【市況】【植木靖男の相場展望】 ─ 地合いの好転こそ最大の好材料
株式評論家 植木靖男
「地合いの好転こそ最大の好材料」
●3月に日経平均3万円の見方もあるが…
日経平均株価は2020年大納会の前日、30年ぶりの高値をつけ、2万7000円大台に乗せて大陽線となった。これでほぼ1ヵ月に及ぶ高値もみ合いを上放れた格好となった。その後に大納会、大発会を含め4日間小幅下落したが、この間、市場は何をしていたのか。
よくあることだが、市場は地合い、つまり市場の空気が本当に好転したのか慎重に推し測っていたのである。
米国ではジョージア州上院選決選投票という大きな材料を抱えていた。いうまでもなく、材料の多くは好悪両面の性格を持つ。結果は民主党が2議席を獲得し「トリプルブルー」となったが、ここで市場はどう動いたか。バイデン・リフレというプラス材料、一方で増税・規制強化というマイナス材料。1つの材料が両面を持つ。どちらを市場が取るか、つまり地合い、空気が決め手となる。
結果、地合いはプラスとなった。これは、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて発出された緊急事態宣言という材料においても同じ。投資家は地合いを推し測っていたが、周知の通り、昨年来高値を更新したことで地合いの好転を確認したのである。
かくして、新年1月相場は高いと予想されることになった。さらに、いままで日経平均の足を引っ張っていた TOPIXが一足早く昨年来高値を更新したのだ。TOPIXの上昇は市場の土台を強固にする。これで、日経平均も安心して上値を追うことができるというもの。
あとは、いつまで上がり続けるのか。3月には3万円以上という見方もあるようだが、筆者の脳裏をよぎったのは、13年春の上昇相場だ。当時、アベノミクスと円安で急騰したが、この時は33日間上昇して天井を打った。今回にあてはめると、2月上旬高値となるが、どうか。古来、「節分天井、彼岸底」というが…。
では、注意すべき材料はなにか。やはり、まず地合いの変化だ。材料については米国債金利のほか、バイデン次期大統領が増税について言及する、インフレ懸念が顕在化するなどが挙げられるが、こうした懸念材料は相当程度、株価が煮詰まってからであろう。
●オールラウンド相場での物色対象は?
ところで、1月相場の物色動向はどう考えたらよいか。仮に現下の上昇相場が昨年3月安値以降のそれであり、その高値に向かっているとすれば業種が偏るとは思えない。つまり、ハイテク、景気敏感の交互物色といえば聞こえはよいが、オールラウンド相場とみてよいだろう。
こうしたときには個々の銘柄よりはるかに指数株、つまりETFが最も効率が良いのがこれまでの経験則だ。
次に、リスクという観点でみれば出遅れ株、つまりバリュー株が無難。しかし、果物でいえば熟した時が美味しいのと同じで好業績のハイテク株、それも新高値を追いかけるのはリスクは高いが当たれば利益も大きい。これは投資家それぞれの性格による。
今回はこうした違いのある銘柄群をピックアップしてみた。ハイテク株からトクヤマ <4043> 、半導体の製造工程で使われる洗浄液に注目したい。住友電気工業 <5802> 、自動車のワイヤーハーネスの需要が回復、通信量拡大で光通信関連も需要堅調だ。ルネサスエレクトロニクス <6723> 、投資家にとって安心感のある銘柄だ。情報通信からはGMOインターネット <9449> 、半年ぶりの復活で仮想通貨絡みでもあり投資妙味は大きいとみる。
2021年1月8日 記
株探ニュース