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【特集】アフターコロナ睨み復活局面、「航空機関連株」が経済正常化で飛び立つ! <株探トップ特集>

先進国を中心にワクチン接種が進んでいることを背景に、ビジネス目的の国際的な往来が徐々に活発化しそうだ。航空機需要に回復の兆しが出始めており、関連銘柄に注目したい。

―米ボーイングは市場予測を引き上げ、部品関連企業の商機広がる―

 この日の東京市場で日経平均株価は、米金利上昇による米国株の波乱が影響し大幅安となった。ただ、一方で政府が前日に新型コロナウイルスの感染対策として発令中の「緊急事態宣言」と「まん延防止等重点措置」を期限の30日で全面解除することを決めたことで、市場では経済活動の正常化期待が高まりつつある。都市封鎖(ロックダウン)などの厳格な制限を解いた欧米は先行して経済の回復が進んでおり、今後は旅行やビジネス目的の国際的な往来が徐々に活発化する見込み。これに伴ってコロナ禍で低迷していた航空機 需要も持ち直すことが予想され、関連銘柄の動向が注目される。

●今後10年間の新造機需要360兆円

 米航空機大手のボーイング<BA>は14日、民間航空機及び防衛宇宙市場の需要予測を発表した。ワクチン接種が世界的に進むなか航空機需要に回復の兆しがみえることから、今後10年間の市場規模を9兆ドル(約1003兆円)と予測。2020年の予想(8兆5000億ドル)と19年の予想(8兆7000億ドル)を上回る見通しを示した。民間航空機市場では、各国で国内線需要が回復を牽引し、検疫措置や渡航制限などの緩和によって国際線も回復すれば、23~24年頃には長距離路線がコロナ以前の水準に戻るとみている。民間航空機の新造機需要は、今後10年間で1万9000機、金額ベースでは3兆2000億ドル(約357兆円)と予想。今後20年間では4万3500機以上、金額ベースで7兆2000億ドル(約803兆円)を見込んでいる。

 米商務省が27日に発表した8月の耐久財受注は前月比1.8%増と市場予想(0.6%程度の増加)を上回ったが、これは民間航空機及び同部品の受注が大きく増えたことが主な要因だ。また、日本航空機開発協会が21日に発表した8月末時点の主要民間航空機の受注状況によると、ボーイングはB737MAXを35機、B787-9を7機、欧州航空機大手のエアバスはA321neoを88機、A320neoを30機受注している。こうした動きは航空機部品を手掛ける企業に好影響を与えそうで、国内の関連銘柄に目を配っておきたい。

●航空機産業を支える実力企業

 シキボウ <3109> は祖業である繊維事業で培った技術を生かし、産業資材や機能材料の分野にも展開。複合材料事業では、電気絶縁性能や強度に優れる繊維強化プラスチック(FRP)製品を航空機用部材などに提供している。22年3月期第1四半期(4-6月)の航空機向け需要は振るわなかったが、自動車・建設関連需要が持ち直したことなどから産業材セグメント全体では増収増益を確保。不動産・サービスセグメントが堅調だったこともあって、同期間の営業利益は前年同期比55.5%増の3億500万円で着地した。足もとでは25日移動平均線と75日移動平均線とのゴールデンクロスが実現しており、上値を試す展開が見込めそうだ。

 ウルトラファブリックス・ホールディングス <4235> [JQ]は合成皮革の製造・販売を手掛け、家具・自動車・航空機向けが主軸。航空機用ではこれまでビジネスジェット(プライベートジェット)の内装を中心に展開していたが、最近では大型航空機の内装や宇宙船のプロトタイプにも採用され、着実に事業を拡大している。旅客数の減少などからビジネスジェット向けの回復は遅れているものの、民間航空機向けは既存及び新規に獲得したプログラム向けの出荷が始まるなど好調。自動車用の販売数量が増加していることもあり、21年12月期通期の連結営業利益は前期比3.0倍の12億円を見込んでいる。株価は24日に直近高値1580円をつけたあと上げ一服商状となっているが、ここは押し目買い好機と捉えたい。

