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【特集】パワーアシストスーツで“3密回避” 新視点で需要拡大図る <株探トップ特集>

コロナ禍で一部業務では重労働に拍車が掛かっているという。負担軽減による需要創出が探られているのがパワーアシストスーツだ。

―コロナで拍車の重労働軽減、新展開で関連株脚光も―

 新型コロナウイルス感染症の収束が見通しにくいなか、建設、物流、医療・介護などの現場を支える人材のニーズが一段と強まっている。こうした業種は以前から人手不足が深刻だったが、海外からの実習生の入国が難しくなったほか、コロナ禍で対応業務が増えたことなどから、既存メンバーが更なる重労働を強いられているケースが少なくないようだ。そこで関心が高まっているのが人の動作を支援する「パワーアシストスーツ」で、最近では“3密”回避を目的とした新たな需要も出始めている。

●人手不足続く建設、物流、介護業界

 パワーアシストスーツは、電動アクチュエーターや人工筋肉などをスーツのように装着することで、身体の動作支援や機能の改善・治療などを行うもの。高齢者や脳卒中患者などの歩行訓練を補助する「自立支援型」と、介護現場での移乗介助(ベッドから車イスなど、被介護者の移動を助ける作業)や工場・倉庫での運搬など作業者の重労働を補助して身体的な負担を軽減する「作業支援型」の製品に大別される。

 これら労働環境が厳しい業種では依然として人手不足の状況が続いている。厚生労働省が7月末に発表した6月分の一般職業紹介状況によると、求人数は「建設業」が8万1417人(前月比24.3%増)、「運輸業・郵便業」が3万9080人(同9.0%増)、「医療・福祉」が19万8624人(同11.8%増)となっており、コロナ禍で建設現場では外国人労働者の新規受け入れが困難になっているほか、物流では外出自粛による通販需要の増加、介護施設や特別養護老人ホームではクラスター対策など対応業務の拡大が影響しているとみられる。

 重労働をサポートするパワーアシストスーツの潜在ニーズは高く、国土交通省は建設現場への円滑な導入に向け検討を始めた。このほど有識者らによるワーキンググループを立ち上げ、2021年度以降に技術開発・導入の在り方を示すロードマップを策定する計画だ。また、足もとでは運送会社や介護施設などでの導入も進んでいる。

●サイバダイン、個人向け新サービス開始

 最近ではパワーアシストスーツ各社が“3密”回避を目的とした用途拡大に乗り出す動きも出ており、CYBERDYNE <7779> [東証M]は装着型サイボーグ「HAL」による脳神経・筋系の機能向上を促すプログラム「Neuro HALFIT」を自宅でできる個人向けサービスを始めている。新型コロナの感染拡大に伴う外出自粛で、運動機会の喪失や運動量の減少による身体機能の低下リスクが高まっているなか、加齢で足腰が弱った人や脊髄損傷による後遺症などにより、「自力で立つ」「座る」「歩く」ことが難しくなった人に対し、HAL腰タイプをレンタルしている。

 このほか、パナソニック <6752> 子会社のATOUN(アトウン)とフィットネスクラブ「ピノスけいはんな」(京都府精華町)は、自宅などの遠隔地でのトレーニングをより高度にサポートできるリモートフィットネスシステムを開発した。このシステムは、オンライン会議ツールとATOUNのパワーアシストスーツ「HIMICO」が活用されており、ユーザーの動きや動作の回数といったデータを取得して数値化・グラフ化できるだけでなく、リモートでHIMICOを操作してユーザーの運動にアシストや負荷を加えることも可能。社会情勢などを見極めつつ、早期のサービス提供を目指す意向だ。

●upr、オンライン体験会でアピール

 新型コロナの感染拡大で非対面での対応が求められるなか、ユーピーアール <7065> [東証2]は6月末からモーター型駆動式を含む4種類のパワーアシストスーツを試すことができるオンライン体験会をスタート。物流、製造、農業、建設、介護などの業界を対象とし、着脱から実業務までの使用感を比較でき、現場環境にあったアドバイスも受けることができるという。

 菊池製作所 <3444> [JQ]グループのイノフィスは今月上旬、コロナ禍の厳しい環境にある介護福祉従事者の腰への負担を軽減し、労働環境の改善に寄与することを目的としたパワーアシストスーツ「Every(エブリィ)」の寄贈プロジェクトを実施すると発表した。同社には昨年12月にハイレックスコーポレーション <7279> [東証2]やブラザー工業 <6448> 、ナック <9788> 、東和薬品 <4553> 、トーカイ <9729> 、ビックカメラ <3048> などが出資しており、ナックではパワーアシストスーツを取り扱うとともに、自社のウォーターサーバーサービス「クリクラ」のボトル運搬時に利用している。

●ジェイテクトは21年にも新製品投入へ

 これ以外の関連銘柄では、ジェイテクト <6473> が21年にも新コンセプト構造の介護作業向けパワーアシストスーツ「J-PAS fleairy(ジェイパス フレアリー)」を発売する予定。同社は持続的成長の柱の新領域のひとつとして、18年から主に製造業向けにパワーアシストスーツを国内で販売しており、新製品の投入で更なる製品・サービスの充実を図る考えだ。

 加えて、重量物を上げ下ろしする際にウインチで腕の負担を軽減するパワーアシストスーツ「WIN-1」を18年7月から販売しているクボタ <6326> 、今年1月にバネの力で身体への負担を軽減する「作業アシストベスト」と「作業アシストスーツ」を発売したキングジム <7962> 、今年8月にグループのオカモト化成品がパワーアシストスーツ「エアロバック」を新発売すると発表したオカモト <5122> 、子会社のトヨフレックスが腰アシストスーツ「Way-sist」を展開している朝日インテック <7747> などにも注目したい。

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