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【市況】S&P500 月例レポート ― 「いずれ訪れる終わり」をもたらすもの (3) ―


●企業業績

 ○2021年第1四半期の利益予想は2021年第1四半期末から17.3%引き上げられ、1年前(2020年第1四半期末)からは9.9%の上方修正となりました。利益は第1四半期として過去最高(2021年第3四半期と第4四半期も同様にそれぞれ過去最高)を記録する見通しで、前期比では19.9%増益、2010年第1四半期以来の低水準となった2020年第1四半期からは2倍以上となる135%増益が見込まれています。営業利益率は12.81%と過去最高となっています。

 ○2021年については、4四半期とも過去最高益を更新する見通しで、2020年比で50.0%増益が見込まれており、2021年の予想PERは22.8倍となっています。

 ○2022年は2021年比でさらに12.3%増益が見込まれ、同年の予想PERは20.3倍となっています。

●個別銘柄

 ○米最高裁判所は、Javaプログラムを使用したAlphabet(GOOG / L)のGoogleはOracle(ORCL)の著作権を侵害していないと判断しました(6対2)。

  ⇒Alphabetは企業業績が予想を大幅に上回り、500億ドルの自社株買いを承認しました。

 ○コンピュータゲーム小売り企業のGameStop(GME)は350万株の普通株式を発行しました。

 ○自動車大手General Motors(GM)は、半導体チップ不足により、北米での追加生産を停止することを明らかにしました。

 ○中国の規制当局はAlibaba(BABA)に対し、2015年に市場での優位性を乱用したとして、27.5億ドルの罰金を科す決定を下しました。同社はそれを受け入れました。

 ○オンライン小売りのAmazon.com(AMZN)が保有するアラバマの施設で労働組合結成のための投票が行われ、投票者の約71%が反対票を投じた結果、否決されました(投票総数も少なかった)。

 ○iPhoneメーカーのApple(AAPL)は新型iMacと最新仕様のiPad Pro、落とし物トラッカーのAirTag(29ドル、4個セットで100ドル)をリリースしました。AirTagはロケーショントラッカーで、大事なものにこのタグを取り付けておけば、iPhoneの「Find Me」アプリを使って追跡・発見することができます(あなたの上司にAirTagを取り付ければ、上司が近づいてくるのがわかるでしょう)。

  ⇒Appleは900億ドルの自社株買いを承認しました(配当も増額しました)。これはAppleが2018年に行った1000億ドルの承認に次いで、S&P 500指数の歴史において2番目に規模が大きい自社株買いです。

  ⇒Appleはまた、他社に続いて、半導体チップの不足が生産に影響を与えることを明らかにしました。

 ○S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは、S&P中型株400指数構成銘柄で、ソフトウエアとサービスを提供するPTC Inc.(PTC)を2021年4月20日の取引開始前にS&P 500指数に移行し、Siemens Healthineers AG(SHL)に買収されるVarian Medical Systems(VAR)を同指数から除外すると発表しました。

●注目点

 ○メディアは市場での個人取引の後退(個人の取引が低調)を報じていますが、個人による年金と401k(タイプ)の再配分の可能性を指摘する向きもあり、見方は分かれています。協調的で市場に友好的なFRBや米財務省と比べれば規模ははるかに小さいものの、個人は市場を支える3番目の要因となっています。

 ○ユニークなデジタルアイテム(アートなど)を表す互換性のない非代替トークン(NFT)は、2021年第1四半期の急上昇後、新しい組合や有名人が急いで自らの「アイテム」をブロックチェーンで販売する中、引き続き勢いを失っています。

 ○銀行持株会社のJPモルガン・チェース(JPM)のジェームズ・ダイモン最高経営責任者(CEO)は株主への年次書簡の中で、米国経済は新型コロナウイルスによるパンデミックから持ち直してきており、この傾向は2023年まで続くと述べ、その要因として、貯蓄の増加と景気刺激策を挙げました。

