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【特集】昭和鉄工 日野宏昭社長インタビュー <福証単場会銘柄に注目!>

日野宏昭氏(昭和鉄工 代表取締役社長)

―「熱」の技術を追求し、創業140周年を迎える2023年に向けた成長戦略とは―

 新型コロナウイルスの感染拡大に日本経済が揺れている。当然、九州経済も例外ではないが、そこには地元に根付き、地域経済の活性化を目指す力強い企業が多く存在している。しかし、地方証券取引所の上場銘柄は、全国的な「知名度」の低さなども加わり、投資家にとっては情報不足の感は否めない。地方には、キラリと光る多くの優良な企業が息づいている。福岡証券取引所の単独上場会社の会(通称:単場会) http://fse.irnavi.minkabu.jp/ にもそうした魅力溢れる銘柄がある。この単場会の企業トップが、自身の言葉でビジネスモデルや成長戦略、経営課題などを語ってくれた。今夏発生した九州豪雨からの復興、復旧が本格化するなか、旺盛な突破力で成長ロードを走る福証単場会の銘柄に注目したい。

●日野宏昭氏(昭和鉄工 代表取締役社長)

 熱技術をコアとして様々な技術を付加した製品・サービスを展開し、未来へと繋がる地球環境と快適な生活環境の創造に取り組んでいる昭和鉄工 (5953) [福証]。同社の日野社長に、創業140周年を迎える2023年に向けた新中期経営計画とその戦略、今後の見通しについて語っていただいた。

【1】貴社の事業の状況について伺います。
新型コロナウイルスの感染拡大により、新たな生活様式が求められるなか、貴社の事業にも様々な影響が出てきていることと思います。こうしたなか、直近の業績をどう分析し、評価されていますか? また、今後の見通しについてはどのようにお考えですか?

 当社は、建築設備向け機器やそのメンテナンス、工場向け機器・部品類、公共事業向け都市景観製品などを主に取り扱っています。新型コロナウイルス感染拡大により、顧客との仕様決定の遅れや納入現場の様々な事情による工事遅延など事業活動に影響しましたが、緊急事態宣言の解除により徐々に従前の動きに戻りつつあります。しかし、先行きに対する不安から今後の設備需要減少も懸念されますので、諸対策により収益への影響を最小限に留めるべく努めているところです。また、新たな生活様式で重要となるデジタル化については、新中期経営計画の重点課題でもあり、ハード・ソフト両面から対策を推進し、テレワークを含めた働き方改革も強化しております。事業継続を前提に、ビジネスにおける急激な変化に対応していくことが急務と考えております。

【2】貴社の事業展開についてお聞きします。
今年6月に社長に就任され、さらなる収益基盤の確立や組織体制の強化を推進していくとのことですが、貴社のビジネスの特徴やこだわり、そして新たな事業展開の可能性についてお話しください。

 当社は、3つのセグメント(機器装置・素形材加工・サービスエンジニアリング)で事業活動を行い、現在まで130年以上にわたり様々な製品・サービスを展開してまいりました。

 機器装置事業では、1913年に業務用ボイラーを製造開始して以来、熱技術をコアとして事業に取り組んできました。ボイラーは油やガスの燃焼による熱技術で瞬間的な高出力が特長です。お客様の省エネ要求から、廃熱や潜熱の回収による高効率化も追求し、排ガスの清浄度や燃焼音の低減など環境性能も更に高めております。

 近年では電気でお湯をつくる熱技術であるエコキュート も製品ラインアップに加えております。燃焼に比べて瞬発力は低いですが経済性に優れ、環境にも優しい特長があります。当社は両方の熱技術製品を設計・製造・販売しておりますので、お客様の要望や状況に合わせて、それぞれの特長を組み合わせた最適給湯システムを提案しております。

 また、エコキュートのヒートポンプ技術は空調機器へ展開し、ビル用の外気処理機にも採用しております。一般のビルでは一定量の外気を取り入れることが義務づけられているため、取り入れた外気分だけ空調された室内空気がそのまま排出されています。その排出される室内空気から温度のみならず湿度も回収することで、空調に要するエネルギーの削減が可能となります。この技術を搭載した製品が平成30年度の省エネ大賞の最高賞である経済産業大臣賞を受賞しました。