 東邦チタニウム <5727> はチタン製錬大手で、航空機分野ではジェットエンジン部品(ファン、圧縮機など)や機体構造材、燃料タンク、ランディングギア、ボルト、バネなどに使用されている。22年3月期第1四半期(4-6月)は航空機用途向けを主とするスポンジチタンや半導体用途向け高純度チタンの需要が堅調に推移し、同期間の営業利益は前年同期比3.7倍の12億4700万円で着地。これを受けて第2四半期累計(4-9月)の連結営業利益予想を前年同期比67.4%増の18億円(従来予想は14億円)に上方修正したが、通期の営業利益予想は前期比27.6%増の40億円で据え置いており、会社計画は保守的といえそう。中期トレンドを示す75日移動平均線は上昇基調を維持しており、9月7日につけた年初来高値1316円奪回からの一段高が期待される。

 ナブテスコ <6268> は産業ロボット用精密減速機や自動ドアなどを手掛けているほか、航空機メーカーに機体コントロールの中核となる操縦系統システムや各種装備品を提供している。足もとの航空機器は苦戦を強いられているが、産業用ロボットの高い需要が続いていることなどから21年12月期通期の連結営業利益は前期比15.7%増の330億円となる見通し。株価は14日に4910円まで戻したあと冴えない動きとなっているが、航空機市場が回復すれば同社の業績は更に拡大する可能性があるだけに75日移動平均線を下回る水準は拾い場とみたい。

 放電精密加工研究所 <6469> [JQ]は放電加工で国内最大規模。航空宇宙分野では部品の放電加工や表面処理などを中心とした受託加工、及び航空機用エンジン部品製造を担っている。20年には航空宇宙部品製造に取り組む複数の企業と共同で、航空宇宙部品製造ネットワーク「Aerospace Parts Network」を構築し、材料から部品調達までの一貫生産・供給サービスを提供する体制を整えた。同社は10月5日に22年2月期第2四半期累計(3-8月)の連結決算を発表する予定で、株価は期待感から下値を切り上げる展開。PERは1ケタ台と割安感があり、4月7日につけた年初来高値898円クリアが当面の目標となる。

 ジャムコ <7408> は航空機用内装品の大手で、ギャレー(厨房設備)やラバトリー(化粧室)に強み。また、航空機用シートなども手掛けている。22年3月期第1四半期(4-6月)の連結営業損益は1億1300万円の赤字だったが、感染症拡大の収束を見込んだ受注が増加しつつあることから前年同期の20億9900万円の赤字からは縮小。通期の営業損益予想は39億8000万円の赤字(前期は109億200万円の赤字)としているが、来期は客室内改修需要の回復やビジネス・シートの売り上げ増などにより売上高が大きく伸びる可能性がある。株価は1000円を下回る水準で底堅さをみせており、調整一巡感が意識されるところだ。

●イーグル工、AGPなどにも注目

 このほかの関連銘柄としては、航空機の流体解析を提供する菱友システムズ <4685> [JQ]、航空機用アルミ部材加工機を扱うキクカワエンタープライズ <6346> [東証2]、プロペラ・脚・熱交換器を中心に航空機用機器を設計・製造する住友精密工業 <6355> 、カスケードをはじめ各種航空機部品を製造する日機装 <6376> 、航空機用精密機械組立部品を展開するミネベアミツミ <6479> 、ジェットエンジンに使用されるメカニカルシールを生産するイーグル工業 <6486> など。

 また、航空機用電源システムメーカーのシンフォニア テクノロジー <6507> 、航空機を中心にオペレーティング・リース事業を行っているジャパンインベストメントアドバイザー <7172> 、大型・中型機からビジネスジェットに至るまで幅広いコンポーネントを量産している新明和工業 <7224> 、大型ジェット旅客機に装着されている主脚を格納する扉の開閉に使用するアクチュエータを提供するKYB <7242> 、航空機向け照明機器を扱う小糸製作所 <7276> 、フライトコントロールシステムなどを製造する島津製作所 <7701> 、航空機への動力(電力、冷暖房気、圧搾空気)の供給を手掛けるエージーピー <9377> [JQ]もマークしておきたい。

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