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【特集】非鉄株の逆襲高はあるか、アフターコロナ視野に資金流入 <株探トップ特集>

新型コロナ感染拡大への警戒感が高まる一方で、銅など非鉄価格は上昇基調を強めている。非鉄高の背景には、ワクチン開発への期待や環境重視の米バイデン政権の誕生がある。

―銅価格は7年ぶり高値圏に急伸、EV普及など環境重視政策も追い風に―

 NYダウ日経平均株価が歴史的高値圏に上昇している背景には、世界的なカネ余りで投資資金が流入していることに加え、新型コロナウイルスのワクチン開発に伴う経済正常化を期待した「アフターコロナ」を見据えた動きが指摘されている。そんななか、世界の株式市場に連動する格好で非鉄など資源価格が上昇し始めた。特に、銅価格は7年ぶりの水準に上昇しており関連企業の業績は増額修正が相次ぐ。こうしたなか、非鉄関連株に見直し機運が膨らんでいる。

●銅やニッケル、アルミなど非鉄価格が上昇

 足もとで銅、ニッケル、アルミニウムといった非鉄価格が上昇基調を強めている。市場には、「歴史的な高値圏に上昇した株式市場と同様に、投資資金が非鉄市場に流入している」(アナリスト)との見方が浮上している。とりわけ、顕著な上昇を演じているのが銅価格だ。ロンドン金属取引所(LME)で銅価格は4日、1トン=7740ドル近辺に上昇し、2013年3月以来、7年9ヵ月ぶりの水準に買われた。銅は、その価格が世界景気の動向を色濃く映すことから「ドクター・コッパー」とも呼ばれる。銅価格の上昇は今後の景気回復を先取りする動きともみられている。

●中国景気、コロナワクチン、米環境政策が追い風に働く

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの芥田知至主任研究員は、足もとの銅価格高騰に関して、「やや期待先行の面もある」としながらも「まず中国の景気回復、続いて新型コロナワクチンへの期待、そして米次期大統領への就任が確実となったバイデン氏のグリーン政策への期待」と3つの要因を挙げている。

 中国は銅の最大の消費地であり、その需要は銅価格を大きく左右する。実際、中国の景気は回復基調を強めている。11月中旬に発表した10月の工業生産は7ヵ月連続で前年同月を上回った。また、財新・中国11月製造業購買担当者景気指数(PMI)は10年11月以来10年ぶりの高水準となった。この中国景気の拡大が銅需要を押し上げている。

 更に、新型コロナワクチンの開発が経済正常化に向けた期待を膨らませている。イギリスでは、米製薬大手ファイザーなどが開発した新型コロナワクチンの接種が8日から始まった。その効果などには、なお不透明感は残るものの、ワクチンの有効性が確認されれば、経済活動は一気に活性化する公算が大きい。この経済正常化への期待を銅価格は敏感に反映している。

 加えて、米国では次期大統領に民主党のバイデン氏が就任することが確実となり、環境重視のグリーン政策が打たれる見通しとなった。バイデン氏は、その公約にパリ協定への復帰とともに、電気自動車(EV)の公共充電スタンドの設置などを掲げており、EV普及に拍車がかかることは確実だ。EVは、ガソリン車に比べモーターなどに2倍の銅を使うともいわれており、バイデン政権のグリーン政策は非鉄株には追い風となるとみられている。

●コロナワクチンが有効なら非鉄価格は一段高

 今後の銅価格の先行きに関して、前出の芥田氏は「焦点は、やはり新型コロナに絡む動向であり、感染拡大の勢いが強まれば景気減速懸念が浮上し、銅など非鉄にはマイナス要因となる。その一方で、ワクチンの有効性が確認されれば銅価格は9000ドル乗せから一段の上昇も見込めるかもしれない」という。

 世界的な株高傾向が強まるなか、市場は経済正常化の期待を背景にした「アフターコロナ」を視野に価格を形成し始めた。この先、新型コロナの感染拡大が落ち着き、景気拡大基調が強まっても、超低金利政策は継続されカネ余り状態は続く見通しだ。投資先を求めるマネーは株式市場や非鉄になだれ込んでいる。このシナリオが、株価や銅価格が歴史的高値水準に押し上げていることは忘れてはならないだろう。

●非鉄各社の増額修正相次ぐ、アルミやニッケル関連なども注目

 非鉄株では、住友金属鉱山 <5713> は非鉄価格の上昇を背景に今期業績の増額修正を発表しているほか、パナソニック <6752> を通じてEV大手の米テスラに対して正極材材料を供給している。また、三井金属鉱業 <5706> や東邦亜鉛 <5707> 、日鉄鉱業 <1515> といった非鉄関連企業は銅や亜鉛など金属価格の上昇を背景に業績増額修正を発表している。EVに絡んでは、車体を軽くするためにアルミの使用が増えるとみられており、日本軽金属ホールディングス <5703> やUACJ <5741> などへの追い風が期待される。蓄電池では鉛やニッケルの需要が増加するとみられ、ニッケル関連の大平洋金属 <5541> などに見直し機運が膨らむ可能性がある。

 中国は安全保障を理由にレアアース規制を強めるとの懸念もあり、先行きアルコニックス <3036> が注目を集めることもあり得る。銅に加え鉄鋼石価格などの上昇は、伊藤忠商事 <8001> や三菱商事 <8058> 、三井物産 <8031> など商社株の見直し要因に働きそうだ。

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