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【市況】S&P500 月例レポート ― 1面トップに居座る新型コロナとマーケットの楽観 (2) ―


●トランプ大統領と政府高官

 ○米議会は「給与保証プログラム(PPP)」(中小企業向け)を8月8日まで延長する法案を可決しました。

 ○トランプ大統領は2021年7月に世界保健機関(WHO)から脱退すると、1年前の正式な通告を行いました。

 ○米議会は7月20日から再開しました。コロナ対応の第4段階となる対策に関する協議は水面下で続けられてきました。鍵を握るのが2020年7月末に期限切れとなる失業給付に対する週600ドルの上乗せ措置(このために毎週約180億ドルを支出)、州政府への支援(税収が減少する一方で支出は拡大している)、そしてウイルス関連の問題に対する支援(検査とワクチン研究開発)です。

 ○トランプ大統領は香港自治法案に署名しました。同法案は香港との経済関係(輸出や優遇措置)を制限するもので、中国が特別行政区である香港に対する支配を強化していることへの対抗措置です。

  ⇒米中関係の緊張状態は一段と高まっています。米国は中国にテキサス州ヒューストンにある中国総領事館の閉鎖を命令しました。米国の「機密情報」を保護する必要性からだと説明しています。

●新型コロナウイルス関連

 ○感染状況等:

  ⇒米国では新型コロナウイルスの1日当たりの新規感染者数が7万7000人と過去最多に達し、国内感染者数は460万人を超え(世界の感染者は1750万人)、死者数も15万3000人を上回っています(同67万7000人)。

  ⇒フロリダ州が新たな感染の震源地となり、1日の感染者数が1万人を超えたと報告されている一方、かつて最悪の感染状況にあったニューヨーク州では状況の改善が続いています。

  ⇒カリフォルニア州では感染者に占める17歳未満の割合が5月は2.3%でしたが、6月は6.8%、7月は8.4%に上昇したと報告されています(米国疾病対策センターによると、7月のカリフォルニア州の同数値は6.4%)。

  ⇒Walmart(WMT)、Kroger(KR)、McDonald’s(MCD)、Home Depot(HD)、Lowe’s(LOW)など、来店客にマスク着用を義務付ける国内小売業者の数は増加しています。

  ⇒中国を含め、世界的に感染の再拡大が続いており、英国は新たにスペインへの渡航を制限する措置を打ち出しました。

 ○経済活動が徐々に再開される中で感染者数の増加が報告されていることから、大半の地域では活動が再び制限され、規制が再導入されています。市場はこれまで通り、こうした状況に応じた動きを見せると予想されます。

  ⇒テーマパークを運営するWalt Disney(DIS)は、フロリダ州オーランドのディズニーワールドを再開しましたが、感染者の増加を受けて(6月18日に再開した)香港のディズニーランドは再度休園しました。

  ⇒アルファベット(GOOG/L)傘下のGoogleは社員(20万人)の在宅勤務を少なくとも2021年7月(今後12ヵ月間)まで継続すると発表しました。

 ○米国では経済活動等の再開に関して意見が対立しています。直近では学校再開が問題となっており、トランプ大統領は当初再開を求めていましたが、一部の州では教育と安全とのバランスを考慮する必要があると発言し、再開時期は先送りしなければならなくなる見通しです。

  ⇒カリフォルニア州はロサンゼルス(学校の数が米国内で2番目に多い。最多はニューヨーク)とサンディエゴでは2020年9月の学校再開はないと発表しました。

 ○新型コロナウイルスの治療法と夢の万能薬

  ⇒ヘルスケア大手のModerna(MRNA)は開発中の新型コロナウイルスワクチンについて初期段階の治験結果が良好だと発表しました。

  ⇒英製薬大手のAstraZeneca(AZN)はウイルスワクチンの臨床実験を2020年9月までに終える予定だとしています。

  ⇒米製薬大手のPfizer(PFE)と独バイオ医療ベンチャーのBioNTech(BNTX)は、19.5億ドル(1億回分)の新型コロナウイルスワクチンの注文を受けたことを明らかにしました。とはいえ、ワクチンの臨床試験はまだ完全には終了していません。

