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【特集】暴落の日経平均、米中クラッシュでバブル崩壊の序曲は始まったか <株探トップ特集>

名実ともに10月相場入りとなった東京市場だが、日経平均は大きく売り叩かれ2万9000円台も一気に割り込んだ。これはバブル崩壊の序曲なのか。

―31年ぶりの超強気相場からまさかの2万8000円台直行、試練の下期相場の行方―

 名実ともに下期相場入りとなった1日の東京株式市場だが、日経平均が一時700円を超える下げに見舞われ、嵐のなかでのスタートを余儀なくされた。前日の米国株市場ではNYダウが546ドル安に売り込まれたが、週前半にもダウは570ドル弱の下げをみせており前途多難の10月相場を想起させていた。東京市場も同様に大荒れとなった。

 今週を振り返ると実質10月商いとなった9月29日に東京市場は大きくバランスを崩し、日経平均は639円安で3万円大台から転げ落ちた。そしてリバウンドに転じることもなく、きょうは下げ足を再び加速させ早くも“次の道標”である2万9000円ラインをも大きく割り込んだ。大引けは前日比681円安の2万8771円で着地。9月14日に3万670円と31年ぶりの高値をつけたばかりだが、そこから2週間余りで2000円近くも水準を切り下げる羽目となった。

 自民党総裁選を経て岸田新総裁が誕生し、本来であれば月初で下期相場初日である10月1日は、コロナ禍を吹き飛ばす「チーム岸田」による新たな政策期待が株式市場に陽光をもたらすはずであった。米国株の大乱調は、その期待すら押し流すリスクオフの大波となって東京市場を呑み込もうとしている。

●眼前の敵は新型コロナからインフレに変わる

 米国では新型コロナウイルス感染拡大による経済活動への影響を警戒するステージから、今はインフレ襲来を警戒するステージへと既に舞台は大きく回っている。FRBを筆頭に世界の中央銀行による超緩和的政策によって生み出された過剰流動性、そして世界中が挙(こぞ)って脱炭素化への取り組みを加速させたこと、この2つが資源価格の押し上げ要因となりコストプッシュインフレをもたらした。更にサプライチェーンの混乱という供給する側の都合で商品の品薄感が価格に転嫁される事態に陥った。一方、コロナ禍で雇用については回復がままならない状況下にある。これが需要なき価格上昇、いわゆるスタグフレーションに対する恐怖と化して米国株市場に覆いかぶさっている。

 カギを握るのはFRBの動きだ。パウエルFRB議長は今年11月のFOMCでのテーパリング開始を匂わせつつ、「利上げについては当分先の話」というニュアンスを付け加えてきたが、最近になって「インフレは一過性のもの」という鉄壁ともいえる主張に揺らぎが見え始めた。直近では「インフレ率が予想以上に高まっており、数ヵ月はこの状態が続く」と修正、そして「インフレが予想よりも高いままであれば、FRBは対応する」とついに政策スタンス変更の可能性に言及している。もちろん、このコメント内容は欧州におけるECBの金融政策路線とも合致する。

 今のところFRBが行う出口戦略のロードマップは、年内に月額150億ドル規模でテーパリングを行い、2022年秋口に完了、そして同年11月もしくは12月のタイミングで利上げに移行するというのがメインシナリオとみられている。「しかし、このスケジュールは前倒しされる可能性がある。また、テーパリングは量的緩和の縮小であり、インフレの動向次第ではこの終了を待たずして利上げに踏み込むシナリオも考えられる」(中堅証券ストラテジスト)という。

●米国の債務上限問題も重い足かせに

 そしてもう一つ、米連邦債務の上限問題を巡る与野党協議の難航も株式市場にとって重い足かせとなっている。足もとでは債務上限問題についてはつなぎ予算が可決したことで、政府機関の一部閉鎖は回避される形となったが、市場関係者によると「これは全く解決を意味するものではない。議会が今月18日ごろまでに債務上限引き上げを承認しなければ、米国債デフォルト懸念が現実化する。もっともどこかで折り合いをつけるはずだが、この間に長期金利の急上昇をもたらす可能性は否定できず、一段の株価下落の余地がある」(国内証券アナリスト)と指摘する声が出ていた。

