【市況】【和島英樹のマーケット・フォーキャスト】 ─ 秋相場はスガノミクス、バブル高値肉薄の日経500など切り口多彩
株式ジャーナリスト 和島英樹
「秋相場はスガノミクス、バブル高値肉薄の日経500など切り口多彩」
◆外部環境に漂う不透明感、東京市場の上値は限定的か
10月中旬までの株式市場は外部環境をにらみつつ、上値の重い展開が予想される。日経平均株価の予想レンジは2万2500円~2万3500円。
外部環境は不透明感が漂う。米国では9月発表の小売売上高や総合購買担当者景気指数(PMI)などで鈍化傾向がみられている。また、追加経済対策が与野党の対立で決まらない状況が続く。欧州での新型コロナの感染再拡大や、大手銀行によるマネーロンダリング関与の疑いも買い手控え要因となりつつある。株式市場ではハイテク株の調整が続いている。為替のドル安・円高傾向も気掛かり。このため、上値は限定的となりそう。
一方、東京株式市場は比較的堅調に推移している。その要因は(1)いち早くコロナ禍から抜け出しつつある中国経済が回復基調にあり、“世界の景気敏感株”といわれる日本株が相対的に優位になっている。「Go Toキャンペーン」などで内需が動き出していることも追い風。(2)菅政権の誕生後に「デジタル庁構想」、地銀の再編、携帯通信料金の値下げなどが打ち出され、日本の構造改革期待が浮上している。(3)関連して企業業績の底入れ感が出つつある――などが挙げられる。テクニカル的には75日移動平均線(24日現在、2万2784円)がサポートになる。
物色面では「スガノミクス」関連への注目が継続しよう。菅首相は行政のデジタル化を推進するデジタル庁を設立する方針を打ち出している。平井卓也デジタル改革相はデジタル庁の新設を前提に、各省で足並みが揃っていないデジタル化を一元管理し、予算を総括することで各省庁のシステム統一を急ぐなどと報じられている。市場の想定よりも速いピッチでデジタル化が進む可能性がある。官公庁に強いNTTデータ <9613> 、金融機関向けシステムの野村総合研究所 <4307> のほか、NEC<6701>、富士通<6702>、伊藤忠テクノソリューションズ <4739>なども有望か。
東証マザーズ市場の値動きの堅調さも継続しよう。デジタル化関連銘柄が多く存在しているほか、内需系の銘柄が多く、外部環境の影響を受けにくい面もある。24日から年度後半のIPOが本格的に始まった。買い方の回転が効く状況が継続するかに関心が高い。需給面では大型案件である6日のキオクシアホールディングス <6600> (旧東芝メモリ)の動向が注目される。マザーズ市場での値動きの良さではITコンサルのITbookホールディングス <1447> [東証M]、オンライン学習のすららネット <3998> [東証M]、クラウド名刺管理のSansan <4443> [東証M]、デジタルサイネージのインパクトホールディングス <6067> [東証M]などに妙味か。
ところで、日経500種平均株価がバブル相場のピークだった1989年末の2406円47銭に肉薄してきている。銘柄の入れ替え基準が単純で、産業構造の変化に対応した指数である日経500の高値圏は、銘柄の選別がしっかりできれば、中長期投資で利益があげられること示している。非日経平均の500種採用ではHOYA <7741>、日本電産<6594>、シマノ<7309>、キーエンス<6861>、SMC <6273> などが長めの視点で妙味がありそうだ。
◆スケジュール面では学会シーズン、第2四半期決算などに注目
【10月中旬までの主なスケジュール】
・1日 日銀短観
・2日 米雇用統計
・5日 ノーベル賞医学生理学賞(6日物理学賞、7日化学賞、8日文学賞、9日平和賞、12日経済学賞)
・6日 キオクシアIPO
・7日 米副大統領候補のテレビ討論会
秋の学会シーズンに入ることから、医薬品関連に注目が集まりやすくなる。抗がん剤エンハーツ(DS-8201)の適応拡大に期待のある第一三共<4568>、好業績の中外製薬<4519>、主力では武田薬品工業<4502>、アステラス製薬<4503>、塩野義製薬<4507>など。JCRファーマ <4552> は注力しているハンター症候群治療酵素製剤が9月18日に希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)に指定されたと発表している。
10月下旬からは3月期決算企業の第2四半期(7-9月)決算発表を迎える。為替の動向には注意が必要だが、新型コロナの影響をこなして回復基調になるかが注目ポイントとなる。
(2020年9月25日 記/次回は11月1日配信予定)
⇒⇒ 株探プレミアムで「和島英樹の『明日の好悪材料Next』」を好評連載中!
⇒⇒ 最新の第18回コラムは「バイオの有望薬、ホームセンターの業績増額やM&Aなど話題豊富」
⇒⇒ 和島英樹の「明日の好悪材料Next」一覧はこちら
■和島英樹(Hideki Wajima)
株式ジャーナリスト
日本勧業角丸証券(現みずほ証券)入社。株式新聞社(現モーニングスター)記者を経て、2000年にラジオNIKKEIに入社。東証・記者クラブキャップ、解説委員などを歴任。現在、レギュラー出演している番組に、ラジオNIKKEI「マーケットプレス」、日経CNBC「デイリーフォーカス」毎週水曜日がある。日本テクニカルアナリスト協会評議委員。国際認定テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。
株探ニュース