【特集】「9月IPO」始まる、中小型株復活の狼煙は上がるか <株探トップ特集>
9月のIPOがスタートする。今夏、中小型株の不振が話題となったが、IPO人気が盛り上がることは、中小型株にとってのカンフル剤となることが期待されている。
―14社が新たに登場、DX関連株など多く人気化に期待―
9月のIPOが来月2日から始まる。9月は14社の登場が予定されるなど、IPOは依然として高水準の状態が続いている。足もとでは、軟調が続いた東証マザーズ指数が底打ちから反発に転じるなど、中小型株には明るさも見え始めた。IPO人気が高まれば、中小型株復活に向けた機運が一段と高まることも期待されている。
●月間上場銘柄数は今年2番目の水準に
9月IPOの14社は昨年に比べ5社多く、年間でも6月(22社)に次ぐ2番目の上場銘柄数となる。13日に福岡証券取引所・Qボードへ上場するGeolocation Technology <4018> [福証Q]と22日に東証1部へ上場するシンプレクス・ホールディングス <4373> を除けば、全て東証マザーズへの上場となる。なお、2日に登場するメディア総研 <9242> [東証M]は東証マザーズと福証・Qボードへの上場となる。デジタルトランスフォーメーション(DX)に関わるIT関連株の上場銘柄が多いことなどが特徴だ。
●東証マザーズ指数は底打ち機運強まる
市場関係者の関心は、「東証マザーズ指数に底打ち反転期待が強まるなか、IPO銘柄への人気は高まるか」(アナリスト)に向かっている。東証マザーズ指数は18日に993まで下落し、その後は足もとで1130前後まで回復している。マザーズ市場では、海外投資家の売りが警戒されており、すでに年初から1600億円近くの売り越しとなっている。「IPO銘柄にも投資した外国人の売りが中小型株に膨らむなか、相場の地合いが悪化した」(同)との声がある。
そんななか、8月には4銘柄がIPOで登場したが、上値は重い展開となり、なかでもジェイフロンティア <2934> [東証M]の初値は公開価格を15%下回った。とはいえ、足もとでは中小型株への見直し機運が高まり、東証マザーズなどの株価は反騰基調にある。この見直し機運に9月IPOも乗ることができれば、中小型株は一段と見直されそうだ。
●メディア総研やモビルスの動向に注目
9月IPOの最初に登場するのは、2日のメディア総研とモビルス <4370> [東証M]だ。メディア総研は高等専門学校(高専)、理工系大学生向け就職活動支援事業を手掛ける。モビルスは、コンタクトセンター向けSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)ソリューションを展開する。上場に際しての資金吸収額は、それぞれ10億円、16億円程度。IT系はもちろん就職関係など人材系銘柄の人気も底堅いだけに、全体相場の地合い次第だが両銘柄ともに堅調なスタートが期待されている。
●シンプレクスとセーフィーは大型銘柄として関心
その後、13日のジオロケの登場を経て、22日から9月IPOは本格化する。なかでも大型銘柄として注目されるのは、同日に登場するシンプレクスと29日のセーフィー <4375> [東証M]だ。シンプレクスは2013年に上場廃止されて以来、約8年ぶりの再上場となる。金融システム開発に加え戦略/DXコンサルティングなどを手掛ける。堅調な業績などを評価する声があるが、公募増資はなく売り出しのみで、想定売出価格から弾いた資金吸収額は300億円強が見込まれている。このため、初値の上値は重いとみられ、セカンダリー(流通市場)での上昇が期待されている。
セーフィーは、クラウド録画サービス「Safie(セーフィー)」を手掛け、防犯・監視カメラなどでの展開が見込まれている。成長性が期待されるが、同社株の想定資金吸収額は230億円前後と大きく、その株価動向が関心を集めている。
●ロボペイやリベロ、コアコンセプト・テクノロジーなど
一方、初値が飛ぶことが期待されるのは、やはり小型銘柄だ。28日に登場するROBOT PAYMENT <4374> [東証M]は、インターネット決済代行サービスなどを手掛け、上場発表時に想定されている資金吸収額は4億円強だ。また、同じく28日に上場するリベロ <9245> [東証M]とデジタリフト <9244> [東証M]の想定資金吸収額は、それぞれ9億円程度、7億円強だ。リベロは新生活サービスプラットフォームの構築を手掛け、政府の進める「引越しワンストップサービス」などでも注目されている。デジタリフトはトレーディングデスク事業やコンサルティング事業を手掛ける。
加えて、DX関連では22日にコアコンセプト・テクノロジー <4371> [東証M]や29日にプロジェクトカンパニー <9246> [東証M]などが登場する。バイオ・医療系では24日に上場するレナサイエンス <4889> [東証M]の業績は赤字基調だが、新型コロナウイルス肺炎治療薬の開発なども進めている。
■9月IPO銘柄一覧
上場日 コード・市場 銘柄 主幹事
9月2日 9242・東マ・福Q メディア総研 東洋
2日 4370・東マ モビルス 大和
13日 4018・福Q Geolocation
Technology エイチ・エス
22日 4373・東1 シンプレクス・ホールディングス SMBC日興
22日 4372・東マ ユミルリンク 野村
22日 4371・東マ コアコンセプト・テクノロジー 大和
24日 4889・東マ レナサイエンス SMBC日興
28日 9245・東マ リベロ SMBC日興
28日 9244・東マ デジタリフト みずほ
28日 4374・東マ ROBOT PAYMENT SBI
28日 4073・東マ ジィ・シィ企画 岡三
29日 9246・東マ プロジェクトカンパニー SBI
29日 4375・東マ セーフィー SMBC日興
30日 6522・東マ アスタリスク 野村
(注)東マは東証マザーズ、福Qは福証Qボード
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