【市況】【和島英樹のマーケット・フォーキャスト】 ─ 当面バリュー株が優位、2番手・3番手に裾野広がるか
株式ジャーナリスト 和島英樹
「当面バリュー株が優位、2番手・3番手に裾野広がるか」
◆上値重い日経平均、相場実態を映して堅調なTOPIX
4月の東京株式市場は、世界的な新型コロナウイルスの感染状況や米国の金利上昇など外部要因に左右される展開が想定される。一方、好調な企業業績が下支え要因になる。4月中旬までの日経平均株価の予想レンジは2万7500円~3万500円。
FRB(米連邦準備制度理事会)がFOMC(米連邦公開市場委員会)で2023年末までのゼロ金利政策維持の方針を示したが、市場では「低金利維持で景気回復が加速する」との見方から、むしろ金利が上昇傾向になる場面も出ている。PERの高い(株式益利回りが低い)ハイテク株は金利上昇に弱く、特にナスダック総合指数は調整色を拭えない。日経平均採用銘柄には値がさハイテク株が多く、日経平均の上値は重くなりがちだ。日銀が4月以降はETFの購入に際し、日経平均型を除外すると発表したことも逆風になる。
一方、東証1部の全銘柄の値動きを示すTOPIX(東証株価指数)は1991年5月以来の2000ポイント乗せとなるなど、バリュー株はおおむね堅調に推移している。テクニカル的にもTOPIXは25日移動平均線がサポートとなっているが、日経平均は25日線が上値抵抗ラインとなっている。当面は海運や鉄鋼、非鉄、資源などのバリュー株が優位になる可能性が大きい。短期的には日経平均よりもTOPIXが相場の実態を表すような相場になりそうだ。日本郵船 <9101> 、日本製鉄 <5401> 、三井金属 <5706> 、三菱商事 <8058> などの中心銘柄から2番手、3番手銘柄に裾野が広がることを想定したい。
3月29日(月)が3月決算企業の配当権利付き最終日となる。配当の権利が落ちても、実際に手にできるのは6月に入ってからとなる。機関投資家は配当を得たとみなしてその分を先物で手当てするが、市場関係者によればこの買い需要が8000億円前後とみられる。29日の大引けから、31日にかけて買いが入るもよう。実際に配当が入った際に解消されるポジションだが、短期的には下支え要因として機能する可能性がある。なお、日経平均の配当落ちは市場推定で約180円。
◆決算発表を機にグロース株への物色シフトも
4月の国内での最大の注目ポイントは、終盤から本格化する決算発表だ。日経平均の1株利益は第3四半期(20年4-12月)の発表通過で、それまでの1100円弱から1340円付近にまで上昇している。10-12月の決算が想定以上だったことが要因だ。2月16日に日経平均が3万467円という高値(終値ベース)を付けたのは、業績が株価を押し上げた面が強い。21年3月期の着地とともに、22年3月期の予想について会社側がどのような判断をするのかに関心が高い。日経平均の1株利益がどこまで上がるかで、株価の上値の程度を探ることになりそうだ。決算発表を機に、好業績が予想されるグロース銘柄への物色シフトも予想される。それは、金融相場から業績相場への移行という流れになるかもしれない。
決算発表ではソニー <6758> 、日本電産 <6594> 、トヨタ自動車 <7203> 、東京エレクトロン <8035> 、信越化学工業 <4063> などを中心に、電機、精密などのセクターの出直りを視野に入れておく必要がある。
IPOが4月中旬まで相次ぐ。現在のところ、IPOのパフォーマンスは冴えず、マザーズ指数も軟調に推移している。ゴールデンウィーク前後はIPOが休みに入るため、直近IPO銘柄が見直されやすい期間となる可能性がある。後半以降はマザーズ市場の反転も想定される。
(2021年3月26日 記/次回は4月25日配信予定)
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■和島英樹(Hideki Wajima)
株式ジャーナリスト
日本勧業角丸証券(現みずほ証券)入社。株式新聞社(現モーニングスター)記者を経て、2000年にラジオNIKKEIに入社。東証・記者クラブキャップ、解説委員などを歴任。現在、レギュラー出演している番組に、ラジオNIKKEI「マーケットプレス」、日経CNBC「デイリーフォーカス」毎週水曜日がある。日本テクニカルアナリスト協会評議委員。国際認定テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。
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