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【市況】明日の株式相場に向けて=日銀不在、ハイボラ相場の予兆も

日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
 名実ともに6月相場入りとなった1日の東京株式市場は、日経平均株価が45円安の2万8814円と続落した。前日の米国株市場がメモリアルデーの祝日に伴い休場となったこともあって、きょうは手掛かり材料難が意識される相場環境だった。実際に海外投資家の動きも鈍くなり、前場段階で東証1部の売買代金は1兆円を割り込んだ。商い薄のなか先物に振り回され、日経平均は前日終値を挟んで彷徨する格好となった。

 前日の当欄で日経平均「月末安の鉄壁アノマリー」と合わせ、月初高の可能性も高いことに触れた。きょうはその高い方のアノマリーを見込んでの動きかどうか定かではないが、寄り付き早々に大口の買いが入り全体指数を押し上げた。しかし買いは続かず、すぐにマイナス圏に引きずり込まれ、日経平均は一時250円近い下げをみせる場面があった。後場後半に下値を拾う動きが顕在化したが戻し切れず、結局前日終値を45円下回って着地した。もっとも、アノマリー崩れの地合いであったともいえない。値上がり銘柄数が値下がり数を600以上も上回り実質的には強い相場だった。

 きょうの市場で話題となっていたのは、ETF購入に関して音無しの構えを続ける日銀と外資系証券経由の高水準の先物売り手口だった。日銀のETF買いは過剰流動性の相場環境が訪れる以前の2010年の年末からスタートし、どの程度の株価浮揚効果があったかは不明ながら、東京市場の下値に張られたセーフティーネットとして、少なくとも投資家のセンチメントの支えとして機能してきた。しかし、ここ最近は、日銀が浮動株を吸い上げたことで一部の値がさ株の値動きが荒くなり、全体指数を大きく揺らせる要因となっていることや、日本株の実質的な筆頭株主が国の中央銀行(日銀)となっていることに批判の声も拭い切れない状況ではあった。

 そうしたなか、従来なら日銀がETF買いを発動させる場面で見送る事例が相次ぎ、ステルステーパリングを行っているとの解釈が市場関係者の間でも広まっていた。そして、5月はついに月間の購入ゼロに。日銀は一度もETF砲を轟かせることがなかった。これは安倍政権が発足した12年12月以来のことだ。日銀は購入ルールの変更を名目にテーパリングモードへ移行し、それを市場に肌で感じさせるように仕向けているようにも見受けられる。背景には株価水準的な問題も考えられ、このまま買い続ければその過程で日銀が保有する株式の簿価が上がってしまうことも自明となる。日本国債の信頼性を失墜させないためにもそれは回避したいというのは理解できる。市場では「全体相場急落時にはレスキュー部隊として馳せ参じるということであれば、基本的にETF買い封印でもマーケットに大きな影響はないのではないか」(中堅証券ストラテジスト)という声も聞かれる。

 一方、日銀不在の5月相場をみて売り方が暗躍するという短絡的シナリオは考えにくいが、直近ではJPモルガン経由の先物手口が市場関係者の間で話題となっていた。関係者によると「TOPIX先物に差引8700枚あまりの売り注文が確認された。かなりのインパクトのある量で、この売り主体に思惑が錯綜した」(ネット証券マーケットアナリスト)という。

 これが、東京市場(もしくは米国市場)に何らかの悪材料が潜在している可能性を意味するのか、それともそれは見当違いで踏み上げ相場の肥やしになるのかは現時点でははっきりしないが、全体指数は上下いずれかにボラティリティが高まる可能性がある。4月23日以来となったきょうの低調な売買代金が嵐の前の静けさを暗示しているとすれば、今週相次ぐ米国の重要経済指標絡みとの憶測も生じるところだ。日本時間今晩に予定される米ISM製造業景況感指数に始まり、締めとなるのは4日の5月米雇用統計だ。基本的に景気指標は好調な数字が好感されやすいが、現在の相場で長期金利上昇懸念に直結するのは賃金動向。雇用統計でいえば、失業率と雇用者数がコンセンサスを上回るのはウェルカムだが、平均時給が想定以上に上がるのは波乱要素となる。

 個別ではトヨタ系で上場来高値クリアが目前のデンソー<6902>が注目される。また、今期業績急拡大が見込まれ、PBR0.4倍台の高周波熱錬<5976>。EV用電池及び急速充電器関連で、第一稀元素化学工業<4082>、新電元工業<6844>などに着目。

 あすは、メイホーホールディングス<7369>がマザーズとセントレックスに新規上場する。海外では米地区連銀経済報告(ベージュブック)などに注目が集まる。(銀)

出所:MINKABU PRESS

最終更新日:2021年06月01日 17時37分

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