 もう一つの熱技術は電気ヒーターです。当社の電気ヒーターは、薄型で昇温速度が速く、温度の均一性に優れ、その特長を生かして液晶や半導体の製造装置、自動車の板金プレスなどの熱処理炉に採用されております。また、薄型で形状がフレキシブルなため、家電、OA機器のほか、食品加工、医療、美容、印刷用など様々なメーカーの要求仕様に応えることが可能であり、多用途の機器へ搭載されてきています。

 素形材加工事業では、ボイラーの製造で培った鋳造技術などで公共事業向け都市景観製品や機器メーカー向け鋳造品を設計・製造・販売しています。

 サービスエンジニアリング事業では、当社がこれまで展開してきた様々な製品をより良い状態でご使用いただくためのメンテナンスをはじめ、耐用年数を超えた製品については更に性能を高めた製品への更新提案を行っております。

 当社は、これからも長年にわたって取り組んできました様々な熱技術と経験を更に追求し、製品・サービスエンジニアリング技術の両面から、お客様に寄り添って課題解決のお手伝いをしてまいります。

【3】中長期における経営戦略について伺います。
新中期経営計画「全社横断の改革を実行し“140”へ向かおう!」を策定され、2022年度に連結売上高140億円、連結売上高営業利益率5%以上を目標とされていますが、達成に向けた取り組みについて、詳しくお聞かせください。

 当社グループでは、2015年6月より、中期経営計画「本業回帰で筋肉質な企業体質を実現する!」を掲げ、売上・損益構造や財務体質の改善をはじめ、事業の選択と集中、差別化新製品の開発、固定費の最小化に取り組んでまいりました。この5年間に全社的に地盤固めした結果、利益率は若干未達でしたが以前より業績のみならず社内体制もかなり改善しました。

 これを受けて、今回策定した新中期経営計画は、創業140周年を迎える2023年に向けて更なる成長戦略に向かうための最後の基盤づくりとして位置づけております。そのためには、意思決定の迅速化と部門間の連携で組織が最も生産性を発揮できる全体最適化を推進し、事業収益の拡大に邁進してまいります。具体的なミッションを3つ掲げております。

 まず一つ目は、「全体最適化と人材育成を加速させる体制づくり」です。そのために社長直轄の構造改革推進部による全社横断の適材適所・最適化の推進と意見集約のスピード化を図ります。また、企業発展には人材育成が必須です。今年度から「階層別教育システム」と「社内アカデミー」の構築を行います。階層別教育システムの対象は全社員で、カリキュラムを設定して外部教育機関の協力も仰ぎ実施します。社内アカデミーは社員が講師となり、新入社員から経営陣まで教育することで知識を共有し、社内における育成力を高めていきます。今年度はまず管理職を対象に開始しました。自社の社員でしか伝えられない当社独自の技術や知識を中心に実施します。また、「人に教えること」は学習定着率が最も高く、教える側の教育にもなります。

 二つ目のミッションは、「実践的な生産性改革の推進」です。デジタル化を推進する「デジタル推進委員会」と工場のFA化を推進する「FA(自働化)推進委員会」を4月1日から立ち上げて、強力かつスピード感を持って進めております。デジタル化については、新型コロナウイルス対策の観点からも重点施策であり、グループウエア、モバイルパソコンやRPA、ウェアラブル端末などの導入を進めています。工場設備の自働化は社内インフラの整備なども含めて、製造現場の働き方改革に加え次期中期経営計画で成長戦略を実行するためにも設備の拡充を推進しています。

 三つ目のミッションは、「全社一丸での事業収益の拡大」です。当社は、熱源機器を中心に多くのお客様に製品をご使用いただいております。当社の製品を納入し、安心してお使いいただくためにサービスを継続し、製品寿命が到達した際にはまた当社の製品を採用いただけるようにライフサイクル型事業を確立してまいりたいと考えております。近年取り組んでおりますヒートポンプ技術製品のブラッシュアップと新機種開発に注力し、電気ヒーター、都市景観製品、鋳造製品については新規市場開拓と新商品開発を推進します。
 また、次期ビジネス創出のためアフター・ニッチ市場や水・農業・防災関連ビジネス市場の研究に取り組みます。

【4】経営のリスクについてお話をお願いします。
貴社のビジネス展開におけるリスクは何でしょうか? また、想定されるリスクがどのように業績に影響するとお考えでしょうか?

