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【市況】日経平均は反落、持ち高調整してパウエル講演へ/ランチタイムコメント

日経平均 <1分足> 「株探」多機能チャートより

 日経平均は反落。90.78円安の27651.51円(出来高概算4億3000万株)で前場の取引を終えている。

 26日の米株式市場でNYダウは5日ぶりに反落し、192ドル安となった。好決算のセールスフォース・ドットコムがけん引する形で上昇する場面もあったが、複数の地区連銀総裁が年内にも金融緩和の縮小(テーパリング)を開始することを支持すると述べ、警戒感から下落に転じた。また、アフガニスタンの空港周辺で自爆テロとみられる爆発が発生し、下げ幅を拡大した。本日の日経平均もこうした流れを引き継いで161円安からスタートすると、朝方には一時27481.23円(261.06円安)まで下落。ただ、米経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」でのパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の講演を前に一段と売り込む動きは限られ、香港・上海株が底堅いスタートとなったこともあって下げ渋った。

 個別では、任天堂<7974>、ソフトバンクG<9984>、トヨタ自<7203>などがさえない。イオン<8267>は2%近く下落しているが、8月末の配当・株主優待権利落ちを前に売りが出ているようだ。7月の単体業績速報を発表した神戸物産<3038>は伸び鈍化と受け止められて3%超の下落。また、グリー<3632>やガンホー<3765>といったゲーム関連株の一角が東証1部下落率上位に顔を出している。一方、商船三井<9104>が9%近い上昇。1万円を超える強気の目標株価設定が相次ぎ、買い材料視されているようだ。郵船<9101>や川崎船<9107>といった他の海運株も大幅高となり、レーザーテック<6920>や東エレク<8035>はしっかり。また、業績上方修正のスター・マイカ・ホールディングス<2975>が急伸し、海運株などとともに東証1部上昇率上位に顔を出している。

 セクターでは、石油・石炭製品、精密機器、ゴム製品などが下落率上位で、その他も全般軟調。一方、海運業、保険業、金属製品など4業種が上昇した。東証1部の値下がり銘柄は全体の56%、対して値上がり銘柄は37%となっている。

 本日の日経平均は米国株の反落を受けて一時200円超下落したが、その後下げ渋って前場を折り返した。日足チャートを見ると、27600円台に位置する25日移動平均線を下回ってのスタートだったが、ほぼ同線水準まで値を戻した格好。業種別では海運業の上昇が突出しているが、NY原油先物相場の反落が売り材料視された石油・石炭製品を中心に全般軟調な印象だ。ここまでの東証1部売買代金は1兆円あまりで、前日と比べればやや多いが様子見ムードと言っていいだろう。

 新興市場ではマザーズ指数が-0.29%と6日ぶり反落。こちらも朝方売られた後は下げ渋り、1080pt近辺に位置する25日移動平均線を割り込むことなく推移している。前日のネット証券売買代金ランキングでは新興株が複数上位に入っており、ジャクソンホール会議を控え中小型株に幕間つなぎ的な物色が向かったことを窺わせた。ただ、さすがにジャクソンホール会議直前、かつ週末とあって手仕舞いの売りも出ているだろう。また、本日マザーズ事情に新規上場したジェイフロンティア<2934>は公開価格を15%も下回る初値となった。公募・売出し規模がやや大きかったこともあるが、個人投資家の初値買い意欲は想定以上に悪化している印象だ。初値後の株価も伸びが鈍く、資金回転は利きにくいだろう。

 さて、米カンザスシティー連銀のジョージ総裁は「遅かれ早かれテーパリングについて協議する準備ができている」、また米セントルイス連銀のブラード総裁は「現時点で資産購入は必要ない」などと発言。早期テーパリングへの警戒感にアフガニスタン情勢悪化への懸念も加わり、前日のNYダウは200ドル近く下げた。ただ、株安にもかかわらず米10年物国債利回りは小幅ながら上昇(債券価格は下落)。NYダウは今週に入ってからの急ピッチの上昇で高値圏にあったが、10年債利回りは今週初めまで比較的低位で推移していた。これらを踏まえると、金融市場全体の動向としては様々な要因が挙げられつつも、あくまでジャクソンホール会議前の持ち高調整だったのだろう。

 ジャクソンホール会議前にタカ派的な発言が目立った分、パウエル議長の講演で早期テーパリングへの警戒感が和らぐと期待する声もある。ただ、そもそも米ダラス連銀のカプラン総裁が20日、メディアへの出演でタカ派姿勢を軟化させる可能性を示唆し、緩和長期化を織り込む動きもあった。このため、金融市場はあくまで中立的な目線でパウエル議長講演を迎えることになるとみておきたい。

 カプラン総裁が示したように新型コロナウイルス・デルタ株の脅威が続く一方、緩和マネーによるインフレ加速への懸念も根強くある。世界最大級のヘッジファンドである米ブリッジウォーター・アソシエーツのグレッグ・ジェンセン共同最高投資責任者(CIO)は「インフレは当局の目標を大きく上回っている状態で、当局が行動しないならインフレは加速を続けると考えている」などと述べ、テーパリングは市場が予想する以上に速く進むとの見方を示した。やはり予断をもってパウエル議長講演に臨むべきではないだろう。

 香港・上海株の反発などはまずまず安心できる材料だが、後場の日経平均は戻りの鈍い展開になるとみておきたい。(小林大純)
《AK》

 提供:フィスコ

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