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【特集】金は上げ一服、ドル高やテーパリング加速の見方が圧迫要因 <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行

 の現物相場は、インフレ懸念の高まりを受けて5ヵ月ぶりの高値1876ドルをつけたのち、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の再指名をきっかけに急落し、1800ドルを割り込んだ。

 エネルギー価格の上昇などを受けて高インフレが続くとの見通しが強まったが、金市場ではドル高をきっかけに利食い売りが出て急落した。FRB議長にハト派のブレイナード理事の見方もあったが、パウエル議長の続投で金融市場の先行き不透明感が払しょくされ、ドル高に振れた。同理事は副議長に指名され、市場ではバランスが取れるとみられている。パウエル議長とブレイナード理事は高インフレが米経済に甚大な影響を及ぼしているとの見方を示し、インフレに取り組む姿勢を示している。

 一方、新型コロナウイルスの新たな変異株が南アフリカで検出され、先行き懸念からリスク回避の動きが広がり、株価が急落した。原油も急落しており、インフレ懸念の後退につながるかどうかも当面の焦点である。米医薬品大手モデルナ<MRNA>のバンセル最高経営責任者(CEO)は、ウイルスの新たな変異株について既存ワクチンの効果が弱いとの見方を示している。変異株の全容判明には数週間かかるとみられるが、景気の先行き懸念が高まれば金の下支え要因になるため感染力やワクチンの効果を確認したい。

 また、12月は14~15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で量的緩和の縮小(テーパリング)加速が議論される見通しであり、早期利上げ観測につながれば金の戻りが売られる可能性も出てくる。

●コロナ変異株のオミクロン株の影響を確認

 世界保健機関(WHO)は26日の専門家会合で変異株を「懸念される変異ウイルス」に指定し、オミクロン株と命名した。オミクロン株はデルタ株よりも感染力が強いとみられており、29日には世界的に広がる可能性が大きいとの見方を示した。米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は、オミクロン株について明確な情報を得るには約2週間かかるとの見方を示しており、当面は感染力の強さやワクチンが効くかどうかを確認したい。

 欧州では新型コロナ感染拡大を受けてオーストリアやスロベニアで全国的なロックダウン(都市封鎖)が再導入されるなど、各国で制限措置が採られている。オミクロン株も確認されており、制限措置が拡大するようなら景気の先行き懸念が強まる可能性がある。

 ただ、欧州中央銀行(ECB)の政策当局者は、ユーロ圏は新型コロナ感染への対応を学んできたとの見方を示した。バイデン米大統領は「懸念すべきものだが、パニックを起こすべきものではない」とし、ロックダウン再導入はないと述べた。制限措置が拡大されると各国中銀の金融引き締めが遅れるとみられるが、影響が限られるのであれば大きな変更はないとみられる。ただ、各国が渡航制限を発表していることから、短期的な景気の下振れリスクがある。

 CMEのフェドウォッチによると、11月30日の米金利先物市場で、来年後半にFRBが2回利上げすることが織り込まれている。フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標水準(現在0~0.25%)の確率は6月に0.25~0.50%が44.6%、12月に0.50~0.75%が29.5%となっている。1ヵ月前はテーパリング終了が来年半ばの見通しにもかかわらず6月の利上げが織り込まれ、行き過ぎとみられていたが、12月のFOMCでテーパリング加速が決定されれば、3月くらいに終了したのち、6月の利上げと時期的に整合性が取れる状況になった。

●SPDRゴールドはインフレ懸念で買われる

 世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールドの現物保有高は11月4日に975.41トンと2020年4月以来の低水準まで減少したのち、増加に転じ、30日に992.85トンとなった。インフレ懸念の高まりを受けて投資資金が戻った。急落場面で押し目買いが入り、買い意欲が強い。ただ、新型コロナウイルスの変異株の出現を受けて原油が急落しており、今後のインフレ見通しと投資資金の動向を確認したい。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは9月28日時点の16万8399枚を当面の底として拡大し、11月16日時点で25万9780枚と1月5日以来の高水準となった。11月23日時点は利食い売りが出て23万4411枚に縮小した。インフレ懸念が後退し、来年のFRBの利上げ時期に焦点が移ると、11月16日時点が当面のピークになるとみられる。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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