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【市況】S&P500 月例レポート ― 1面トップに居座る新型コロナとマーケットの楽観 (4) ―


●S&P 500指数

 米国では、新型コロナウイルスの1日当たりの新規感染者数が7万7000人と過去最多に増加しました。国内の感染者数は460万人を超え(世界の感染者数は1750万人)、死者数も15万3000人を上回っています(同67万7000人)。

 決算シーズンの最初の月はゆっくりとしたスタートから徐々に加速し、S&P 500指数構成銘柄の62%、時価総額で75%に相当する企業が第2四半期の決算発表を終えました。企業はパンデミックに伴う状況について把握し、世界(株主、競合他社、顧客)に向けて何を伝えるかを判断するのに少し時間がかかったようです。決算発表を終えた企業の82.1%が、47.9%下方修正された後の利益予想を上回りましたが、どんな状況でも予想を上回るというのは良いものです。企業業績は常に第1面で取り上げられ、来週も96銘柄が決算発表を予定しているために第1面を賑わせると思われますが、第1面のトップ見出しを飾ることはありませんでした。

 人々は休会明けの議会に注目していましたが、それもトップ見出しではありませんでした。議員らはコロナ対策について審議するために議場に戻ってきましたが(議員を街から追放し、さらに国から追放する休会案があれば、私ならそれぞれに賛成票を投じます)、それはもちろん感染症の治療法を考えるためではなく、コロナ対策第4弾となる追加法案について「交渉」するためです。上院(共和党)が提示した1兆ドル規模の法案は、下院(民主党)が可決した3.5兆ドル規模の法案とともに審議される予定です。この審議について、トランプ大統領の自伝『The Art of the Deal(芸術的な交渉)』になぞらえて「交渉術」と呼ぶ声もあります。追加法案の重要項目は、7月31日に期限を迎えた、失業保険給付を週600ドル上乗せする連邦政府パンデミック失業補償の延長(恐らく内容の修正を伴う)です。下院法案は2021年1月までの延長を求め、一方の上院法案は上乗せ額を200ドルに減額して2020年9月までとした上で、その後は賃金の額に応じて上限を設けるとしています。また、州に対する直接支援も重要項目であり、下院法案では州と学校に対して1兆ドルを支援し、上院法案では学校に対して1050億ドルを支援して州に対する追加支援はしないとしています。

 その他の注目ニュースとしては、米中間の緊張はまるでテスラの株価のごとく急速に高まり、米ドルはテスラ株の空売り筋が倒れる(これで株価の上昇が加速しました)のと同じくらいのスピードで下落し、メジャーリーグは通常の年間162試合から60試合に縮小して開幕しました。球場のシーズンシート購入者には残念ですが、今年はアメフトの観戦で我慢してください。

 では、何がトップ見出しを飾ったのでしょうか。それは5月や6月と変わらず新型コロナウイルスそのもので、この状況は8月も続くと思われます。実際のところ、ウイルスの長期的なライフサイクルや影響は科学的にも、政治的にも(知っている人がいたら間違いなく吹聴していることでしょう)、最新の占いアプリですら、誰にも分かりませんが、有効なエビデンスに基づいた憶測は散見されます。とはいえ、治療法やワクチンの開発に関してはPfizer、Moderna、BioNTechといった企業で続けられており、いずれ成功すると大方の人は信じています(これらの企業に投資したら成功するでしょうか)。

 市場もそうした信者の1人であり、13.3%と2桁が続く失業率や、前期比年率でマイナス32.9%、前年同期比でマイナス9.5%という悲惨な結果となった2020年第2四半期GDP成長率を受け流したのか、市場は7月に5.51%上昇、3月23日の安値からは46.20%上昇と、以前の上昇分をほぼ回復し、年初来では1.25%の上昇となりました(配当込みのトータルリターンはプラス2.38%)。明日以降も決算が次々と発表される予定であり、市場予想に基づくと、企業利益は2021年第4四半期に過去最高を更新する見通しです。Googleはその3ヵ月前の2021年7月から、20万人の従業員のオフィスへの出勤を再開する方針です(社内は一方通行で、エレベーターは4人定員でお願いします)。市場では現在、損失を恐れる個人投資家、数字をつくらなければならない資産運用マネジャー、そして市場全体の信じたい気持ちといった感情が支配しているとみられます。悲観論者やショックを受けた空売り投資家の考えが正しかったと言える日が来るかもしれませんが、それがいつになるかは分かりません。

