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【市況】「高値更新型の二番天井」に要警戒~ディフェンシブ・シフトも要検討か?【フィリップ証券】

 足元ではダウ工業株30種平均、S&P500、ナスダック総合ともに3月高値を超えて史上最高値を更新中だ。22日発表で市場の注目を一身に浴びていた半導体大手エヌビディア<NVDA>の2-4月期決算および5-7月見通しも市場の期待を上回ってみせた。15日発表の4月消費者物価指数(CPI)で示唆されたインフレ率鈍化と6月からのバランスシート圧縮ペースの減速といった強い買い材料とともに米国株相場は更なる上昇相場へと高みを目指すのだろうか?

 ここで細心の注意を払うべきは「鬼より怖い」との相場格言もある「ダブルトップ(二番天井)」のリスクだ。ダブルトップはトレンドが下向きに転換する場合、直近の山(高値)を上回れずに直近の谷(安値)を下回ることが多いものの、最近の米国株主要指数では直近の山を上回った場合でも天井を形成するパターンもよくみられる。

 それを観察するテクニカル分析の手法として、買われ過ぎか売られ過ぎかを判断する「相対力指数(RSI)」を使う場合がある。RSIは直近一定期間における終値ベースで上昇幅の合計を、その一定期間の上昇幅と下落幅との合計で割った割合のこと。S&P500指数の週足終値における14週RSIを2021年について見ると11/5にS&P500が4697ポイントかつRSIが72%台に対し、12/31にS&P500が4766ポイントかつRSIが65%台と、S&P500指数の高値更新に対してRSIの値が切り下がった。このような株価とRSIの逆行現象は「ネガティブ・ダイバージェンス」と呼ばれ、高値更新型の二番天井を形成しやすい面がある。

 そのようななかで2024年におけるS&P500指数の週足終値の推移を見ると、3/29に5254ポイントを付けた際のRSIが約79%(70%以上が「買われ過ぎ」とされる)に対し、5/17の史上最高値更新値5303ポイントの際のRSIは約69%にとどまる。ここから買いの勢いが強くなってRSIの上昇を伴う高値更新の可能性が残されているものの、高い警戒感を持って相場を注視すべき段階にありそうだ。注目のエヌビディアについても週足終値を見ると、3/22終値942ドル時のRSIが約91%に対し、5/17終値924ドル時のRSIは約70%にとどまっていた。

 米国経済を巡る4月主要指標は、ISM(全米供給管理協会)の製造業と非製造業の景況感指数が揃って50割れの経済活動縮小ゾーンに突入したほか、小売売上高(季調済)も前月比横ばいにとどまるなど悪化が目立つ。他方、仕入れ価格など供給サイドのコスト面は高騰が目立つ。米サンフランシスコ連銀調査によれば米国家計は新型コロナパンデミック期に蓄えた資金を使い果たしたとしている。「エヌビディア決算後」はディフェンシブ色を強めつつ個別に強い需要の背景がある銘柄への物色を検討すべきかもしれない。


関連銘柄


バス&ボディワークス<BBWI>

・1963年設立の家庭用フレグランス、石鹸、消毒剤製品の専門小売店運営企業。北米で「Bath & Body Works」、「White Barn」などのブランド名で直営・フランチャイズ・ECサイトを通じて事業展開。

・2/29発表の2024/1期4Q(11-1月)は、売上高が前年同期比0.8%増の29.12億USD、継続企業からの非GAAPの調整後EPSが同10.8%増の2.06USD。粗利益率が同2.6ポイント上昇、売上高販管費率が同0.6ポイント改善に加え、新商品のメンズケア用品の販売好調と顧客基盤の拡大が示された。

・2025/1通期会社計画は、売上高が前期比横ばい~3.5%減、調整後EPSが3.00-3.35USD(前期実績3.27USD)。豊富な種類の香りや写真映えするパッケージが若者の支持を集める。商品を買うほど単価が下がる価格設定で消費者のまとめ買い需要が旺盛なのも強み。顧客基盤の拡大を通じた中長期的な利益成長への期待からQUICK・ファクトセットによる2027/1期の市場予想EPSは4.22USD。


コンステレーションエナジー<CEG>

・2022年2月に電力・ガス持株会社エクセロン<EXC>から分離独立。米国最大のカーボンフリーエネルギー生産者で、原子力を中心に水力・風力・太陽光発電施設からなる発電設備を有する。

