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【特集】石油需要はワクチン接種開始で期待通りに回復するのか? <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司
 石油輸出国機構(OPEC)加盟国を中心としたOPECプラスは来年1月から日量50万バレルを増産することで合意した。1月の減産目標は日量720万バレルとなる。OPECプラスはコロナショックで過去最大となる日量1000万バレル規模の減産を実施した後、減産目標を縮小し出口戦略を進めているが、1月は小幅な増産にとどまる。

 2月以降の減産目標については合意できておらず、毎月会合を行ったうえで生産枠を決定する。月次の増産幅は日量50万バレルを超えない見通し。1月のOPECプラス会合は4日開催と伝わっているものの、最終的な日程の確認は来週の共同閣僚監視委員会(JMMC)で行われる。

●意見調整の難航で相場は不安定に

 新型コロナウイルスのワクチン接種が始まるなかで需要回復期待が強まっており、増産を望む産油国が増加している。ロシア、イラク、ナイジェリア、アラブ首長国連邦(UAE)が増産に関心を示したようだ。OPECプラスにロシア代表として出席しているノバク副首相は、来年4月までに予定されていた日量200万バレルの増産規模に達する可能性が高いとの認識を示した。ロシアは2~4月も生産量を増やすことを望んでいる。

 サウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相はOPECプラスの閣僚会議の議長としての役割を継続することを受け入れた。協議が難航したなかで、同エネルギー相はJMMCの共同議長を辞めると申し出たとの報道があったが、産油国全体のまとめ役を続けるようだ。ただ、産油国は増産慎重派と積極派に分裂しており、来年以降も意見調整が難航する可能性が高い。毎月会合が行われることも考慮すると、相場が不安定になる機会は増える。

●急ごしらえのワクチンは信頼が不十分

 米ファイザーなどが開発した新型コロナウイルスのワクチン接種が始まることで、一部の産油国は増産意欲を高めている。経済活動の正常化と共に、石油需要が一段と回復するならば、増産しても市場は吸収するだろう。

 ただ、急ごしらえのワクチンを積極的に接種することを望む人々はどの程度いるのだろうか。米当局者によると来年4-6月期までに希望者全員が接種できるようだが、希望者の総数はいまのところ不明である。流行を抑制するほどの接種率に達するのか見定める必要があるものの、米国の元大統領3人がワクチン接種をテレビで公開する意向であると伝わっていることからすると、接種を敬遠する国民がかなり存在するようだ。駆り出されることになった元大統領はブッシュ氏、クリントン氏、オバマ氏である。政府や製薬会社に対する信頼感は十分ではない。

 石油市場はワクチン接種開始に伴う需要回復期待で堅調に推移しているが、一般市民の接種が拡大しない可能性を警戒しておくべきである。人々がコロナの感染を避け、急ごしらえのワクチン接種も回避しようとするならば、巣ごもり気味の生活様式が根強く残る。少なくとも子供に積極的に接種させようとする親はいないのではないか。子供をコロナ感染から守り、ワクチンも忌避するならば、従来のように自由気ままに活動する家計は限られる。救世主となりうるワクチンが開発されたとはいえ、石油需要の回復が本格化すると断定するのは早計である。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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