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【特集】カーボンニュートラルの切り札、「燃料電池関連株」を待つ究極のステージ <株探トップ特集>

脱炭素社会を実現するキーエネルギーとされる水素を活用する燃料電池が再注目されている。同様に燃料電池車の普及期待も高まっているが、そのためには水素ステーションの整備が重要となる。

―FCVの注目度アップ、普及のカギ握る水素ステーションで商機捉える企業にも熱視線―

 2050年までに脱炭素社会を実現することを基本理念とした改正地球温暖化対策推進法が、5月26日の参議院本会議で可決、成立した。これは国や自治体、企業が取り組むべき気候変動対策を定めたもので、再生可能エネルギーの導入拡大へ事業者が行政手続きを簡素化できる仕組みなどが盛り込まれている。ただ、二酸化炭素(CO2)の排出量を実質ゼロとするカーボンニュートラルの達成は容易ではなく、究極のクリーンエネルギーとされる水素の活用が欠かせない。そこで更なる普及拡大が見込まれる「燃料電池」の関連銘柄に改めて注目してみた。

●日本は関連技術に強み

 燃料電池(FC)は、乾電池などの一次電池や充電して繰り返し使用する二次電池のように蓄えられた電気を取り出す“電池”とは異なり、水素と酸素を化学反応させて発生した電気を継続的に取り出すことができる発電装置。化学反応に伴うエネルギーを電気エネルギーに直接変換することから、発電時のエネルギー効率が高く、水素と酸素の反応により水が生成されるだけで廃棄物が排出されないことからクリーンな発電装置とされる。

 日本の強みは高度な計測解析・シミュレーション技術と、世界に先駆けて量産型の燃料電池車(FCV)を販売し、社会実装で培った技術課題を把握していること。政府はFCをモビリティ及び民生・業務部門における水素を使った脱炭素化を牽引する基幹製品と位置づけ、コスト削減や性能向上など競争力強化につながる取り組みに注力する構えをみせている。

●企業の取り組み続々

 こうしたなか、09年から家庭用燃料電池「エネファーム」を販売する東京ガス <9531> と、グループ会社が16年に燃料電池製造装置の販売を開始したSCREENホールディングス <7735> が水素社会実現に向けた取り組みを進めている。両社は5月下旬、水素製造に向けた水電解用セルスタックを共同開発すると発表。蓄電池や燃料電池に使われ発電機能を担う「セルスタック」と呼ばれる水電解装置の中核部品を低コストで量産する技術の早期確立を目指すという。

 このほか、豊田通商 <8015> は4月中旬、水素燃料電池及び水電解システムの設計・製造などを手掛けるエノア(愛知県豊田市)に出資したことを明らかにした。エノアは長年にわたって燃料電池評価設備の製造・販売の実績があり、同社は出資を機に協業を強化し、顧客ニーズにあわせた水素燃料電池システムを供給することで、これまで活用されていない分野での展開を図る考えだ。

 ノリタケカンパニーリミテド <5331> 、TOTO <5332> 、日本ガイシ <5333> 、日本特殊陶業 <5334> の4社が共同出資する森村SOFCテクノロジー(愛知県小牧市)は3月下旬、業務・産業用の固体酸化物形燃料電池(SOFC)発電システムの主要部品であるSOFCセルスタックの量産を開始したと発表。これまで課題となっていた軽量・小型化と高出力密度の両立を達成するとともに、低コスト化も実現しており、今後は家庭用を含む多様な用途で採用が進むことを見込んでいる。

●FCVに普及の波

 国土交通省の資料によれば、19年度時点の国内CO2排出量は産業部門(総排出量の約35%)に次いで運輸部門(約19%)が多く、カーボンニュートラルを実現するためには電動車の普及が重要となる。政府が昨年12月に策定した「グリーン成長戦略」で電気自動車(EV)やFCVの普及加速が掲げられるなか、トヨタ自動車 <7203> は30年時点のEVとFCVの世界販売計画を計200万台としているほか、ホンダ <7267> は40年に世界での販売すべてをEVとFCVにする意欲的な計画を示している。

 トヨタは昨年12月に新型FCV「MIRAI」を発売しており、同車には東洋紡 <3101> の燃料電池セル用シール材、東亞合成 <4045> の高機能接着剤、恵和 <4251> の高機能フィルム、住友理工 <5191> のセル用ガスケット、有沢製作所 <5208> の薄膜塗工技術、愛知製鋼 <5482> の省資源高強度高圧水素用ステンレス鋼、大豊工業 <6470> のアルミダイカスト製品、新コスモス電機 <6824> [JQ]の車載用水素ディテクタ、長野計器 <7715> の圧力センサーが採用されている。トヨタが社会全体での水素利用を広げるため、自社開発のFCシステムの外販に乗り出していることから、これら企業のビジネス機会拡大が期待できそうだ。

●水素ステーション関連にも注目

 そして、FCVの普及に必要不可欠となるのが燃料となる水素を補給するための 水素ステーションだ。20年12月時点で137ヵ所の商用水素ステーションが稼働しているが、経済産業省は25年度までに320ヵ所程度に拡大することを目標に21年度予算で「燃料電池自動車の普及促進に向けた水素ステーション整備事業費補助金」として110億円を計上。直近では「30年までに1000ヵ所を整備する」との報道もあり、関連銘柄から目が離せない。

 岩谷産業 <8088> は21年5月時点で53ヵ所を運営しているほか、エア・ウォーター <4088> やENEOSホールディングス <5020> 、出光興産 <5019> なども展開している。

 また、金属複合水素透過膜の製造技術を持つ山王 <3441> [JQ]、パッケージ型水素ステーションを展開する日本酸素ホールディングス <4091> 、耐水素脆性ばね用ステンレス鋼線を提供する日本精線 <5659> 、13年に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と水素ステーション用複合容器蓄圧器の共同研究契約を締結した中国工業 <5974> [東証2]に商機がありそう。

 スチームリフォーミング(水蒸気改質)型水素製造装置を中核に水素ステーション一式のエンジニアリングを手掛ける三菱化工機 <6331> 、燃料電池用高圧水素ガスコンプレッサーを展開する加地テック <6391> [東証2]、液体水素用バルブを提供する宮入バルブ製作所 <6495> [東証2]、ドイツ社製水素充填ノズルを扱うハマイ <6497> [JQ]、水素ステーション用ステンレス鋼を販売するUEX <9888> [JQ]もマークしておきたい。

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