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【特集】三城HD Research Memo(2):メガネ小売の大手チェーン。業績は低迷も、新業態店舗や販促策で巻き返し図る

三城HD <日足> 「株探」多機能チャートより

■会社概要

1. 会社概要
三城ホールディングス<7455>の源流は、創業者・多根良尾(たねよしお)氏が1930年に兵庫県姫路市に開業した正確堂時計店である。1950年に姫路市に時計、貴金属、メガネを販売する株式会社三城時計店を設立、1960年には社名を株式会社メガネの三城に改めた。その後は主に兵庫県を中心に店舗数を増やしていたが、1973年に多根氏がパリの三越の近くにミキブランドの店をオープンし、そこから同社の成長が始まった。パリ出店の後、1974年に東日本地区での本格出店の拠点として株式会社パリーミキ(後に関西のメガネの三城と合併、社名を株式会社三城に変更)を設立し、全国での拡大を進めた。2020年3月期末現在、国内701店舗、海外124店舗を有しており、国内大手のメガネ小売チェーンである。

株式は1995年に日本証券業協会に店頭登録し、1996年には東証第2部に上場した。その後1998年には東証第1部へ指定替えした。


老舗のメガネ小売会社:新業態店舗で業績復活目指す
2. 事業概要
(1) 店舗の形態及び平均客単価
同社は、店舗数で国内大手のメガネ類の小売業者である。国内店舗の形態は大きく分けて、同社にとっての主力業態である「パリミキ」と「メガネの三城」(通常店)、百貨店を中心とした店舗展開をしている「金鳳堂」であり、パリミキとメガネの三城の店舗は同じ形態であるが、パリミキの店舗のほとんどは東京及び関東圏以北に、メガネの三城は主に関西圏に展開している。さらに欧米、中国、東南アジアなど海外にも展開しており、2020年3月期の売上高(比率)は国内が42,570百万円(88.1%)、海外が5,736百万円(11.9%)となっている。

ファストファッションを打ち出す同業他社との差別化を図るため、コンセプト別に改装を行うのと同時に視力測定室や補聴器の聴力測定室設置を充実させており、平均組単価(2020年3月期平均)は、全店で31.7千円、百貨店内店舗(主に金鳳堂)では109.0千円と微増、機能性レンズ推進や複数個販売に寄与している。

(2) 店舗数
店舗数(2020年3月期末)は国内が701店(うち101店がフランチャイズ)、海外が124店(中国41店、韓国39店、その他アジア30店、その他欧米豪14店)となっている。国内のうち、パリミキ及びメガネの三城が681店、金鳳堂が19店、その他1店となっており、郊外型、ビルイン型、テナント型などがある。ほとんどの店舗が賃貸借物件によるもので、自社所有店舗は少ない。海外店はテナント型が主であり、ベトナムの2店は病院内併設となっている。

(3) 商品別売上高比率
国内の商品別売上高比率を見ると、レンズとフレームが73%を占める。商品の平均粗利率は70%ほどであり、主力商品であるフレームとレンズは平均より高く、サングラスなどその他の商品は平均より低い。ただし、度付きサングラスの売上は新コンセプトの店舗が寄与しており、今後は補聴器事業も順調に推移していくとみられる。

(4) 商品の主な仕入先
商品の主な仕入先は、金額ベースでは国内メーカーの比率が高いが数量ベースでは海外メーカー(主に中国)が高くなっている。商品売上数量の約80%は同社が独自に企画・設計したプライベートブランド(PB)となっており、百貨店店舗では著名なデザイナーブランドなどが多いことから、PBの比率は低く90%以上がナショナルブランド(NB)となっている。また日本製の優れた商品を広めていくことを目標にした“MADE IN JAPAN project”が3年目に入り、PB商品のブランド力を高めることで日本製の販売数量比も40~50%と増えている。

3. 競合、特色、強み
メガネの国内市場は業界で約4,000 億円と言われており、同社のシェアは約10.6%で業界第3位(第1位は(株)メガネトップ、2位は(株)JINS)である。しかしメガネの小売市場では依然として小規模の家族経営店や数店だけのチェーン店も多く存在し、同社を含めた大手10社のシェアでも50%ほどにとどまっている。その意味では国内には数多くの競合が存在すると言える。海外市場については統計等も不備であるため正確なシェアや競合は不明である。

そのような業界環境のなかで、同社の特色(強み)として挙げられるのは、専門的な知識を備えた経験豊富なスタッフが多いこと、高いブランド力、大手チェーンとしてのスケールメリット、上場企業としての信用力、強固な財務基盤などだろう。そのためメガネ店としての知名度は高く、多くのリピート顧客を抱えている。

しかし過去10年、Zoff((株)ゾフ)などの登場により日本のメガネ市場が低価格化にシフトするなかで、これらの強みの一部は「両刃の剣」として同社の「弱み」となってきた面も否定できない。そのため同社では、現在の強みを維持しつつも、今後は変えるべきは変えるとの方針から、新しい店舗戦略で、ニューファミリー層が来店しやすく低価格でも質の良いメガネ購入体験を提供している。同時にビジュアルライフケアを推進することで、ファストファッション化する同業他社との徹底的な差別化を打ち出している。また団塊世代が高齢化することで、今後需要が伸びる補聴器市場の開拓にも同社は注力しており、技術者が多く在籍する同社ならではの提案力で訴求をしていく。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)

《EY》

 提供:フィスコ

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