【特集】目撃せよ成長の軌跡、「ライブ配信」産業はブレイク中 <株探トップ特集>
見出された活路はライブ配信。エンタメ産業がコロナ禍を生き抜く切り札として拡大するライブ配信関連株を追跡する。
―エンタメ業界救世主の広がる商機、4日で倍化ストリームMの次は―
エンターテインメント業界が新型コロナウイルスの影響に苦しんでいる。会場で行われる音楽ライブや演劇などの開催が困難になり、予定されていたイベントは相次いで中止や延期を余儀なくされ、国内最大級の野外ロック・フェスティバル「FUJI ROCK FESTIVAL’20」も来年8月に延期された。緊急事態宣言が解除されたあとは観客数を制限するかたちで公演を再開する動きも出始めているが、足もとでは新規感染者が急増していることから先行きは不透明で厳しい環境が長期化するのは間違いない。こうしたなか、活路として期待されているのがオンラインによるライブ配信で、関連企業のビジネス機会は一段と広がりそうだ。
●イベント制限の緩和先送り
ぴあ <4337> のシンクタンク、ぴあ総研が6月末に公表したライブ・エンターテインメント市場規模調査(速報値)によると、2019年は前年比7.4%増の6295億円となり、統計を開始した2000年以降で最高を記録した。ただ、20年は新型コロナの感染拡大に伴う開催自粛で市場の成長にブレーキがかかるとみており、19年の3割にも満たない1836億円と試算している。
エンタメ業界を取り巻く環境は厳しく、政府は7月22日に開かれた感染症の専門家らによる分科会での意見を踏まえ、8月1日以降のイベント開催制限の緩和措置を先送りすることを決めた。屋内イベントの人数制限は現状で、観客数5000人か収容率50%以内のどちらか少ない方を上限とし、当初は8月1日をメドに観客数の制限を撤廃(収容率50%は維持)する方針だったが、8月末まで上限5000人の制限を残すとしており、今後の感染状況によっては更に制限撤廃が延期される可能性がある。
今後しばらくは収容人数に比べた観客数が低く抑えられる見通しだが、一方で開催者の新たな収益源となりつつあるのがライブ配信だ。6月25日にサザンオールスターズが横浜アリーナで無観客ライブ配信を行うなど大物アーティストが乗り出してきており、コロナ禍での新潮流となっている。経済産業省が音楽や演劇といった公演の実施及びその海外動画配信などを支援することを目的に、20年度補正予算にコンテンツグローバル需要創出促進事業として878億円を計上していることから、今後は海外も視野に入れたビジネス展開が期待できそうだ。
●ストリームMの株価2倍超に
ストリームメディアコーポレーション <4772> [JQG]は7月22日、世界初のオンライン専用コンサート「Beyond LIVE」で、ガールズグループのTWICEを皮切りに、さまざまなグローバルアーティストの公演を開催する予定だと発表。これが刺激となるかたちで、株価は4日間で2倍以上に急騰した。
これを受けて投資家の間では“第2のストリームM”を探る動きも出始めており、8月10日にライブ配信を予定しているワンダーコーポレーション <3344> [JQ]は7月29日に一時ストップ高まで上昇。エンタメ業界向け各種ソリューションなどを手掛けているJストリーム <4308> [東証M]は、7月30日に21年3月期第1四半期(4-6月)の好決算を発表したこともあって騰勢を強め、8月5日に年初来高値を再度更新した。
このほかの有力候補としては、6月からオムニチャネル・ファンプラットフォーム「bitfan」の新サービスとして、インターネットライブ配信サービス「bitfan LIVE」の提供を開始したSKIYAKI <3995> [東証M]、同じく6月にオンライングループ視聴を実現した新感覚ライブ配信サービス「Thumva(サムバ)」の正式版をリリースしたフェイス <4295> 、8月29~30日にオンラインの音楽イベント「SPACE SHOWER SWEET LOVE SHARE supported by au 5G LIVE」を開催する予定のスペースシャワーネットワーク <4838> [JQ]などに注目。
直近ではAOI TYO Holdings <3975> のグループ会社が、ライブ・イベント会場でステージと客席の双方がコミュニケーションできる新しい共有体験を実現した双方向ライブ配信「リモステ」を開始。ぴあが5月に立ち上げたライブ動画配信サービス「PIA LIVE STREAM(ぴあライブストリーム)」は、サービス開始から約2ヵ月で大型公演も含め既に100本以上のライブ配信が決定しているという。
●応援を贈る投げ銭関連にも注目
以前はライブ配信といえば無料のものが多かったが、最近では有料チケット制を導入する動きが増えている。また、収益機会の新たな可能性として関心が高まっているのが、応援するアーティストにネットを通じて金銭や換金できるアイテムを贈る「投げ銭」サービスだ。
ライブ配信や投げ銭はエンタメ業界を活気づける手段として存在感が高まっており、エムアップホールディングス <3661> のグループ会社は有料配信できる視聴PASS販売プラットフォーム「StreamPass」とコメントや投げ銭機能搭載の視聴アプリ「FanStream」を提供しているほか、メタップス <6172> [東証M]のグループ会社は送金アプリ「pring(プリン)」を活用したオンラインイベント支援パッケージを手掛けている。
また、ピアラ <7044> は7月、ブロックチェーン事業の開発を行うSingulaNet(東京都港区)と資本・業務提携したと発表。新たな次世代型ITサービスの開発に取り組むとしており、ライブ配信や投げ銭、デジタルコンテンツの提供などの仕組みを備えたエンタメ領域などにまで広がるサービスを視野に入れている。
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