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【市況】植草一秀の「金融変動水先案内」 ―辛丑2021年の金融市場―

植草一秀(スリーネーションズリサーチ株式会社 代表取締役)

第50回 辛丑2021年の金融市場

●大統領選の決着

 みなさま明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

 大みそかに東京都のコロナ新規感染者数が1000人を突破し、年明け早々に緊急事態宣言発出と、お屠蘇気分も冷めぬ間に緊迫した情勢に包み込まれています。とはいえ、政治家のみなさんは特殊な事情があるようで、4人以下で8時までなら会食も良いことにしようと相談なさったようですが、これでは国民の間の緊迫した空気がしぼんでしまうのも避けられません。

 米国では1月5日にジョージア州の上院2議席の決選投票が行われました。大統領選の敗北を認めないトランプ大統領が応援のために現地入りしたことが影響したのでしょう。民主党が2議席を獲得して上院議席配分が50対50になりました。カマラ・ハリス次期副大統領が議長を務めるため、民主党が大統領、上院、下院の主導権を握るトリプルブルーを達成することになりました。

 1月6日が米国議会による大統領選選挙人の投票結果確定の日でしたが、トランプ大統領が集結を呼びかけた支持者が議事堂内に乱入。死者まで出る騒乱になりました。トランプ大統領のペンス副大統領に対する必死の要請もむなしく、議会はバイデン元副大統領の大統領就任を確定しました。1月20日にバイデン大統領が誕生することになります。年初からエキサイティングな展開が続いています。

●辛丑2021年の年運

 2021年は辛丑(かのとうし)。「辛」は陰陽五行の木・火・土・金・水では金性の陰になります。方角は西、宝石や貴金属、鋭い金属を象徴します。「辛」の字自体が鋭い刃物を描いた象形文字ですが、刃物で刺すと痛みを感じます。味覚における「からみ」、感情における「つらい、むごい、きびしい」の意味を持ちます。また辛は「新」に通じるとともに、字の成り立ちから、下から上に向かって「求める」、「冒す」の意味を持ちます。2020年の庚(かのえ)には「更新する」、「改まる」の意味と、「継承する」の意味があります。2020年に政権交代がありましたが、「庚」が暗示するように菅内閣は安倍内閣を継承するものでした。2021年は下からのエネルギーによって何らかの闘争が生じる暗示があるのです。

 過去の「辛」の年には、東日本大震災(2011年)、米国の9.11事件(2001年)、湾岸戦争(1991年)、ニクソンショック(1971年)などが生じています。2021年も突発的な痛みを伴う事変の発生に警戒が求められます。

 十干は植物の生育のサイクルを表すものですが、「辛」は「植物が枯れて、これから新しい世界を築き上げようとする状態」を意味します。2021年の世界の大きな変化が暗示されています。

 他方、十二支は時間的サイクルの一局面を表すもので、「丑」は芽が種子の中に生じてまだ伸びることができない状態を示すものとされています。曲がった腕を真直に伸ばすことの象形で「芽が吹く前の力、結び繋がっていくエネルギー」の意味があります。下からの突き上げによって、痛みを伴うような大きな変化が生じるけれども、力強いエネルギーによって新しい世界が芽を吹き始める端緒の年になるのかも知れません。

●ワクチン接種の始動

 日本では11月にコロナ感染の急拡大が観察されました。コロナ感染症の新規陽性者数が1660人になり、3ヵ月ぶりに過去最高を更新したのが11月12日です。11月18日には2000人を超えました。10月に東京都が GoToトラベルに組み込まれ、人の移動が急拡大したことを受けて感染拡大が生じたものと思われます。このことから、11月21日からの3連休前にGoTo停止を含む抜本的な感染抑止策が講じられる必要が指摘されましたが、菅首相はGoTo推進の旗を振り続けました。

 連休後の11月25日に「勝負の3週間」の言葉が掲げられましたが具体策はほとんどなく、感染拡大推進に向けての勝負の3週間だったように思われます。その後の順当な展開が年末から年初の感染爆発になっています。菅首相は後手後手の対応で1月7日に緊急事態宣言発出を正式決定しましたが、国民に対して飲食の自粛を呼びかけることが中心で、十分な実効性が確保されるかは極めて不透明です。国会議員の会食を禁止する考えがないことも宣言の効果を減殺するものと言えそうです。

 欧米で ワクチン接種が始まりましたが、重大な副反応の事実も伝えられています。また、南アフリカで確認された変異種にはワクチンが有効でないとの見方も浮上しています。過去のワクチンによる重大な副反応からワクチン接種を拒絶する人の比率は極めて高いと考えられます。ワクチン接種開始で楽観的観測が広がっていますが、コロナ収束には、まだ紆余曲折がありそうです。

●急騰相場の基本背景

 こうした状況にもかかわらず株式市場の基調は極めて強い状態が持続しています。最大の要因はコロナによる経済への下方圧力に比して、各国の財政金融政策による景気押し上げ効果、金融緩和効果が過大であることにあると思われます。財政危機を叫んでいた各国財政当局が法外ともいえる規模の財政支出を実行する現実は、これまでの財政危機キャンペーンが単なる捏造であったことを裏付けるものと言えます。

 日本政府は2020年度に3度の補正予算を編成しています。追加の財政支出規模は合計で73兆円に達します。単純計算で日本のGDPを16%も引き上げる超巨大規模になっています。2020年4-6月期のGDPが大幅減少しましたが、これを埋め尽くして余りある巨大な規模の財政出動になっています。

 1人10万円の給付を5回実施してなお10兆円が残る規模の補正予算なのですが、給付金は1回きり。残りのお金がすべての国民の手元に回る具体策は何も見えていません。政・官・業のトライアングルが巨大な財政資金を私物化する構図が浮かび上がっています。巨大財政支出追加を国民の命と暮らしを守るために、透明、公正に配分する施策が求められますが、現状ではまったく期待できない情勢です。

 それでも東京市場の株価が堅調であるのは、大統領選後のNY株式市場が堅調であることに加えて、日本の金融市場に重大な変化が生じていることが背景にあります。この金融要因を捕捉することが現在の急騰相場を理解するカギを握っています。そして重要なことは、その金融要因が、いつ、どのような事情で変化するのかをあらかじめ考えておくことだと思います。


(2021年1月8日記/次回は1月23日配信予定)

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