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【特集】コロナ、インフルW流行懸念の冬、免疫力向上期待の食品株に再び出番 <株探トップ特集>

収束の気配が見えない新型コロナ感染拡大。今年はインフルエンザとの同時流行が不安視されており、まずは徹底した感染対策と自己の体調管理が求められる。

―感染拡大シーズン接近、ヨーグルトなど発酵食品などに熱い視線集まる―

 冬を間近に控え、新型コロナウイルスの感染再拡大に対する警戒が高まっている。欧州では再び感染者数が増加するなど、世界的にみても収束の糸口が見えない状況だ。特に、今年は季節性インフルエンザとの同時流行が懸念されており、新型コロナについてはワクチンが完成しない状況下、三密回避、手洗い徹底といった基本的な対策はもちろん、体調管理など自己防衛が求められることになる。今春には、感染症に対して免疫をサポートするといわれる発酵食品などにスポットライトが当たり、関連銘柄も人気化することになった。感染再拡大が警戒されるなか、改めて関連株の動向を追った。

●現状は「微増傾向」だが……

 22日、新型コロナ対策を助言する厚生労働省の専門家組織「アドバイザリーボード」の会合が開かれ、現状を「微増傾向」とし、感染の「増加要因」と「減少要因」が拮抗していると分析。そして、「拮抗しているバランスがいつ崩れてもおかしくない」と指摘している。今冬は感染対策が意識されているとはいえ、年末を控え飲食店での会食機会も増加するシーズンを迎えるだけに、一層の警戒が必要となる。なおかつ、体調も崩しやすい季節であり、免疫力を高めるとされる食品への関心が再び高まりそうだ。

●一に睡眠、二に発酵食品

 こうしたなか市場調査の富士経済は、「体調・免疫サポート市場の最新動向調査 2020」を発表。これによると、「2020年の市場は新型コロナ感染拡大を背景に消費者の体調管理・免疫対策への意識が高まったほか、成分や素材の免疫機能に関するメディア報道の増加を追い風に、特に基礎栄養や腸内環境、発酵食品が伸長し、19年比5.2%増の8823億円が見込まれる」と分析。なかで、発酵食品は同6.5%増の2106億円に拡大すると予測している。

 同調査では「免疫力向上に良さそうなイメージのある行動」(n=30000/複数回答)について消費者アンケートを実施しており、回答者の82.5%が「十分な睡眠」を挙げ、「発酵食品の摂取(納豆、ヨーグルトなど)」65.8%、「運動」65.4%、「野菜の摂取」58.4%と続いている。同アンケートでは、睡眠の大切さとともに、発酵食品へのニーズの高さをうかがわせるものとなった。

●ピックルス、キムチで業績好調

 発酵食品と野菜に注目が集まるなか、キムチや浅漬けなど「ご飯がススム」シリーズを手掛ける漬物大手のピックルスコーポレーション <2925> は、コロナ禍のなか乳酸菌を含む食品としてキムチの需要が増加した。会社側では「現在ではだいぶ落ち着きを見せてはいるが、その後も好調は持続している。野菜などの原料価格を含め不透明な部分はあるものの、今冬にかけてもキムチの売り上げについては堅調に推移していくとみている」と話す。コロナ禍のなかニーズを捉え業績も好調だ。9月29日に発表した21年2月期上期(3-8月)の連結決算は、売上高が前年同期比13.3%増の243億9800万円、経常利益は同25.7%増の18億5400万円と大幅な増収増益となった。内食需要や健康志向の高まり、テレビ番組でキムチが取り上げられたことなどを受け、主力のキムチ製品を中心に販売が大きく伸びた。営業利益の対通期計画進捗率は8割近くとなっており、上振れ期待もある。株価は3月13日につけた年初来安値1715円を底に反騰態勢をとり、9月末には3370円まで買われ年初来高値を更新。現在は調整局面にあり、2900円近辺で推移している。

●ヨーグルトで森永乳、明治HD、フジッコ

 発酵食品で、まっさきに連想されるのはヨーグルトといえる。そして、これらを手掛ける企業は新型コロナが経済活動に深刻な影を落とすなかにおいても、総じて業績は堅調だ。ただ、株価はここ調整している銘柄も多いだけに、感染シーズンを前に押し目買いニーズが高まる可能性もある。