 やはり新型コロナウイルスの影響が大きなリスクとなります。緊急事態宣言は解除されましたが、今後の動向によっては先行きに対する不安から設備需要減少も懸念されますので、諸対策を洗い出して対応してまいります。また、当社が設計・製造・販売しております製品やサービスは社会インフラ上、不可欠なものも多く、情報提供や商談方法のデジタル化を進めて新たな生活様式に迅速に対応することで機会損失を防ぎ、リスクを減らしてまいります。

 更に、当社のボイラーや空調機器は長年多くのお客様にご使用いただいております。そのお客様に安心してご使用いただくためにサービスエンジニアリング事業を強化し、IoT技術も加えたより良い更新提案を行っていくことでコア事業の安定化を図ってまいります。

【5】最後に、投資家に向けてお話をお願いします。
貴社では投資家に対してどのようなコミットが可能でしょうか? コーポレートガバナンスやコンプライアンス、経営理念に絡めた上でお話をいただければ幸いです。

 当社グループは、130年以上にわたり育んできた熱技術とモノづくりを生かして、様々な技術を付加した製品・サービスを展開し、未来へと繋がる地球環境と快適な生活環境の創造に取り組んでいます。当社の社是である『誠実を造り、誠実を売り、誠実をサービスする』には、「会社というものは社会の公器であらねばならない」という想いが込められており、いつの時代もお客様と社会の信頼に応え、公正で誠実な事業活動を推進し、株主価値の向上を目指すことを経営の基本方針としております。また、社是の精神を根底とした経営の目的として、4つの企業理念(社員の誇りと幸せ、顧客の満足と信頼、社会への貢献、適正利益の追求)を掲げております。これからも信頼され選択される企業となるよう全社一丸となって努める所存です。

【自社アピール】
 当社の創業は1883年(明治16年)まで遡り、今年の10月には138年目を迎えます。創業者の斎藤一は当時、九州にはまだ電気もガスも無い時代に電気工学や機械工学を学び、福岡の地に斎藤製作所を立ち上げました。まもなく九大病院の前身である県立福岡病院院長の大森博士と出会い、医療用蒸気消毒器の開発・製造を開始。これによって蒸気という熱技術を手に入れ、また、同病院の暖房器としてそれまで欧州にしかなかった 鋳物製のラジエーターを国産化したことによって、鋳物の製造技術を手に入れました。
 
 1913年、斎藤一は今でも主力事業の1つになっている国産初の鋳鉄製ボイラーの実用化に成功します。また、彼の甥である斎藤省三は東京で暖房工事・管工事を学び、現在の空気調和・衛生工学会である煖房冷蔵協会を設立しました。「業界の向上発展のため関係者が各個の利己を超え団結すべき」と考えてのことでした。2人とも当時の思いは「国の発展のため」という民間企業の価値観には収まらないものでした。
 以降も当社は「熱」と「鋳物」に関連した事業を展開し、現在でも製品や技術の原点となっています。
 
 当社の製品・サービスと顧客・取引先の信頼は、先人たちが築き上げて私達に託してくれた大きな贈り物です。私達はそれを謙虚に受け止め、現状に満足することなく、さらに大きく育てて次世代に譲り渡すのが使命だと考えます。
 
 私達の歴史は「熱」と「鋳物」へのこだわりでしたが、実際にはその都度、苦難を乗り越えるための変化も必要でした。さらなる収益基盤の確立と構造改革を強力に推し進めながら、次のステップへの成長のためには大胆な変化もいとわない覚悟です。

 これからの昭和鉄工に是非注目していただきたいと思います。

●資料請求・問い合わせ先
昭和鉄工株式会社 総務部
〒811-2101 福岡県糟屋郡宇美町宇美3351-8
TEL:092-933-6391 / FAX:092-933-6395
Email:showa@showa.co.jp
https://www.showa.co.jp/

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