  ⇒英オックスフォード大学はワクチンの臨床試験で良好な結果を得られたと報告しています(こうした明るいニュースが引き続き米国株式市場を押し上げています)。

●各国中央銀行の動き

 ○公表された6月9-10日開催のFOMC議事録では、米国経済は「当面の間、極めて緩和的な金融政策」を必要とするであろうとの見方が示されました。

 ○欧州中央銀行(ECB)は政策金利を据え置くと同時に、現行の景気刺激プログラムの現状維持を決定しました。

 ○ECBは銀行に対する株主への資本還元(配当支払い)の停止「要請」を2021年1月末まで延長しました。

 ○連邦準備制度理事会(FRB)が発表した地区連銀経済報告(ベージュブック)によると、経済活動は上向いていますが、パンデミック前の水準を依然として大幅に下回っています。

 ○7月28-29日開催のFOMCでは、事前予想通り金融政策の現状維持を決定しました。パウエルFRB議長は(記者会見で)米国の経済成長は感染拡大前の水準を「大幅に下回っており」、今回のパンデミックが収束するまでは完全に回復することは期待できないとの見解を示しました。

●企業業績

 ○新型コロナウイルスの影響がいつまで続くかが問題となる中、市場は引き続き下半期の企業業績の好転を期待しつつ、業績予想を注視しています。

 ○第2四半期の決算を見ると、313銘柄が業績発表を終えました。第2四半期の利益予想は既に年初時点から47.9%引き下げられていたため、313銘柄のうち82.1%に上る257銘柄(過去の平均は67%)で利益が予想を上回りました。現時点では、前年同期比で43.7%の減益が予想されています。売上高は306銘柄中200銘柄(64.5%)が予想を上回りましたが、前年同期比で12.8%の減収となりました。

 ○第3四半期の利益予想も既に(2019年末時点から)31.3%下方修正され、第4四半期は22.0%、通年では37.8%引き下げられています。2020年の業績はほとんど重視されていない一方で、2021年の業績に対する希望はまだ失われていません(とはいえ、現時点で信頼できる数字はほとんど示されていません)。2021年通年の利益予想は2019年末時点から12.0%下方修正されていますが、2021年第4四半期に企業利益が過去最高を更新すると予想されていることは明るいニュースです。

  ⇒株式数による影響は2020年第2四半期も続き、第1四半期までに行われた自社株買いによりEPSは前年同期比で押し上げられました。2020年6月末時点で、20.3%の企業が2019年6月末と比較して4%以上株式数が減少しました。企業が自社株買いを縮小しているため、今後は前年同期比での影響は弱まる見通しです。自社株買いの縮小は、四半期ベースで発行済み株式数が減少した企業数を見ると明らかです。

●個別銘柄

 ○オンライン小売りのAmazon(AMZN)は3000ドル台の節目を超えて一時3344ドルを付け、3165ドルで7月の取引を終えました(2019年末は1848ドル)。

 ○電気自動車メーカーのTesla(TSLA)は引き続き値上がりし、6月末の1080ドルから7月は1431ドルで月を終えました。月中の最高値は1795ドルでした(2019年末は418ドル)。

  ⇒Teslaの決算発表は予想を大幅に上回り(中国で規制をクリアしたことに対するクレジットを他社に販売したことによる押し上げ効果もありました)、米国の一般会計原則(GAAP)に基づく公表利益は4四半期連続で黒字を計上しています。今やTeslaはS&P 500指数に加えられる適格基準を満たしている、と見る向きもあります(ただ、基準を満たしていることと、S&P 500指数の構成企業として選ばれることは別です)。

 ○報道によると、小売り大手のWalmart(WMT)は、「Amazon Prime Killer」と呼ばれる当日配送サービスを間もなく開始する予定です。このサービスの年額料金は98ドルで、Amazon Primeの年額料金は119ドルです。

 ○ソーシャルメディアのLinkedIn(非上場)は新型コロナウイルスの感染拡大を背景とする人材サービス部門への需要の減少を理由として、全従業員(960人)の6%を解雇すると発表しました。

 ○Amazonは毎年7月に開催されるPrime Dayを3ヵ月延期すると報道されています。

 ○ウォーレン・バフェット氏のバークシャー・ハサウェイ(BRK.B)は米大手銀行Bank of America(BAC)の株式3400万株を追加購入しました。これにより同社の持株比率は7.4%から11%に上昇しました。

 ○iPhoneメーカーのApple(AAPL)は1対4の株式分割を発表しました。

「1面トップに居座る新型コロナとマーケットの楽観 (3)」へ続く

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