 森永乳業 <2264> は、大腸まで届く「ビフィズス菌BB536」を配合したさまざまなヨーグルト製品を手掛ける。8月に発表した第1四半期の連結経常利益は前年同期比11.1%増の80億3000万円と好調。健康に関係する機能性素材や牛乳、ヨーグルト、アイスクリーム、チーズをはじめとする家庭内需要が堅調に推移したという。ここにきては、フィギュアスケートの浅田真央さんをコマーシャルに起用した「トリプルヨーグルト ドリンクタイプ」で需要の掘り起こしに余念がない。同製品は、血圧(収縮期血圧)を下げ、食後の血糖値・中性脂肪の上昇を穏やかにするという。株価は、9月29日に5750円まで買われ年初来高値を更新したものの、きょうは下降局面のなか5000円を割り込んだ。冬を前に注視は怠れない。

 最近では医薬品分野でも注目度が急上昇している明治ホールディングス <2269> だが、ヨーグルトでは「明治ブルガリアヨーグルト」「明治プロビオヨーグルトLG21」、「明治プロビオヨーグルトR-1」各ブランドで、この秋も攻勢に出ている。9月には、明治プロビオヨーグルトLG21ブランドから、「LG21ドリンクタイプ朝のすっきりCool」と「LG21朝のやさしさプレーン」を、加えてロングセラー人気チョコレート「アポロ」の味を忠実に表現した2層タイプのヨーグルト「アポロヨーグルト」を発売。10月6日には、関東・甲信越地区で先行発売した「明治プロビオヨーグルトR-1」シリーズ初のプレーンタイプを全国展開するなど、消費者ニーズを捉え勢いは止まらない。また、同社は、6月に傘下のMeiji Seika ファルマ及びKMバイオロジクスが、英アストラゼネカが日本に導入予定の新型コロナワクチンの国内安定供給に向けた協議を開始したと発表。アストラゼネカのワクチンを巡っては、安全性確認のため臨床試験を中断していたものの、ここにきて再開したと伝わっている。株価は、調整色を強めているが、新型コロナワクチンに絡むだけに目の離せない状況が続きそうだ。

 煮豆、昆布、総菜を手掛けるフジッコ <2908> もヨーグルトで存在感を見せている。「カスピ海ヨーグルト」シリーズが継続的に伸長していることに加え、今年3月に新発売した「大豆で作ったヨーグルト」も好調だ。新型コロナの感染収束が見えないなかで、中食内食需要が拡大しており、これも追い風となる。

●カゴメ、「野菜生活Soy+」が好調推移

 トマトジュースの代名詞ともいえるカゴメ <2811> は、野菜ジュースの人気も高い。野菜は腸内環境を整えることで免疫力向上を後押しすると言われており、前述した富士経済の消費者アンケートでも「野菜の摂取」が上位に挙がっている。こうしたなか、手軽に野菜が取れる野菜ジュースの存在感が増している。「野菜生活100」シリーズにおいては、野菜と果実に豆乳を加えた「野菜生活Soy+(ソイプラス)」を2月に発売し好調に推移。主力のトマトジュースも引き続き堅調だ。株価は、3月中旬の2000円割れを起点として上昇波動に乗り9月29日には3785円まで買われ年初来高値を更新。巣ごもり消費による内食回帰で、家庭向けが伸びたことを評価する買いが向かった格好だ。現在は上昇一服で3500円割れとなっている。

●キノコでホクト、雪国まいたけ

 「キノコ」も免疫力アップにつながるとのイメージが購買意欲を刺激し人気化したことで、店頭では春に一時品薄状態と伝わった。キノコ生産量でトップクラスのホクト <1379> 、9月17日に東証1部に再上場を果たした雪国まいたけ <1375> などにも目を配っておきたい。特に、気温が低下するこれからの季節は鍋物が盛んになり、キノコを口にする機会が増えるだけに一層期待がかかる。

 新型コロナに加えインフルエンザの流行が不安視される今年の冬、一層の感染対策が求められるが、前述のアンケート結果からも「よく食べて、よく寝る」ことが、まずは基本といえそうだ。感染拡大懸念の季節到来で、免疫力アップにつながる食品株に、再び熱い視線が注がれる。

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