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【特集】潜在能力は世界有数、地熱発電関連株は規制緩和で熱気高まる <株探トップ特集>

「脱炭素」関連の一角として地熱発電への関心が高まっている。日本の潜在的な発電能力は世界3位にもかかわらず、開発は出遅れていたが、規制緩和で開発加速が期待されている。

―日本は世界3位の地熱資源国、再生エネ見直しで2030年に施設倍増へ―

 「脱炭素社会」の実現に向けた取り組みが世界的に加速するなか、太陽光発電風力発電など 再生可能エネルギーへの関心が高まっているが、その一つ「地熱発電」に拡大に向けた大きな動きが生まれつつある。

 河野太郎規制改革相は6月1日、政府の規制改革推進会議の答申とりまとめに合わせて、大臣直轄チームによる2050年カーボンニュートラルの実現に向けた、再生可能エネルギーなどに関する規制について報告した。これによると、これまで原則として認められなかった国立・国定公園など自然公園内の地熱開発に関する考え方を開発の加速化に貢献するよう転換し、地熱発電施設を30年に倍増する目標を掲げている。今後、具体的な実施計画がまとめられる方針で、関連銘柄への関心も高まりそうだ。

●潜在的な発電能力は世界3位

 日本は世界有数の火山国であり、地熱発電の潜在的な発電能力は2300万キロワット強と、米国やインドネシアに次いで世界3位の規模があるといわれている。一方、国内の地熱発電設備容量は20年時点で50万キロワット強と、大型の原発1基にも満たない水準であり、ここ10年ほどはほぼ横ばいとなっている。

 ポテンシャルが高いのにもかかわらず、日本の地熱発電開発が進まなかった背景には、油田と同じで掘ってみないと正確な資源量がわからないという、事業リスクの高さがある。また、原子力発電や火力発電に比べて小規模のため国の開発支援が消極的であったことや、電力業界の体制、適地の多くが国立・国定公園内にあり、「自然公園法」によって開発が困難であったことなども挙げられる。

 そのため、1970年代のオイルショック後に一時活発化した地熱開発は、90年代に入ると下火になり、出力1万キロワットを超える地熱発電は96年の滝上発電所(大分県九重町)から2019年の山葵沢発電所(秋田県湯沢市)まで23年間開発はゼロだった。

●3.11契機に各地で開発計画進む

 状況に変化を与えたきっかけは、東日本大震災による原子力発電所の事故だった。これを契機に「再生可能エネルギー」の一環として地熱発電も見直されるようになり、15年には国立・国定公園の一部で、域外から斜めに穴を掘って開発できるようになった。

 規制緩和に加えて、掘削技術の改良も追い風となり、各地で開発計画が進められるようになる。もともと、再生可能エネルギーのなかでも、風力や太陽光のように天候によって発電量が変動することもなく、潜在能力のある地熱発電に対する関心は高い。

 現在も出光興産 <5019> がINPEX <1605> などと組んで秋田県湯沢市小安地域で地熱発電所の建設計画を進めているほか、北海道阿女鱒岳地域や宮城県栗駒南麓地域を中心に、国内外で地熱資源の検討調査を継続。また、福島県では国内最大規模の地熱発電所を建設するプロジェクトも進行する。オリックス <8591> も北海道函館市で南茅部地熱発電所(仮称)を建設中で22年の商業運転開始を目指す。三菱マテリアル <5711> 、三菱ガス化学 <4182> 、Jパワー <9513> は共同出資で24年の運転開始を目指し岩手県八幡平市に安比地熱発電所を建設中で、レノバ <9519> なども北海道函館市や熊本県南阿蘇村で地熱発電所を開発中だ。

 地熱発電は資源量調査から稼働までに概ね10年以上かかることから、これらの稼働はまだ先になるが、前述の河野大臣直轄チームによる報告では、地熱発電のリードタイムを最短で8年に短縮することを目指すともあり、地熱発電所設置を後押ししよう。

●発電用タービンは日本勢が上位占める

 開発が遅れた日本の地熱発電だが、地熱発電技術に関しては、日本企業は早くから地熱発電機器の製造技術を確立し、世界をリードしており、特に地熱発電所の心臓部といわれる地熱発電用タービンでは東芝 <6502> 、富士電機 <6504> 、三菱重工業 <7011> の日本企業で世界シェア6割以上を占めている。

 地熱タービンには、大きく分けて蒸気と熱水が混合した地熱液体から分離した蒸気でタービンを回して発電する「フラッシュ方式」と、沸点の低い媒体を熱交換器で加熱・蒸発させ、その媒体蒸気により発電を行う「バイナリー方式」があるが、日本企業はその両方を手掛け幅広いラインアップを備えているのが特徴。今年2月には三菱重が、フィリピンの地熱発電所向けにバイナリー発電設備を受注するなど、海外向け中心に導入実績を伸ばしている。

●海外を中心に商社も積極展開

 住友商事 <8053> は今年2月、ニュージーランドのタウハラ地熱発電所の建設工事を受注したと発表したが、商社も海外を中心に地熱発電に積極的だ。豊田通商 <8015> は、ケニア・オルカリア地熱発電所1号機などを建設した実績があり、丸紅 <8002> は同発電所の6号機の建設を受注した。また、伊藤忠商事 <8001> は九州電力 <9508> と共同でインドネシア・サルーラ地区の地熱プロジェクトに参加している。これまで商社は海外での石炭火力発電をエネルギー事業の主軸に置いてきたが、脱炭素の動きを受けて再生可能エネルギー分野に力を入れており、要注目だ。

 このほか、小規模の地熱発電向けに小型バイナリー発電システムを手掛ける第一実業 <8059> や、地熱発電所向けに蒸気生産輸送設備用制御システムなどを提供する横河電機 <6841> なども注目したい。

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