●利回り、金利、コモディティ

 ○米国10年国債利回りは3月末の1.74%から1.62%に低下して月を終えました(2020年末は0.92%、2019年末は1.92%、2018年末は2.69%、2017年末は2.41%)。30年国債利回りは3月末の2.41%から2.29%に低下して取引を終えました(同1.65%、同2.30%、同3.02%、同3.05%)。

 ○英ポンドは3月末の1ポンド=1.3784ドルから1.3817ドルに上昇して月を終えました(同1.3673ドル、同1.3253ドル、同1.2754ドル、同1.3498ドル)。ユーロは3月末の1ユーロ=1.1727ドルから1.2020ドルに上昇して月を終えました(同1.2182ドル、同1.1172ドル、同1.1461ドル、同1.2000ドル)。円は3月末の1ドル=110.78円から109.33円に上昇し(同103.24円、同108.76円、同109.58円、同112.68円)、人民元は3月末の1ドル=6.5524元から6.4745元に上昇しました(同6.5330元、同6.9633元、同6.8785元、同6.5030元)。

 ○原油価格は3月末の1バレル=59.55ドルから63.492ドルに上昇して月を終えました(同48.42ドル、同61.21ドル、同45.81ドル、同60.09ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は、3月末の1ガロン=2.941ドルから2.962ドルに上昇して月末を迎えました(同2.330ドル、同2.658ドル、同2.358ドル、同2.589ドル)。

 ○金価格は3月末の1トロイオンス=1709.50ドルから1768.80ドルに上昇して月の取引を終えました(同1901.60ドル、同1520.00ドル、同1284.70ドル、同1305.00ドル)。

 ○VIX恐怖指数は3月末の19.40から18.61に低下して月を終えました。月中の最高は19.90、最低は15.38でした(同22.75、同13.78、同16.12、同11.05)。

  ⇒同指数の2020年の最高は85.47、最低は11.75でした。

●世界の株式市場

 ○4月の世界の株式市場は前月に続いて上昇し、先進国市場が新興国市場を引き続き上回りました。市場の拡大は続きましたが、先進国、特に米国では、新興国よりも多くの住民にワクチンを接種することが可能であり、市場もそれに反応したため、世界の株式市場が同じように上昇したわけではありません。市場は引き続き新規感染者数の急増に反応しましたが、この点でも米国内より米国外の新規感染者数の方が多い状況です。

 世界の株式市場全体では、4月は4.15%上昇(3月は2.27%上昇)、年初来では9.10%上昇となりました。4月は50市場中40市場が上昇し(先進国市場はすべてが上昇)、3月の33市場から増加しました(2月は36市場が上昇)。米国市場は5.09%の上昇、米国を除くグローバル市場は2.95%の上昇で、米国市場がグローバル市場をアウトパフォームしました。

 ○S&Pグローバル総合指数は3月に2.27%上昇した後(米国の3.41%上昇を除くと0.88%の上昇)、4月には4.15%上昇しました(米国の5.09%上昇を除くと2.95%の上昇)。2月は2.64%の上昇でした(米国の3.07%上昇を除くと2.12%の上昇)。過去3ヵ月間では、世界の株式市場は9.33%上昇しました(米国の12.01%上昇を除くと6.06%の上昇)。年初来では9.10%の上昇で、米国の11.49%上昇を除くと6.16%上昇しました。過去1年間では45.85%上昇し、米国の48.68%上昇を除くと42.35%の上昇となっています。より長期では、米国のパフォーマンスが突出していました。過去2年間では、グローバル市場は34.02%上昇しましたが、米国の44.16%上昇を除くと22.70%の上昇でした。過去3年間ではグローバル市場は36.78%上昇し、米国の59.27%上昇を除くと14.87%の上昇でした。

  ⇒2020年11月3日の大統領選挙以降では、グローバル市場は24.95%上昇しましたが、米国の26.30%上昇を除くと23.23%の上昇でした。

※「「いずれ訪れる終わり」をもたらすもの (4)」へ続く

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