 S&P 500指数は7月に5.51%上昇し(配当込みのトータルリターンはプラス5.64%)、3271.12で月を終えました。過去3ヵ月間では12.32%の上昇(同プラス12.87%)、年初来では1.25%の上昇(同プラス2.38%)、過去1年間では9.76%の上昇(同プラス11.96%)でした。ダウ平均は6月末の25812.88ドルから2.38%上昇(同プラス2.51%)の26428.32ドルで月を終えました。6月は1.69%の上昇(同プラス1.82%)、5月は11.08%の上昇(同プラス11.22%)で、終値は24345.72でした。過去3ヵ月間では8.55%の上昇(同プラス9.23%)、年初来では7.39%の下落(同マイナス6.14%)、過去1年間では1.62%の下落(同プラス0.83%)でした。

 7月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は6月の1.85%(5月は1.63%)から1.30%に低下しました。年初来では2.09%、6月は1.85%、2019年は0.85%、2018年は1.21%、2017年は0.51%(1962年以来の最低)でした。出来高は前月比12%増加した6月から26%減少した一方(営業日数調整後)、前年同月比では37%増と引き続き大きく増加し、過去1年間でも前年比27%増加しました。7月の前日比で1%以上変動した日数は22営業日中6日となり(上昇が4日、下落が2日。2%以上変動した日数はゼロ)、年初来では74日(上昇が41日、下落が33日)となりました。7月は22営業日中13日(6月は22営業日中18日)で日中の変動率が1%以上となった一方、変動率が3%以上となった営業日はありませんでした(6月は3日)。年初来では104日(6月末時点は91日)で日中の変動率が1%以上、32日(同32日)で3%以上となっています。2019年はそれぞれ1%以上の変動が73日と3%以上の変動が1日、2008年はそれぞれ228日(253営業日中)と75日でした。

 セクター間のリターンのばらつきは拡大して高止まりが続きましたが、上昇したセクターは6月の5セクター、5月と4月の全11セクターに対して、7月は11セクター中10セクターが上昇しました。パフォーマンスが最高のセクター(一般消費財、8.98%上昇)と最低のセクター(エネルギー、5.35%下落)の騰落率の差は14.33%と、6月の12.07%(1年平均は12.06%)から拡大しました。騰落率の差は年初来では60.96%(6月末時点は51.23%)、2019年は40.41%でした。

 7月は米国で経済活動が一部再開される中、一般消費財が6月の6.83%上昇の後に8.98%上昇し、騰落率首位となりました。同セクターは年初来では16.17%上昇しています。生活必需品も6.77%上昇と好調でしたが、年初来ではなお0.77%下落しています。コミュニケーション・サービスは6.57%上昇して年初来の騰落率を5.53%のプラスとし、ヘルスケアも5.20%上昇して年初来の騰落率が3.40%のプラスとなりました。情報技術は5.56%上昇し、年初来で20.56%上昇した一方(騰落率首位)、金融は3.52%上昇したものの、年初来ではなお21.97%下落しています。エネルギーは5.35%の下落で騰落率が唯一マイナスとなり、年初来で40.39%の下落となりました(騰落率最下位)。

 個別銘柄の騰落状況を見ると、値上がり銘柄数と値下がり銘柄数の差は拡大しました。7月の値上がり銘柄数は364銘柄(平均上昇率は8.32%)と、6月の260銘柄(同6.45%。5月は375銘柄で同8.01%)から増加しました。10%以上上昇した銘柄数も6月の46銘柄(同16.96%。5月は119銘柄で同14.84%)から115銘柄(同16.22%)に増加し、25%以上上昇した銘柄数も6月の6銘柄(5月は5銘柄)から8銘柄に増加しました。

 一方、値下がり銘柄数は140銘柄(平均下落率は5.11%)と、6月の244銘柄(同4.49%。5月は130銘柄で同5.18%)から減少しました。10%以上下落した銘柄数も19銘柄(同14.59%)と、6月の46銘柄(同12.74%。5月は21銘柄で同15.81%)から減少し、1銘柄(6月はゼロ、5月は1銘柄)が25%以上下落しました。
 
 過去3ヵ月間では、381銘柄(平均上昇率は16.65%。6月末時点は454銘柄で同23.99%)が上昇した一方、123銘柄(平均下落率は7.04%。6月末時点は50銘柄で同5.05%)が下落しました。
 
 年初来でも値上がり銘柄数と値下がり銘柄数の差は拡大し、値上がり銘柄数は6月末時点の136銘柄(平均上昇率は15.94%)から190銘柄(同19.92%)に増加し、10%以上上昇した銘柄数も6月末時点の73銘柄(同26.20%)から125銘柄(同26.20%)に増加し、51銘柄(6月末時点は31銘柄)が25%以上上昇しました。一方、値下がり銘柄数は313銘柄(平均下落率は24.00%)と、6月末時点の367銘柄(同22.46%)から減少し、10%以上下落した銘柄数も232銘柄(同30.71%)と、6月末時点の274銘柄(同28.48%)から減少し、135銘柄(同40.42%。6月末時点は144銘柄で同38.82%)が25%以上下落しました。


[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト

※このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはサイトをご参照ください。

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