・5/9発表の2024/12期1Q(1-3月)は、営業収益が前年同期比18.6%減の61.61億USD、非GAAPの調整後EPSが同2.3倍の1.82USD。営業費用率が同13.2ポイント低下の86.8%へ改善。総発電容量が同4.5%増の6万8407GWhs(ギガワット時)、うち原子力が同6.9%増の4万5391GWhsへ拡張した。

・通期会社計画は、調整後EPSが7.23-8.03USDへ黒字転換と従来計画を据え置き。同社はムーディーズの信用格付けがBaa1へ格上げとなるなか今春に原発の維持・拡張に利用できる環境債を米国で初めて発行。また、同社の原発発電コストが1メガワット時当たり約25USDの中で政府のインフレ抑制法(IRA)は販売価格下限を同45ドルとする。損益分岐点超えから高利益率の恩恵が見込まれる。


メルク<MRK>

・1891年に独E.Merckの米国子会社として設立後、第1次世界大戦中に米政府が接収し米企業化。医療用医薬品、ワクチン、バイオ医薬品、アニマルヘルス製品を提供。140ヵ国以上で事業を展開。

・4/25発表の2024/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比8.9%増の157.75億USD、企業買収・事業売却の影響を除く非GAAPの調整後EPSが同47.9%増の2.07USD。がん治療薬「キイトルーダ」が同20%増収(69.47億USD)、HPV関連がん予防ワクチン「ガーダシル」が14%増収(22.49億USD)。

・通期会社計画を上方修正。売上高を前期比5-7%増の631-643億USD(従来計画627-642億USD)、調整後EPSを同5.6-5.7倍の8.53-8.65USD(同8.44-8.59USD、特定の事業開発取引費用6.21USDを前期計上)とした。同社の約3分の1の売上を占める「キイトルーダ」特許切れを4年後以降に控えるなか、3月下旬、大型新薬への期待の高い希少な肺動脈性肺高血圧薬「ウィンレベア」が米国で承認。


ネクステラ・エナジー<NEE>

・1925年設立。フロリダ州の電力会社フロリダ・パワー&ライト[FPL]、再生可能エネルギー(再エネ)のネクステラ・エナジー・リソーシズ[NEER]が中核企業。風力・太陽光発電・原発等のカーボンフリーエネで世界最大手の存在。

・4/23発表の2024/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比14.7%減の57.31億USD、非GAAPの調整後EPSが同8.3%増の0.91USD。営業利益率は同8.7ポイント悪化(35.1%)も利払費用が同73%減(3.23億USD)と軽減したことが最終増益に寄与。前四半期比も利払費用減で調整後EPSが75%増。

・2024/12通期会社計画は、調整後EPSが前期比2-8%増の3.23-3.43USD、その後2026/12期まで年平均6-8%増。年間配当も前期比10%増といずれも従来計画を据え置き。生成AI(人工知能)普及に伴うデータセンター電力需要に加え、世界的サプライチェーン再編に伴う政府主導による製造能力の米国内回帰の潮流加速のための電力として、脱炭素の再生可能エネルギーが求められている。


ウォルマート<WMT>

・1945年にサム・ウォルトンが創業。「ウォルマート」のほか会員制「サムズ・クラブ」を運営。「エブリディ・ロウ・プライス」を旗印に特売を頻繁に行わず毎日安い価格で商品を提供することを基本戦略とする。

・5/16発表の2025/1期1Q(2-4月)は、売上高が前年同期比6.0%増の1615億USD、非GAAPの調整後EPSが同22.4%増の0.49USD。粗利益率が同0.4ポイント改善。既存店売上高(除く燃料)は、米ウォルマートが同3.8%増、サムズ・クラブが同4.4%増。低価格帯の食料品が高所得世帯で伸びた。

・通期会社計画を上方修正。売上高を従来計画の前期比3.0-4.0%増、調整後EPSを同様に1-7%増の2.23-2.37USDから、それらの上限または少し超えるとした。インフレ疲れで低所得層による不要不急の支出抑制傾向加速に対し、同社は高級さを打ち出した新たなPB(プライベートブランド)商品投入などにより、割安さを求めて来店し始めた中高所得者層を取り込んで新たな顧客層を開拓しつつある。



フィリップ証券
フィリップ証券 リサーチ部 笹木和弘
(公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト)

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