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【特集】山が動く!急転直下の菅首相退陣、新総裁候補と「株高シナリオ」 <株探トップ特集>

週末3日の東京株式市場は後場に入り日経平均が急騰した。菅首相が総裁選出馬を見送る方向となり、政治に大きな変化が出ることに期待する買いが一気に流れ込む格好となった。

―怒涛のごとき買い注文流入、TOPIX30年ぶり高値が意味する新たなステージとは―

●菅首相の不出馬で兜町に衝撃走る

 きょう(3日)の東京株式市場は、まさに地殻変動を起こしたかのように大きく揺れた。朝方から買い優勢の地合いで、前引け時点で日経平均は243円高の2万8787円に買われていたが、後場は先物主導で一段高。買い注文が怒涛のごとく流入し、後場寄り早々に500円を超える上昇でフシ目の2万9000円ラインを一気に突破した。大引けは584円高の2万9128円と約2ヵ月半ぶりの高値圏に浮上して取引を終えている。なお、TOPIXは年初来高値を更新。これは、まだバブルの余韻が残る1991年4月中旬以来、実に約30年5ヵ月ぶりの高値水準となった。

 きょう午前、菅義偉首相が自民党総裁選挙への出馬を見送る意向であることが報じられ、市場関係者の間に驚きが走った。株式市場は変化を好む。新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからず国内経済が疲弊するなか、政局が大きく動くことは何はともあれ株価の刺激材料である。空売りの買い戻しを誘発するとともに、出遅れていた投資家の買い参戦を促す形で後場の急騰相場が演出された。

 次期総裁が誰になるかにマーケットの関心が高まるなか、菅首相再選の可能性はそれなりにあるとみられていた。そのなか、現職の総理大臣が不出馬という状況は想定外であったが、それだけに次のトップが誰になるかマーケットの関心が一段と増幅される形となっている。これは衆院の解散総選挙にも直接的な影響を与えることになり、また今後の株式市場を取り巻く政策面でも少なからず影響を及ぼすことになる。

●急浮上して消えた総選挙前倒しのシナリオ

 これまで、東京市場は新型コロナの感染拡大と並行して国内の政局不安が株価の上値を重くしていた。秋の総選挙で自民・公明の連立与党が大幅に議席数を減らす公算が大きいとみられたことも、「買い主体である海外投資家の日本株投資を躊躇させる背景の一つに数えられていた」(生保系アナリスト)という。そうしたなか、今週は週初から一貫して日経平均は上値指向を強めるなど、はっきりと流れが変わっていた。8月31日には日経平均が300円高で引け、実に1年ぶりに「月末安アノマリー」を覆したが、これも振り返れば暗示的で、政局の水面下の変化を予知していたかのような動きである。

 名実ともに9月相場入りとなった1日に東京市場では日経平均の上げ足が加速。今月半ばにも衆院解散・総選挙が行われるという見方がにわかに広がったことが、株価を強く刺激した。これについては菅首相自らが「(新型コロナが蔓延する)現在のような厳しい状況では解散できる局面にはない」という完全否定コメントを出していたが、本意ではなかったとされる。市場関係者の話では「“菅おろし”の動きが大きくならないうちに半ば強引に総裁選より前に解散・総選挙をやってしまおうという作戦で、事前に地ならしのつもりでメディアを使って観測気球を上げた結果、党内での反発があまりにも大きすぎた。その火消しに動かざるを得なかった」(中堅証券ストラテジスト)という。

 そうしたなか菅首相は、今度は自民党役員人事と内閣改造を行う方針を示した。既に二階幹事長が幹事長ポストを退く方向で話が決まり、それを目玉とする閣僚人事で支持率のアップを狙う作戦だったが、同時に総裁選を前にした一種の踏み絵でもあった。このように最後まで菅首相はファイティングポーズを崩さなかったわけだが、永田町事情に詳しいネット証券アナリストによると「関係者の話では、前日(2日)の二階幹事長との党本部での会談で、菅首相は(二階氏から)降りたほうが賢明だと諭されたらしい」という。そして、きょうの電撃的な総裁選不出馬の発表、事実上の辞任という形になった。

●マーケットの関心は“ポスト菅”に

 いうまでもなくマーケットの次の関心事は、自民党総裁選で勝利するのは誰かということになる。現状では、いち早く総裁選出馬を決め、自らも派閥の領袖である岸田文雄前政調会長は国会議員の票も集まりやすく優位に見える。ただ、「国民的支持は弱い。また、『令和版・所得倍増』を掲げてはいるが、実際のところ財政健全派で格差是正を主眼に置いているところがあり、株式市場的にはそれほど歓迎できる感じではない」(中堅証券ストラテジスト)という声がある。

 また、これまで態度を保留していた河野太郎規制改革相も出馬する意向を示した。今回の総裁選はフルスペックで行われる。国会議員票が383票、党員・党友票が383票の計766票を取り合う形になるのだが、河野氏は党員・党友票次第では十分に勝利できる位置にいるという見方も強い。国民からの人気という点では岸田氏を大きく上回るから“選挙の顔”としては申し分ない。ただし、「それ以前に推薦人20人を集めるのがそんなに簡単な話ではない」(ネット証券ストラテジスト)という指摘もある。

 そして、石破茂元幹事長も当然ながら出てくる可能性が高くなった。河野氏とともに国民的支持が厚い。菅首相が当初の予定通り出馬したと仮定した場合、“反菅”の票を岸田氏と二分する形となり、結果的に菅首相に有利に働くことが予想されていた。そうした面倒な思惑から解放され、ここはチャンスとみているかもしれない。ただ、やはり推薦人の確保に難儀する可能性が指摘されている。

 更に大穴的存在となるのが高市早苗前総務相。推薦人20人確保がどうなるかだが、「出てくれば台風の目となる」(中堅証券ストラテジスト)という声も聞かれる。政策的にはアベノミクスを引き継ぎ、更にパワーアップさせるようなイメージがあり、株式市場的には素直に歓迎されやすいムードがある。国民的には認知度が低く、傀儡政権的な見方もされやすいところだが、それはそれで安定感につながる部分もある。

 いずれにしても今回の総裁選でのキングメーカーは党内最大派閥の安倍晋三前首相(細田派)で、菅首相が出た際には、政権交代時の恩義から菅氏を推すことは必至とみられたが、それが流動的になったことは高市氏にもチャンスが巡る可能性がある。市場では「仮に安倍氏が後押しすれば、麻生派もそれと歩調を合わせる公算は小さくなく、“高市早苗首相”が実現する可能性はゼロではない」という声も出ている。

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