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【特集】原油高は本格化するのか?世界経済の救世主となり得るワクチン登場 <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司
 米ファイザーと独ビオンテックが新型コロナウイルスのワクチン候補の治験データを公表した。95%の確率で有効性が示された。このワクチンは年齢や人種を問わず有効で、これまでの治験で重大な安全性の問題は発生していない。両社は20日に米食品医薬品局(FDA)に緊急使用許可を申請した。来月10日にFDAは会合を開き、このワクチンを承認するかどうか協議するが、承認された場合には翌11日から接種が開始される見通し。感染者数が爆発的に広がっている米国にとって一足早いクリスマスプレゼントとなるか。

●受給見通しの改善が相場を押し上げる

 ワクチン開発を行っている各社に言えることであるが、治験の期間が超短期間であるため、新型肺炎のワクチンの有効期間は不明である。また、これまで重篤な副作用が出なかっただけで、今後問題が広がる可能性はある。ともあれ、米モデルナや英アストラゼネカと英オックスフォード大学が開発しているワクチンもまもなく利用可能となる見通しで、ワクチンという救世主の登場で原油市場の展望はかなり明るくなった。特にジェット燃料などの需要が回復していけば、世界的な石油の過剰在庫の取り崩しは鮮明となりそうだ。需給見通しの改善は相場を押し上げるだろう。

 石油輸出国機構(OPEC)プラスが来年1月からの増産を見送る構えであることも需給改善を手助けする。主要産油国の決定も新型肺炎のワクチン次第であるが、少なくとも3ヵ月間は増産を見送るようだ。最大6ヵ月間、増産を見送るという案もある。

 従来の合意では来年1月から日量200万バレル増産する予定だった。ただ、来週のOPECやOPECプラスの総会後に石油市場が混乱することはないと思われるが、現行の日量770万バレルの減産はOPECプラスにとって多大な負担となっていることに留意しておくべきである。

●超金融緩和策がいつまで続くか注視

 新型コロナウイルスのワクチンが本当に世界を救うならば、経済活動の正常化が視野に入る。この場合、金融市場の過剰流動性の源である中央銀行は追加緩和の打ち止めを遅かれ早かれ表明するだろう。各国中銀は前例のない規模の金融緩和を当面維持することを確約しているものの、金融市場をさらに刺激する追加緩和シナリオはしぼむ。

 ただ、経済活動が正常化するうえで超金融緩和策の金融市場に対する副作用が警戒されるとしても、世界中にワクチンが行き渡るまでどれくらいの期間が必要か不明である。2021年末、各国で例年のようなクリスマスが迎えられるのだろうか。

 来年、ワクチン供給が本格的に始まるが、中央銀行は景気浮揚に向けて経済指標に目を凝らしていく必要があり、少なくとも数年間は現状の緩和策が維持されるのではないか。新型コロナウイルスの再流行を受けて来月の欧州中央銀行(ECB)では追加緩和が合意に至る公算であり、金融相場あるいは流動性相場はまだ始まったばかりである。

 バブル後の最高値を更新している日経平均株価はどこまで上がるのか。すでに強含んでいる各国の住宅市場はさらに加熱していくのか。原油を含めたコモディティ市場にどの程度の勢いで資金が流入してくるのか。金融市場全体を見渡しつつ注視しなければならない。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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