【市況】明日の株式相場に向けて=波乱相場で意地をみせたレーザーテック
日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
11月という月は過去9年連続で前月末比プラスを達成という鉄板の株高アノマリーがある。そうしたなか、月替わり初日早々マドを開けての急騰で今年もアノマリーは健在かと思われたが、そうは問屋が卸さず前週(11月第4週)に波乱が待っていた。降って湧いたというと語弊があるが、少なくともマーケットにとって新型コロナウイルスの新たなる変異株がこのタイミングで登場したということはサプライズであった。そして、その波乱は今週も続く気配を漂わせている。
きょうは朝方に日経平均が大きく売り込まれた後、急速に買い戻しが入り一時は前週末比プラス圏に浮上する場面もあった。しかし、後場寄りに大口の売り爆弾が炸裂、これを境に再び売り直される展開で前場の寄り付き直後につけた安値を下回り、下げ幅は一時500円を超えた。例によって日経平均の下げ幅はアジア株市場でも突出しており、先物主導の仕掛けで振り回されているというのは分かってはいても、実際問題それを逆手に取るような対応も難しい。きょうの後場の動きを見てもわかるように、足もとのリスクオフの奔流にうまく買い向かったつもりでも、目を離したらすぐ波に呑まれてしまう。
南アフリカで確認された新型コロナの変異株はオミクロン株と名付けられたが、「南アフリカではあっという間にデルタ株が押しのけられて、このオミクロン株に取って代わられたような状況となっていることから、感染力が極めて強いとの認識が広がった。併せて封じ込めには遺伝子ワクチンのメッセンジャーRNAでなければ効果は薄いとの指摘もでている」(ネット証券マーケットアナリスト)という。
そして、それに呼応するようにファイザー<PFE>はオミクロン株に従来のワクチンが効かない場合は、対応するワクチンの供給を100日以内に始める方針を表明、モデルナ<MRNA>もオミクロン株に対抗できる遺伝子ワクチンを開発することを発表し、その気になれば数カ月で量産可能という話しも伝わってきた。トントン拍子というとこれも語弊があるが、まさに光速の対応である。
世界各国の対策発表も早かったが、感染力の高さが伝えられる一方、毒性はそれほど強くないという観測もでるなか、世界株市場がここまで総崩れとなったことには驚くよりない。岸田首相も今回はリーダーシップをフルに発揮して水際対策を強化する方針を早々に表明、全世界からの新規入国を原則停止することを発表した。ところが、これがAIアルゴリズムによる先物売りの餌食となった。本来ならば、素早い政治決断が評価されてもいいところだったが、AIのご託宣はネガティブシナリオを選択、リオープン(経済再開)相場の出鼻を挫かれたとばかりに売りの洗礼を浴びせた。
そうしたなか、きょうはレーザーテック<6920>が大商いで反発に転じたことは特筆できる。朝方こそ全体相場のリスクオフモードに乗せられて安く始まったものの、その後は圧巻の切り返しで25日移動平均線を足場に1000円を超える上昇で陽線を引いた。東京エレクトロン<8035>は残念ながら大引けは安くなったが、アドバンテスト<6857>やSCREENホールディングス<7735>は小幅ながらプラス圏をキープ、また、ディスコ<6146>なども上昇した。景気敏感株とグロース株のロング・ショートで、きょうはグロース株の買い戻しの順番だったということもあるが、としても東証1部全体の9割以上の銘柄が下落する全面安商状のなかで、半導体関連の踏ん張りは今後に向けての光明となる。
あすのスケジュールでは、10月の失業率、10月の有効求人倍率、10月の鉱工業生産速報値、10月の住宅着工など。また、マザーズ市場にボードルア<4413>が新規上場する。海外では11月の中国製造業購買担当者指数(PMI)・中国非製造業PMI、11月の独失業率、11月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)、9月の米S&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数、11月の米消費者信頼感指数、パウエルFRB議長の上院での議会証言など。(銀)
出所:MINKABU PRESS