 前例としては11年のオバマケアによる財政出動で債務が膨張し、この時も上限問題が俎上に載ったが、「当時はS&P500指数が高値から18%も下落した。背景にはS&Pによる初の米国債格下げがあった。債務上限問題についてはまたかと言われがちだが、株価が目先下がると思えば、皆が売りに走ることになるから決して暢気(のんき)には構えていられない」(同)という。

●恒大が導火線となる中国バブル崩壊リスク

 そして、この米国リスク以上に投資家の不安心理を揺さぶっているのが中国リスクだ。中国不動産大手・恒大集団の債務不履行から破綻に至るとの懸念については、くすぶっているというレベルではなく発火寸前の状態にある。今週9月29日には恒大傘下の地方銀行である盛京銀行の一部株式を日本円にして約1700億円相当で売却、買い取り先は政府系国有企業で実質的な中国当局の救済にも見えるが、恒大の負債総額は33兆円あまりとされ、この保有株売却が経営危機回避につながる光明となるとはとても思えない状況だ。

 事実、欧米市場で発行した29日期限のドル建て債券利払いが見送られたことが伝わっている。「債務不履行と認定されるまでには、30日間の猶予期間がありすぐに破綻ということにはならないが、ここまでくると中国政府が普通に救済するというケースを想定するのは楽観的と言わざるを得ない」(ネット証券マーケットアナリスト)という見方だ。

 また、「中国の不動産総量規制の影響で窮地に陥っているのはエバーグランデ(恒大集団)だけではなく、現状で不動産デベロッパー2社の名前が挙がっている」(同)とし、恒大巨大債務問題は不動産業界に連鎖的な誘爆を引き起こす可能性が指摘されている。共同富裕を掲げる習近平政権は、不動産価格を抑制し購入しやすくすることで中国国民の不満を解消しようとした。しかし、これが不動産バブル崩壊の導火線に火をつけてしまうという負のスパイラルに世界は身構えざるを得なくなっている。

●中国・上海市場は国慶節で休場だが…

 こうなると、当面は中国上海株市場の動向は米国株市場と合わせて要警戒モードとなる。ただ中国ではきょうから10月7日まで国慶節による大型連休に入り、株式市場も休場となる。したがって、来週半ばまで上海株市場の動向に神経を尖らす必要がないというのは不幸中の幸いとも思える。ところが、これについても痛し痒しで、市場関係者によると「海外投資家にすれば中国上海株を動かせない(売れない)間は、日本株をヘッジ売りの対象とするのが考え得る選択肢だ。過去にもそういうケースが何度かあった」という。きょうもことのほかアジア市場で日本株の下げが厳しかった。背景に外国人投資家による現物と先物の投げ売りが観測されていたが、中国リスクの身代わり売りであった要素も否定できない状況だ。

 国内に目を向ければ岸田文雄新総裁のもとで数十兆円規模とアナウンスされた新たな経済対策への期待感が株式市場に反映されてしかるべきタイミングではあった。しかし、きょう明らかとなった党役員人事や組閣人事にマーケットでは「高市早苗政調会長などを除けば旧態依然の人事で失望感が強い」(国内生保系エコノミスト)という声が出ていた。「人の話をしっかりと聞くこと」が特技という岸田氏が、早速「論功行賞」を前面に押し出した人事でまとめたことは、日本の政治の変化を期待する海外投資家にとって“日本買い”を思いとどまらせるひとつの判断材料になった可能性はある。

 ただし、10月相場はハイボラティリティな展開が予想されるが、必ずしも下値模索が続くとは限らない。それは、現状これだけ不安材料が揃っていることで、空売りも相当レベル積み上がっているということが挙げられる。「例えば、仮に早い段階での米債務上限問題の解決や中国の恒大集団の政府による救済が行われれば、一気に歯車が逆回転する可能性がある」(前出のネット証券マーケットアナリスト)という。米中景気の減速と同時進行するインフレ懸念については一朝一夕には解消されにくく楽観こそできないものの、悲観に凝り固まることもない。先入観を捨て冷静に相場の方向性を見極めていく場面といえる。

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