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【特集】コロナ禍で変わる成長の構図、「コールセンター派遣」に新たなる商機 <株探トップ特集>

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、問い合わせ窓口を外部に委託するケースが増えている。コールセンター市場は伸長が見込まれ、人材を供給する派遣会社の商機も拡大中だ。

―成長続く業界を支えるのは非正規雇用、人材派遣・紹介会社にも好業績銘柄続出―

 新型コロナウイルス感染症はさまざまな業界に少なからず変化をもたらしたが、 コールセンター業界もその一つだ。2020年4-5月の1回目の緊急事態宣言下では営業活動が停滞し、新規案件の受注が落ち込んだが、夏以降は巣ごもり消費を背景にeコマースを拡充させた百貨店や、宅配サービスを強化した大手外食産業などからの需要が増えたほか、テレワークの推奨でそれまでオフィスで行っていた顧客対応を外部に委託するようになったこともプラスに働いた。更に国や自治体のコロナ対策を受けて、問い合わせ窓口としてコールセンター業務が多く発注された。

 これらを受けて、大手を中心にコールセンター企業は好環境を享受するところも多いが、これに伴いコールセンターに人材を派遣する企業の商機も拡大している。これらコールセンター派遣に注目したい。

●コールセンター業界は5年間で46%増

 コールセンターの業界団体である日本コールセンター協会の調査によると、20年度に売上高を公開した加盟37社の合計売上高は1兆1531億円(前年度比3.8%増)で、コロナ禍にあっても堅調に推移した。19年度と比較可能な30社では、売り上げの合計は1兆727億円(同10.0%増)となり、市場だけではなく、個々の企業の売り上げにも力強さが感じられる。

 全体の売上高を見ると、5年前の15年度に比べて45.8%の高い伸びとなっており、同業界はいまだ高成長を続けている分野といえる。企業は業務効率化のため、コールセンター業務を外部委託する動きが強まっており、これがここ数年の急成長につながっているようだ。

●非正規多く人材派遣に活躍の場

 一方、同協会の調査で回答のあった46社の総従業員数の合計は23万5108人で、19年度(49社)に比べて3万2011人増加した。そのうち、正社員数は4万3795人(回答のあった40社)で、単純比較はできないものの、全体に占める割合は2割に満たず、残る8割は非正規社員となる。

 こうした人材を確保するためには、派遣会社や求人広告による募集に頼らざるを得ないのが現状だ。特に公共分野などの大型スポット案件ではある程度の数の人材が必要となり、これに対応できるのは派遣会社となる。コールセンター業界の成長につれ、コールセンター派遣企業も成長が期待できそうだ。

●コールセンターに強い人材派遣に注目

 成長が期待できるコールセンター派遣だが、関連銘柄の代表格は 人材派遣大手のパソナグループ <2168> とパーソルホールディングス <2181> 、更にコールセンター派遣大手であるスタッフサービスを傘下に有するリクルートホールディングス <6098> など。ただ、このほかにもコールセンターに強い人材派遣は多い。

 ウィルグループ <6089> は、販売や製造現場、介護など幅広い分野への人材派遣・紹介を行うが、コールセンター派遣でも大手の一角。第1四半期(4-6月)決算発表時に22年3月期の連結業績予想を営業利益で34億円から40億5000万円(前期比0.5%増)へ上方修正し、その理由として人材紹介の好調を挙げているが、足もとではコールセンターアウトソーシング領域や通信分野、介護・保育領域なども堅調としている。

 エスプール <2471> は、コールセンター派遣を主力とする人材アウトソーシング事業と障害者雇用支援事業が両輪。7月2日に発表した21年11月期第2四半期累計(20年12月-21年5月)決算は、営業利益が11億8400万円(前年同期比19.5%増)となり計画を上振れたが、コールセンター業務は主要顧客の売上増に加え、新規取引先の拡大も進み、堅調に推移したという。引き続きコールセンター業務の成長を予想しており、21年11月期通期では営業利益25億円(前期比12.2%増)を見込む。

 ヒューマンホールディングス <2415> [JQ]は、人材関連事業、教育関連事業、介護関連事業が3本柱。人材派遣・紹介を手掛ける傘下のヒューマンリソシアはコールセンターの派遣・紹介も多く、足もとで派遣スタッフの稼働者数が回復傾向にあることもあり、業績を牽引している。8月10日に発表した第1四半期(4-6月)連結決算は、営業利益で7億6100万円(前年同期比4.4%減)と減益を余儀なくされたが、人材関連事業は6億1700万円(同17.4%増)と好調だった。

 キャリアリンク <6070> は、コールセンター業務を中心に、事務職や官公庁業務の派遣・請負を展開している。7月9日に発表した第1四半期(3-5月)連結決算で、営業利益は7億3900万円(前年同期比40.5%増)と大幅増益となったが、コールセンター業務の新規受注が好調だったという。

 キャリア <6198> [東証M]は、高齢化社会に特化した人材サービス企業で、アクティブシニアの人材派遣・紹介・請負を行うシニアワーク事業と、介護施設に対する人材派遣・紹介を行うシニアケア事業が2本柱。21年9月期は、シニアケア事業で、大規模接種センターの落札などにより、新型コロナウイルスのワクチン接種業務の看護師派遣需要が想定以上に高まったとして、8月13日に連結業績予想を営業利益で5000万円から2億5000万円(前期100万円)へ上方修正したが、シニアワーク事業も新型コロナウイルス感染症に関連するコールセンター業務を受注するなど好調だ。

 更に、第1四半期(4-6月)連結営業利益が前年同期比70.3%増の56億9200万円と大幅増益となったトランス・コスモス <9715> や、第1四半期(3-5月)連結営業利益が同17.3%増の35億7700万円となったベルシステム24ホールディングス <6183> のコールセンター大手にも要注目だろう。

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