発が進展していることからすれば、攻撃開始の口実は揃っている。

 コロナによって需要がまた蒸発するリスクはあるにしても、中東情勢次第ではいくらでも供給が吹き飛ぶ。トランプ前大統領はイランとの開戦を土壇場で回避したが、バイデン大統領はどのように立ち回るのだろうか。ウクライナ情勢も不穏である。クリスマスや年末を控えた平穏な雰囲気は今年も戻ってきそうにない。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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