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【特集】冬場に試されるOPECプラス、消費国と産油国の対立が明確に <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司
 欧州の一部で新型コロナウイルスが再流行している。ドイツやオーストリア、オランダにおける感染者数の伸びは急激で、週間ベースで過去最多を更新した。ブースター接種が行われているなかでも感染者数が増加しており、石油輸出国機構(OPEC)が懸念するように需要見通しが不透明となっている。フランスやイタリアでも感染者数が上向く兆候がある。

 英国や米国でも3回目のワクチン接種が行われているが、感染の落ち着きは見られない。来年にかけて経済活動はさらに正常化していくと期待されている一方で、不透明感は根強い。ワクチン接種率が十分に高まった後、主要国は初めて迎える冬場を何事もなく乗り越えることができるのだろうか。

 ただ、ほとんどの国民がワクチン接種を済ませたイスラエルにおける感染者数の推移が示しているように、半年程度で抗体価が下がり感染が拡大することから、流行を抑制しようとしても困難であることは明らかだ。ワクチンであれ、マスクであれ、都市封鎖(ロックダウン)であれ、感染が行き渡り免疫を獲得するまでの時間稼ぎにしかならない。目標が不明確なコロナ対策が闇雲に繰り返されていることから、景気見通しは依然として不明瞭である。

●OPECにとって試練の冬場

 新型コロナウイルスのワクチンだけでなく、OPECにとっても北半球の冬場は試練のときである。来月2日に行われるOPECプラスの閣僚会議では来年以降の増産ペースが発表される見通しであり、市場参加者の注目は非常に高い。OPECのほか、国際エネルギー機関(IEA)は今月に入ってから供給不足から供給超過へ需給バランスが転換する可能性を指摘しており、OPECプラスの舵取りはこれまでと同様ではなさそうだ。

 供給不足を背景に 原油価格が高騰し、原油高によるインフレ高進もあって、米国を中心とした消費国からサウジアラビアやロシアを中心とした主要産油国に対する不満は強い。OPECプラスが月次で日量40万バレル以上増産し、供給をさらに増やしていれば原油高が抑制されていた可能性が高く、各国がインフレ高進に右往左往することはなかったと思われる。

 西側諸国の脱炭素社会を目指した動きが石油投資を萎縮させ、原油価格の高騰を招いているとしても、批判されるのはいつもOPECである。サウジが指摘するように、先月にかけて原油価格が天然ガスほど高騰しなかったのはおそらくOPECのおかげだが、OPECは感謝される対象ではない。

●産油国と消費国の対立が明確に

 サウジやロシアに要求されているのは追加増産である。バイデン米政権は中国や日本、インドなどと連携しつつ、OPECプラスに圧力を強めている。あまり効果は期待できないが、石油備蓄の一斉放出が始まる。ただ、バルキンドOPEC事務局長は早ければ12月にも需給バランスが供給過剰に転換するとの見通しを示しており、OPECプラスはおそらく追加増産はしない。増産ペースの縮小が本線だろう。あるいは減産か。

 OPECプラスに消費国の声は届いているものの、消費国が納得するような行動は選択しないと思われる。脱炭素社会の実現に向けて舵が切られているなかで、世界経済が石油に依存する必要がなくなれば、産油国の財政は破綻する。産油国としてはそれまでに国内産業の転換を図る必要があり、それには資金が必要である。産油国の資金源は石油収入であり、OPECプラスが石油から遠ざかろうとしている消費国の言い分を受け入れることはないのではないか。産油国と消費国は対立していくだろう。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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